2019.01.14 PAPER :Perfume Is the Global Future of J-Pop_日本語訳

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by Erica Russell 14 January 

「PerfumeはJ-POPの未来を世界へ届ける」 

10月の暖かい日の午後、私はアリーナのプレスBOX席にいた。東京から新幹線で南へ約一時間半、沿岸部の比較的穏やかな静岡の街が会場だ。私から見渡せるアリーナ席やスタンド席にはおしゃれな20代の女の子や、シュッとした服にグッズのブレスレットをつけている40代くらいの男性がいて、スマートフォンはきちんと片付けて(ここでのマナーらしい)、座席で扇子を使ったり手作りのポスターを眺めたりしながら過ごしていた。

私と同じように、観客は辛抱強く日本で最もビックなライブがはじまるのを待っていた。度々、会場のどこからともなく叫び声が聞こえる。「のっちーーー!」女性が叫ぶと、男性が「あ〜〜〜ちゃーーん!」と返す。「かしゆかーーー!」とまた別の声が響く。それは、ライブの前の観客によるしびれるようなコール&レスポンスだ。叫んでいたのは会いたくてここに来た、その人の名前。「Perfume」だ。

数分後、会場が暗転すると、レーザーの光がネオンの流星群のようにスタジアム中を激しく横切る。音楽がスピーカーから鳴り響く- それはまるで、エイリアンが乗った宇宙船がビルの屋上に今まさに着陸せんとする時の、未来からやって来たモンスターの音のよう- 

そしてステージの背景の巨大なLEDには、3人のダンスの輪郭の大きなプロジェクションが映し出される。ステージの床のパネルが開き、舞台の下から一人ずつ、あ〜ちゃん(29)、のっち(30)、かしゆか(30)がアンドロイドのようなポージングで金属で組まれた機構の上に姿を現わす。

約二時間に渡りPerfumeは、高揚感のあるEDMとキラキラ感溢れるダンスポップのシングル曲との躍動感あふれるセットリストで、見るほどに私の胸を打った…ダンスのホログラムや投影された画像!シンクロした影のプロジェクションマッピング!背景スクリーンとシームレスに作用し合う振り付け!革新的な視覚演出という彼女たちの表現のあり方を体現していた。レーザー演出については前述の通り。私は、すっかり魅了された。これがまさに、ポップミュージックの「未来」であると。

3月30日には、この取材の会場であった静岡から遠く(6,812マイルも)離れた異国の地、マンハッタンのミッドタウンにあるHammerstein Ballroomでパフォーマンスする。ニューヨークで北米ツアーをスタートした後、この春アメリカでは5都市(シカゴ、ダラス、シアトル、サン・ジョゼ、そしてロサンゼルス)でライブを行い、そして日本の女性J-POPグループでは初となるコーチェラ(カリフォルニア)へ出演する。

期待が高まるこの舞台で、Perfumeはすでにアジア圏の音楽市場で確立した地位を与えられたグループとして、さらに国際的なキャリアを更新するだけではなく、北米の音楽市場においてJ-POP全体のターニングポイントを記すことになるだろう。そして、このステージはPerfume自身にとどまらず、K-POPで急成長を遂げているBLACKPINKのコーチェラへの初出演とともに、アジア圏のアメリカの音楽産業においての認知度を高める重大な瞬間となるだろう。

Perfumeの”future pop”という輝かしいブランドは(そう、2018年リリースの最新アルバムと同じ呼び方ではあるが)、表層的には未来を見つめながらも、しかしそのコアの部分では、過去の逆境下においても、現在と同じように高い志で固い絆を結び合ってきたグループとしての鼓動が脈々と流れている。

2000年、西脇綾香(あ〜ちゃん)、樫野有香(かしゆか)、大本彩乃(のっち)は可愛らしいビジュアルとダンスでぱふゅ〜むとして自主レーベルより「OMAJINAI★ペロリ」でデビュー。翌年、2000年代前半までは広島にある養成アカデミーに通っていたが、上京し中田ヤスタカと出会う。中田は自身のエレクトロニックユニット「Capsule」で知られる実績ある音楽プロデューサーである。

それから数年間は、90年代後半に東京・渋谷エリアで広まったレトロサウンドに影響されたキッチュな作風の「ポスト渋谷系」サウンドに傾倒する。軽快なロービットサウンドの「スウィートドーナッツ」「モノクロームエフェクト」といったシングルは流行に敏感なインディーズを支持する層には受け入れられたが、この時点では作風が定着せず商業的な成功はおさめられなかった。2008年までに、インディーズシーンにおいて苦しい状況をなんとかしようともがき続けた後、Perfumeのスタイルはより洗練されたエレクトリックで紛れもなく未来的なものとして進化した。

