【決定版】失敗しない「本の選び方」講座【有料級】
はじめに
こんにちは、リウです。
今回は失敗しない「本の選び方」講座と称して、私が10年以上の歳月をかけて蓄積した、「本選びのノウハウ」をご紹介します。
これから読書に力を入れたい方、最近ビジネスにおいて読書(=知識への投資)の重要性を感じている方には、まさにぶっ刺さる内容です。
というのは、本を選ぶにあたって、私が「これは重要だ!」と思うことを、項目別に紹介しているのです。
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「読書に興味はあるけど、どうやって良い本を選べばいいの?」
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そんなときは、このページを参考に本選びをしてみてください。あなたの人生を変えてくれる一冊に出会えるはずです!
なお、参考までに私の経歴を紹介すると、
年間300冊を読破
読書家歴10年以上
高校まで読書習慣ゼロ
両親や周りも読書習慣ナシ
といった感じで育った環境に本は一切ありませんでした。
そこから高校を中退したり、独学で大学受験を突破したり、紆余曲折ありましたが、今は「本の読み方」を中心に発信を行っています。
興味のある方は、こちらに「本の読み方」講座を載せておくので、ぜひご覧ください。1万字超えの大ボリュームで「本の読み方」を解説しています。もちろん、無料です。
読書に必須なスキル【本を見つける力】
最初にはっきりさせておきたいのですが、読書において最も大事なスキルは、じつは「自分に合った書籍を見つける力」です。
「え、多読とか速読とか、読み方の方が重要じゃないの?」
こう思われる方もいらっしゃると思います。間違ってはいません。「本の読み方」については、上記で記事を紹介している通り、必須のスキルではあります。
でも、よく考えてみてください。
令和元年には、年間「71,903冊」冊もの本が出版されていますが、この約72,000冊全てが、あなたの人生に必要になるでしょうか?
極論だと思われるかもしれないですが、考え方としては誤りではありません。
要は、膨大な本の数に比して人間の時間は有限です。だから本当に読むべき本を見つけられる能力が、逆説的に求められるということです。
ゆえに「本を選ぶ・見つけるスキル」は、多読とか速読など「読むスキル」に負けず劣らずの重要性を持つわけです。
それでは項目別の解説に移りましょう。
著者
まずは「著者」について考えてみます。みなさんが本を購入するに際して、この「著者」というのは、それなりに気にするポイントなのではないでしょうか?
例えば、著者の肩書きが気になりますよね。料理のレシピを買おうと思ったら、料理の素人が書いた本より、プロの料理人が書いた本に手が届くはずです。
本の著者が気になったら、同じ著者のほかの本も買ってしまいます。いわゆる「著者買い」「作者買い」がそうですね。
言うまでもなく良い本を選ぼうと思ったら、その本を書いた「著者」は真っ先に考慮に入れなければならない対象です。「著者買い」といった現象が成立している以上、無視するわけにはいかないです。
では、著者のどういうところを確認すればいいのでしょうか?
上に示したように、最初に目を配るのは「肩書き」になります。端的に言うと、その著者が「ある分野において権威のある立場にいるか」が「肩書き」を確認する目安になります。
「大学教授」や「弁護士」、「医者」に「新聞記者」あたりが、現実社会では「権威のある」職業ですが、十把一絡げに評価するわけにはいきません。
「大学教授」や「医者」と言っても、ピンからキリまで存在します。残念なことに「科学者」でありながら、エビデンスを軽視する研究者もいます。つまるところ、「教授」という「肩書き」だけでは信用に欠けます。
ここでは「立場」に注目しましょう。大学教授であれば、名門大学や有名大学の勤めているか? 医者であれば、こちらも有名な大学病院に勤めていたり、評判の良いクリニックを開業しているか?
