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先日、研究室でのはじめての実施プロジェクトがスタートしました。内容は築40年の木造の町屋をシェアオフィスにするというものです。
工事は工務店との工事契約でやってもらいますが、「家を壊す」という機会はなかなかないので学生を連れて解体の一部をやらせてもらうことにしました。
現場、といっても普通のおうち。学生からすると"おばあちゃんち"くらいの印象かもしれません。さすがに最初は靴を脱いで「失礼しまーす」と入ってました。

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必要なものは持っていってもらっているので、残っているのはいらない家具や食器、家財道具です。でもけっこう生活感があります
ここを見ておくのと見てないのはけっこう違うと思っていて、大学の課題は新築が多く、そのほとんどが文字や線の情報に抽象化されたものを受け取ります。でもここには具体的で人が住んでいた形跡がそのまま残っていて、なんなら懐かしい感じもします。
建築をつくるためにはどこかで「壊す」という行為が発生します。新築であっても"空き地"という状況を壊すことになります。ほんとはそこには草が生え、水溜りがあり、モグラや鳥の巣があるかもしれません。風の通り道があり、そこから見える景色があり、敷地境界線だけで囲われた敷地図ではそういう状況は表現されません
建築をする前には具体的な状況がある、それを体験を通して知ることができるのが解体現場なんだと思います。
もっというと、建築する行為はこの場所に積み上げられてきた履歴に加わることになります。白紙の上にポンとつくって終わりなのではなく、連綿と続いてきたその場所の歴史に書き加えることになるんです。だから、壊す=なしにするでなく、そこにあったものを読み取って次を書き加えるための準備をするんです。

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そこまで学生が考えていたかは定かではないですが、まあとりあえずすっごい具体的な状況に触れてきたのは確かです。今後の設計に何かしら影響があればうれしく思います。

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