中田の舵取りにより彼女たちは自身の象徴ともなる音楽性とスタイルを発見したのだった。そして、ブレイクを迎える。

まさにその時期(※2007)、7枚目のシングルとなる「ポリリズム」をリリース。この楽曲はきらめき感のあるシンセポップの名曲で、日本を代表する放送局NHKのキャンペーンソングとなったことをきっかけに、Perfumeを疑う余地なくJ-POPシーンへ押し上げた。

ポリリズムはオリコンチャート(アメリカでいうところのビルボード)TOP10入り(※ウィクリー7位、デイリー4位)を果たし、数ヶ月後にはメジャー初のオリジナルアルバム「GAME」がPerfume初の1位を獲得した。

5枚のチャート1位を獲得したアルバム、多くのワールドツアー、3シーズン目のファッションコレクション、そしてOK GoのMVへのカメオ出演(本当に!)など、Perfumeの3人にはシャイニーでメロディアスなテクノポップ、そしてスペイシーなオート・チューンやボコーダーの声といったこと以外にも多くの注目すべきことがある。

この10年に渡り、Perfumeは光り輝く美しいビジュアルと、ハイテクノロジーな演出(日本のメディアアート集団ライゾマティクスによるものである)と、シャープに仕立てられた衣装のスタイル、そして印象的なコレオグラフィー(長きに渡る協力者であるMIKIKOが担当している)で世界中に知られるようになった。

今や母国日本では、彼女たちはスーパースターであり、トレンドの発信地・原宿にはビルのあちらこちらに彼女たちのビジュアルが溢れ、ラグジュアリーなエリア・六本木ではストアから彼女たちの音楽が流れている。この成功は大いに、おそらくこの点が最も重要な要素であるが、メンバーが入れ替わってしまうアイドルグループとは一線を画す、メンバー一人一人の個性を尊重してきたことによるだろう。

本当にPerfumeは誰からも愛されている。:明るくて、楽しい性格のあ〜ちゃんは、彼女の遊び心のある性格にぴったりなポニーテルがよく似合う、影ながらグループを引っ張る存在。優しくてエレガントな印象のかしゆかは、ぱっつんロングヘアで日本の伝統工芸が大好きだ。穏やかでエッジーなのっちは、東京のヘアサロンで「のっちみたいにしてください」と言えば通じるほどに世間に浸透したショートボブの、程よく力が抜けたクールな女性だ。

私がソールドアウトで大盛況だったライブ後に楽屋を訪れた際、彼女たちがあまりにも元気なのでびっくりしてしまった。だって、何時間もひたすらにハイヒールで踊っていたのに。そして、たった今目にした振り付けがごく最近覚えられたばかりのものだと知り畏敬の念すら抱いた。

「私たちが初めてフューチャーベースの音楽(Future Popのような楽曲)をもらった時、どうやってテンポにのればいいのか、分かりませんでした。MIKIKO先生が振りをつけてくれても、すぐにはうまくできなかったんです。これまでに踊ってきたリズムとは全く違いました。」あ〜ちゃんは、翻訳のAyaさんを通じて、こう認めた。

そしてかしゆかは「このFUTURE POPツアーに向けて、本当に振り付けが出来るのを楽しみにしていました。楽曲を中田さんから受け取って、MIKIKO先生ならどんな振り付けを考えてくれるかなって想像していました。」

“If you wanna”を歌っている時、まるで”FUSION”の楽曲をそのまま体現しているかのように、ステージの上でPerfumeの3人がお互いを補完し合ってFUSION(融合)していたと感じたことを伝えると、かしゆかは少し驚いてこう続けた。「そんな風に言っていただけて、とても面白いと思いました。私たちのダンスがどうしてここまでシンクロできているかが伝わったのかな。スクール時代から3人一緒に歌えば歌うほど、よりそれぞれの個性が表れてくるように思えていました。」

どんな香水もそうだが、調和を超えた各々の成分の化学反応が質の良さを高めるように、PerfumeというJ-POPグループもまた、メンバーの3人で織りなす香りをさらに超えている。

例えるなら、のっちとかしゆかとあ〜ちゃんがトップノートで、表舞台に立つ彼女たちをを支えるスタッフやマネージメントチームがボトムノートであり、そして中田ヤスタカが深いスキル溢れるビートと20年以上にわたりヒットし続ける才能を以ってこのプロジェクト全体を結びつけるミドルノートを担っている。

「私たちは基本的に中田さんの指示どうりに表現するようにしています。」のっちはビートメイカー中田との制作プロセスを教えてくれた。「一番最初の、曲の作り始めの段階のデモは極々シンプルなんです。トラックに歌入れをしてから中田さんが曲を仕上げます。中田さんにとって、私たちの声はある意味、最終的に曲に仕上がっていく音源のための素材なんだと思います。完成する楽曲の一つの要素、一つのパートなんだと思います。私たちが本当に中田さんのファンなのでお互いの良い距離感を保つようにしています。この距離感が、曲をいつも新鮮にしてくれていると思います」