そのほかには「権威ある賞」などもらっていれば文句ないです。極端な例ですが、ノーベル賞を受賞した研究者は信用してもいいでしょう。
なお、上で紹介したような「有名大学の大学教授」なのにもかかわらず、科学的根拠を軽視する人間は一定数存在するので、注意してください。本来であれば信用できる立場にいながら、主張する内容がおかしな人もいます。
そうした人の見抜き方は「レビュー」の項目で解説します。
訳者
続いては「訳者」を考えます。「訳」ですから、対象は「翻訳書」になります。読書好きからすると、じつは「翻訳書」は非常に扱いにくいジャンルにあたります。
何が「扱いにくい」のかと言うと、訳者による「訳がこなれているか」どうかで、本の読みにくさが全く違ってくるんですね。
同じ「日本語話者が訳すのだから誰がやっても同じだろう」とは決して思わないでください。確実に、痛い目を見ます。
訳者の「こなれ具合」を判断するには、これはもう実際に読むしかありません。
実際の書店に行くか、オンライン書店の「試し読み」をするか、とにかく本を開いてみる。そして、冒頭の数ページを黙読してください。文章がすんなり頭のなかに入ってきたら、その訳者は充分な実力の持ち主です。安心して読み進められます。
また、冒頭の「黙読」は、訳者との相性を見る試金石にもなります。すでに評判が確立されている名著でも、肌に合わないことがあります。
文はすらすらと入ってくるけど頭に残らないとか、色んな理由が生じて、読むのが苦痛に変わるんですね。
したがって、訳者との相性を見ておく段階は必要です。冒頭に軽く目を通しておくだけでも、だいぶ違います。
周囲の環境次第ですが、ぜひ「音読」が可能ならしてみてください。黙って読むより効果があります。
監修者
続いて「監修者」を見ていきます。経験上、本の「監修者」を目当てにして、書籍を購入している人は見たことがありません。
「監修者」は、おもに科学的裏付けが必須な分野の本に名を連ねます。例えば、ダイエットの本に医学博士が名前を載せたり、料理のレシピ本を管理栄養士が監修したり。
正味、監修者の彼ら彼女らが、本当に書籍の端から端まで監修しているのかはわかりません。部分的に目を通しただけなのか、企画段階から参画しているのか、真相は著者と編集者のみぞ知るところ。
しかし、あくまで「監修者」を見抜くことにこだわるのであれば、やり方は「著者」の項目で紹介した通りの方法を実践していただけるといいと思います。
監修者の経歴、肩書き。特に「博士号」をきちんと修得しているか? 管理栄養士やトレーナーであれば、科学的根拠に基づいた主張をしているか?
科学的には何の裏付けもない、民間療法を勧める輩が多いです。口を酸っぱくして言いますが、「科学的観点」をないがしろにしないでください。
監訳者
「監訳者」は「監修者」の翻訳書バージョンですが、個人的にはただの「監修」よりも、力を注いでくれているケースに出会ってきました。
また、監訳者が「解説」を書いているケースも多いですね。
世界的に有名な組織心理学者アダム・グラントのいくつかの著作は、一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻教授の楠木健さんが「監訳」と「解説」を担当されています。
考え方としては、やはり「真っ当な」経歴と肩書きを持つ人物が担当しているかどうかをチェックしましょう。
しっかりと「監訳者」を確認し、業績から信用できる人物であれば、当たりの確率は「監修者」よりも多いように感じます。
編集者
本を作る際、著者に次いで大きな役割を果たすのが「編集者」です。
実質的に本を執筆する「著者」との最大の違いは、商業的な視点から「売れるための本」を作ろうとするところだと思います。
「売れる本」を作るのは言うまでもなく難しいのですが、編集者が「売るための努力」を怠るはずはありません。出版は商売ですから、会議である程度売り上げの見通しが立たなければ、そもそも企画が通らないわけで。
ゆえに、私は「編集者」を「純粋な商売人」として見ています。出版社に入社するくらいなので、本への愛情を持ち合わせているのは当然。一方、サラリーマンである以上、著者などより遥かに「厳格なビジネスマインド」が要求されます。
