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✨04/26~05/02のメッセージ✨


「仙人だってほたほた歩く」。



凡例と先行論文と経験則と実験データ
全部全部ブッ込んで
まるで宿敵を呪い殺しそうな顔で

この世界を眺めている、偉いひと。

わからない?なら知ればいい
壊れたって?なら直せばいい

眉ひとつ動かさずに
さして面白くもなさそうに
もそもそ言うその顔と

これぞ至高の逸品よ!

と自作のリキュールを
ご自慢のグラスに注ぐ
にまにましたその顔は

同じ人物とは思えない。

サイコロ遊びができない神様のために
せめて私は存分に遊ぼうじゃないか
とは考えないらしいが

「え、それ?!」というもので
存分に幸せを堪能できる(らしい)というから

全知全能を目指す憂鬱な顔の下には
何があるかなんて、わからない。


そんな叡智マニアが総力を挙げて
「なんかすごいもの」を作った、という。

恐らくその性格からして
人生の集大成とか、
学びの結晶とか、
神殺しの剣とか、
そういうものだろう。

久しぶりに象牙の塔から出て来た
偉いひとは、その両手に
大切に、大切に
「なんかすごいもの」を
愛おしそうに、抱き抱えている。

落ち窪んだ双眸だけギラついて
身なりはボロボロで
覚束ない足取り。

例え鉄仮面でも
凄まじい疲労の奥に
果てしない充足感が見て取れる。


ところが、だ。


黒雲垂れ込める薄暗がりで
何かに足を取られたのか

蹌踉めいた刹那
「なんかすごいもの」が、宙を舞う。

次の瞬間
光の地獄のような眩さの中
あっという間に、消えてしまう。

直後に襲う轟音で
落雷にあったと分かっても

体は、ぴくりとも動かない。


爆散したのか、蒸発したのか。

それすら認めたくないのだろうが

思考が追いつかない程の時間だったのは

確かなこと。


連続する強烈な明滅と轟音の中
辛うじてギリギリと振り返ると

巨大で堅牢な自慢の象牙の塔が
まるで玩具のように揺れている。


その高い回転数を誇る頭脳でも
何が起きたのか追いかけ切れず
仮に追いついたとしても
対応策の最適解は導き出せず

ただ、ただ佇むしかできない。


呆然とした時間が
どれくらい、あったろうか。


鉄仮面が、ぐにゃりと歪んだ。


泣いているようにも
笑っているようにも見えるその顔は

恐らく数十年振りに
必死で抑え込んでいた
強い感情が迸ったからだろう。

荒れ果てた大地に
くずおれるように
投げ出すように、仰向けに。

わあわあと何かを叫び
手足をバタつかせて

気が済んだのだろうか

砂まみれの体を、ゆっくりと起こす。


この体は、残った。
この命も、続いた。

あの塔は、そこにある。
戻るもよし、打ち捨てるもよし。


少なくとも今は
荒れ地と化したこの地に
二本の足で立てるようになるまで
緩さを堪能しようじゃないか。

少なくとも今は
「今まで」と「これから」よりも
思考実験や理論値よりも
自分のいる「ここ」を
見つめてみようじゃないか。


ランプの光に慣れきったその身を
雲の切れ間から差す光に晒し
天使の梯子を眩しそうに眺めるその目は

散々泣いたからか
少し腫れぼったく
そして
曇りも濁りも消えて

鉄仮面はどこかに消し飛んでいた
と、後に本人から聞くことになる。


どうぞ
豊かで実りある一週間と
なりますよう🍀✨


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