これだ。この高い次元でコラボレーションされた楽曲、アートワーク、パフォーマンス、販売戦略の全てを包括して完璧に仕上げられたプロダクトがPerfumeを日本でも海外でも注目せずにはいられない存在にしているのだ。

北米ツアーを巡りながら、特に熱狂的で積極的なアメリカのファンを通して、彼女たち自身がその熱さを肌で感じている。「海外のファンの方達は、自己表現がはっきりしているんです。」あ〜ちゃんもそう言って続ける。「日本では、マナーを大切にしてみんなに合わせるようなところがあります。周りを見ながら、あ、友達がノっているなとか、周りに対してちゃんとしようというか。でも、海外に行くとファンの方達はダイレクトに愛情をぶつけてくる。そして本当に正直。曲を知らなければ、無理して歌おうとしない。知っていれば、シンガロングしてくれます。」

テクノロジーもまた、Perfumeの世界観が神秘的なもので在り続ける為に不可欠な存在だ。

ドローンからAIまで、Perfumeは記憶に残るパフォーマンスの拡張や視聴覚効果を実行するために最先端のテクノロジー企画で一役買ったこともある。2018年11月、Perfumeは激しいダンスナンバー”FUSION”の強烈な印象を残すライブパフォーマンスを初披露した。この最先端の電気通信事業者Docomoによるタイアップ企画「 FUTURE-EXPERIMENT VOL. 01 距離をなくせ」では、あ〜ちゃんは東京、のっちはニューヨーク、かしゆかはロンドンという世界三都市に分かれ、最新の通信技術によって全くの同時刻に開始され同期された3人のダンスがシームレスに全世界でライブストリームされた。

3人にとって、テクノロジーはオフタイムであっても毎日の生活にとって欠かせない身近なものでもある。

「もうスマホがないと生きていけません(笑)」とかしゆか。「起きた瞬間から、眠るまで気になってしまいます。どのくらいの時間、スマホを使っていたかを教えてくれる新しいアプリがあって…先週1週間で、私はソーシャルメディアには24時間、ゲームアプリには22時間を使っていました。」(かしゆかは最近没頭しているアプリとして、同名のアニメが題材となっている「妖怪ウォッチワールド」を挙げた。)

テクノロジーのディストピアを恐れて未来を暗い気分で捉える向きもあるようだが、Perfumeというグループははっきりとより希望に満ちあふれた世界を思い描いている。

それは”Future Pop”の光溢れるミュージックビデオで描かれたARディスコ、自動建築されたクリーンな都市、バーチャルリアリティのショッピング、自動化された「宇宙家族ジェットソン」のようなホームアプリケーション、そして自動運転システムといったユートピアだ。アルバムFuture Popのきらきらと光り輝く”TOKYO GIRL”や”無限未来”といった名曲を通して、彼女たち自身の未来の理想像とそこはかとない楽観性をことほぐのだ。

では、彼女たち自身にとっての未来はどういったものなのだろうか?結論から言うと、彼女たちの明日へのビジョンはテクノロジーというよりはもっと人間に近いものだ。

「メールや、スカイプや、ソーシャルメディアを使えば、実際に会ったり、目と目を合わせてお互いを見つめ合うことなく誰もがコミュニケーションを取れると思うんです。でも、私は、時々は今こうしてお話ししているように、同じ場所にいて直接コミュニケーションを取ることも大事だと思っています。あなたが今日私たちに合うためにはるばる静岡まで来てくださったように!とても美しいことだと思います。」と、のっちは言った。

「これだけ世の中の全てが便利なので、私がこれまでに思い描いていた未来は全て実現されています。それでも、オーガニックな部分や人は、だからこそこれからもっともっと大切にされて行くような気がします。」かしゆかが付け加える。「例えば、私たちのこのハイテクな作品でさえ、全て人の手によってプログラミングされているんです。私は、そういうショーの手作りされている部分や、それを支えているスタッフさんが好きなんです。今日のライブにも200人〜300人のスタッフメンバーが関わってくれています。」

「誰もが自分の意見を自由に言えて、自分に自信を持つことが出来ながらも、お互いのことを思い合えたなら、それが私の理想とする未来です。」
あ〜ちゃんは優しく頷きながらそう言った。「年齢も、性別も、偏見もない世界、それが私の願いです。」

約20年に渡り日本で最もエキサイティングで、想像を超え、精度の高い楽曲やビジュアルを世に送り出して来たPerfumeにとって、ある一つのことが真実であり続ける。

それは、あ〜ちゃん、のっち、かしゆかのシンクロした手の中で、確かに未来が続いているということだ。

ポリリズム(2007)

If you wanna(2017)

【docomo×Perfume】 FUTURE-EXPERIMENT VOL.01 距離をなくせ。(2017)

Future Pop(2018)

TOKYO GIRL(2017)

無限未来(2018)

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