編集者は「本への愛情」を持ち合わせてはいますが、同時に売り上げを気にしなければならない複雑な立ち位置なのです。
このあたりを踏まえて注意したいのは「編集者のやる気の有無」ですね。私の経験則で言うと、編集者に明らかなやる気が見られれば、その本は面白い確率が高いです。
逆に、やる気が見られなければ、その本は面白くない傾向が高い。あるいは誤字脱字が見つかったり、レイアウトが下手くその極みでとても読めたものではないとか、色々です。
「編集者のやる気の有無」は「お客様設計」が上手くいっているかどうかで、判断できると思います。
「お客様設計」については色々事例があるのですが、具体例を出しましょう。例えば「本の情報量が多い」場合です。「情報」というのは、ページ数然り、文字数が多いとか、話の密度が濃いとか、物理的かつ精神的に読者に与える印象の問題です。
ページ数が多いと読書習慣がない人からは敬遠され、文字数が多いとページを開いたときに「うわっ!」と感じますから、これまた一般層から敬遠される。話の密度は扱うテーマにもよるので一概には言えませんが、社会問題は芸能人のゴシップより扱いづらいでしょう。
こうした情報量の多さを制御し、読者が噛み砕ける程度に整えるのが「編集者の仕事」なのです。
最近は「入門としての○○」や「教養としての○○」といったタイトルの、初心者向け教養書が多いですが、とりわけ「情報の制御」が重要視されるジャンルではないでしょうか。
このように「情報の交通整理」が、編集者の役割だと考えれば「お客様設計」にも見当がつくでしょう。多過ぎる情報をわかりやすく「図・グラフ」にしたり、見出しを多く作って一節あたりで扱う「情報の量」を分散させるなど、いかに書籍をシンプルにするか。
そこが編集者に求められる点であり、腕の見せ所でもあるわけですね。ちなみにですが「情報の交通整理」が下手くそな編集者が編集した本は、本当にわかりにくいです。
したがって目が肥えると、「これは売れるわけないわなあ」と直感的に判断できるようになります。参考までに…。
出版社
本を選ぶ際には「出版社」も大きなヒントになります。
ここからは「本の話」ではなく「会社の話」になりますが、個人的に「善い出版社」があるかどうかはわかりませんが「良い出版社」はあるような気がします。
要は「売れる本を出す会社」と「そこまで売れずとも良質な本を出す会社」は分けて考えるべきだという話ですね。
やはり「出版=ビジネス」なので、とにかく「儲けることを第一」と考える人たちがいます。「売れりゃあいいんだ」と開き直って――肝心の「内容」はおろそか――それでもマーケティングに全振りすれば、それなりに売れてしまうんです。
その事実を前提として踏まえると、充分に信頼できる出版社はグッと少なくなります。
最も信頼できるのは、ダントツで岩波書店です。次が中央公論新社、続いて筑摩書房あたりでしょうか。
上に挙げたのは、それぞれ「新書」レーベルを展開しています。「岩波新書」は名著が多く、やはり信頼性は充分です。ちなみに中央公論新社は「中公新書」、筑摩書房は「ちくま新書」を持っています。
講談社や小学館など「大手」は信用しても問題ないでしょう。事業が多角化していますが、個人的にはKADOKAWAもその範疇です。
見落としがちなのが「経済系」の出版社です。日経BP、ダイヤモンド社、東洋経済新報社、NewsPicks パブリッシングなどはビジネス書の出版に特化している分、本の質が高い印象です。
ちょっと迷うのが、いわゆる「言論誌」ですね。非常に長い歴史を持つ文藝春秋は信頼性がある一方、小振りの雑誌は思想性と政治性がかなり濃い。特定のイデオロギーに偏った視点を持ってしまいます。もちろん、政治的な色合いが悪いわけではありません。
ただ、世の中を広く見通すためには、それだけを読む状態は好ましくないということです。
こうしたイデオロギー的性格に伴って、判断が難しくなるのが「新聞社系列」の出版社です。「新聞社系列」の出版社は、親会社である新聞社の意向を強く反映しています。
讀賣新聞はガチガチの保守、朝日新聞はガチガチのリベラル。アメリカのように、新聞や放送局自体に何らかの政治性を持たせるのは、議論が分かれるところですが、このあたりは気をつけてくださいね。
タイトル
続いて「タイトル」に触れたいと思います。
本のタイトルは言うまでもなく重要ですね。小説には作家の思いがこもった名前がつけられますが、ビジネス書では少し事情が違います。
ビジネス書は、やはり「売ること」を前面に押し出して企画を作りますから、タイトルも「売るため」に試行錯誤しています。
翻訳書にありがちですが、原書はシンプルでスマートだったのに、日本語だとやたら名前がダサくなる…。
これも「売ろうとして」そうなったわけですね。
逆説的に言うと、ダサいから「売れる」んです。原書のタイトルをそのまま日本語訳して売れるなら、そのまま出せばいいわけで。
脱線してしまいましたが、個人的には「重要」とは言えど、同じ「重要度の高い項目」のなかでは、優先度は高くないと思います。
やはり「著者」や「出版社」の方が大事です。
理由としては、さすがに「タイトル」である手前、おかしなメッセージは盛り込めないからですね。たまにとんでもないタイトルの本が出版されますが、まあ「一発芸」です。
ちょっと目を引いて面白くなさそうなら棚に戻されますから、「本当に良い本を選ぶ」という視点で考えれば、当然「重要項目」にはなり得ません。
サブタイトル
「タイトル」を補完する役割を持つのが「サブタイトル」です。
個人的には、題名を見るときは「タイトル」より、こちらの方を気にするかもしれません。
補完とは言いながらも、一定の文字数があるので、メッセージとしての正確さは「サブタイトル」に軍配が上がるわけですね。
例えば、今偶然手元にある『マーケティング22の法則』ですが、これだけではマーケティングの本だとしかわかりません。
一方、サブタイトルは「売れるもマーケ当たるもマーケ」となっています。ここから読み取れることとしては「売れるも当たるも」マーケティングなのですから、ビジネスにおいてどれだけマーケティングの比重が大きいか。
その意義を語ると同時に「法則」とあるので、どんなマーケティングにも共通の法則を教えてくれるのだと考えられます。
したがって「タイトル」も「サブタイトル」もそれぞれ独立したものとは思わず、「お互いを補完し合ってようやく本来のメッセージが伝わる」くらいの認識がちょうどいいかもしれないですね。
表紙
続いて「表紙」について考えますが、正直に言うと、私はそこまで重要視していません。
理由としては、得られる「情報量」が少ないからです。私たちの目的は「良い本の選び方」を探り、言語化すること。その目的からすると「表紙」を判断基準の軸とするのは、適切ではない。
「表紙買い」という言葉がある通り、どちらかと言うと「表紙」は購買に大きく左右するポイントでしょう。
しかし、裏を返せば、購買と内容の出来不出来は等しい関係にないため、それほど気にする必要はないと考えられます。
帯
「表紙」を検討したら、伴って考えるべきなのが「帯」です。むしろ「選び方」を主眼に置いたなら、重要度はこちらの方がずっと上かもしれません。
いくらか芸術的なデザインの「表紙」がある一方、本の「帯」は比較にならないほど広告的です。編集者が考え得る最大限の「売り文句」がつけられていて、言葉を選ばなければ、下品かつ煽り具合が半端ない。
今偶然手元にアメリカの心理学者ケイティ・ミルクマンの『自分を変える方法』があります。タイトルからして身も蓋もない感じですが、帯はもっとすごいです。表紙と同じ色の紙に、煽り文句が「本書を読めば、誰もが超人級の人間になれる」とあります。
著者の共同研究者で、心理学者のアンジェラ・ダックワースの発言のようですが、いささか誇張の気は否めません。
したがって、本の帯は単なる「帯」と認識するより「小さな広告」だと考えておいた方がいいでしょう。
目次
続いて「目次」の解説に移ります。
「目次」を使って本を選ぶ際、やはり重視すべきなのは「お客様設計」が上手にできているかどうかですね。
編集者の項目でもご紹介しましたが、読書をするにあたり「お客様設計」は非常に大切です。
「お客様設計」は言い換えれば、「広義」のデザインです。「狭い」意味でのデザインは、表紙や帯など見えるものに対して。一方、読者が実際に読む姿をイメージして、本の情報の流れを整理するのが「広い」意味でのデザインです。
「目次」は、編集者や本に関わった人間の「整理力」が如実に表れる項目です。見やすかったり、情報の捉え方が的確だったり、差別化の要素は色々ありますが、目次に目を通した際、頭のなかに情報が何の問題もなくスッと入ってくるようなら、その本は当たりの確率が高いです。本選びの参考にしてみてください。
また、本選びのほかに「本の読み方」においても、目次の活用法を思いついたので書いておきます。
主観的な話になりますが、よく読書をする人ほど「目次」を積極的に利用しているイメージがあります。逆に言うと、読書の初心者ほど「目次」を無視していきなり本編に突入していく印象です。
どこから読み始めようと個人の勝手なのですが、利用した方がクレバーな読み方ができるだろうとは思います。
目次の活用法は至って単純です。
本を買う前、読む前にざっとでいいから目を通し、本の中で「具体的に何が書かれているか」を把握します。
この「具体的に把握する」がポイントで、ここを押さえておかなければ意味がありません。
イメージとしては「目次」は、読書を進める上での「補助線」です。読む前に「何が書かれてあるか」を確認し、読書の計画を立てる。読んでいるあいだも適宜検討し、進み具合を管理する。また、モチベの維持も期待できます。
特に初心者(読書にあまり慣れていない方)は、補助線の役割が大きく感じられるはずです。目次をあまり見ない方は、大いに参考にしていただけると思います。
あらすじ
「あらすじ」は「目次」ほど重要ではない項目です。
そう言うと、意外に思われるかもしれません。本の概略が簡潔に書かれているのですから、真っ先に確認するべきポイントであると捉えられてもおかしくはないでしょう。
間違って伝わってほしくないのは、活用自体は「する」ということです。著者や編集者など本を作った人たちが「本を説明しようとする箇所」ですから、利用しない手はありません。
しかし「良い本を選ぶ」となると、役に立つかどうかは疑問符が生じます。端的に言うと、あらすじは「情報量が少ない」のです。「え?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。「必要な情報がコンパクトにまとめられていて、とても便利なのでは?」
しかし実際のところを言うと、まとめられているのは「読者に必要な情報」ではなくて「読者をそそる情報」なんです。
あらすじで紹介されている内容と、読者にとって本当に必要なことが一致しないことは往々にしてあります。結局、編集者が意識するのは「売るため」の動線設計であり、目を引く情報が蒔かれています。
したがって「あらすじ」は、本の良し悪しを判断するのに、あまり適していないことがわかります。
文体
小説では「文体」の重要性が長きにわたって論じられてきました。ジャンルによって書き方が変わるため、今でも新人賞などでは評価対象(=審査項目)として機能しています。
一方、ビジネス書ではそんなに語られる機会がありません。そもそも多くの読者が「文体」という文脈を知らないのかもしれません。知らなければ、当然論じられませんから。
それでも「本選び」という観点から文体を考えると、結構大切なことが言えそうです。
結論から言うと、相当「読みやすさ」に影響してくるんですね。
「です・ます」調と「だ・である」調という2つの枠組みで語られますが、「です・ます」調は口語調である分、読みこなしがラクで理解しやすい。
「だ・である」調に関しては、いささか断言口調である関係上、険しい印象を与えるがきちんと考えられた文章だと感じられる。
どちらが良いとかそういう話ではありません。時と場合によって使用法が変わるので、特段意識する必要はありません。
ただ、どんなジャンルであろうと初心者向けの書籍では、「です・ます調」が多く使われている感があります。話し言葉かつ、段落と段落のあいだに空白を設ければ、それだけでかなりの読みやすさが担保されます。
イラスト
知人に聞いたところ、イラストの多さが「わかりやすさ」に直結していると考えている節がありました。完全に個人的な感想になりますが、あまりそうは思いません。
むろん、まんがは別です。「まんがでわかる~」シリーズは、私もお世話になっています。初学者にはとっつきにくいテーマも、「まんが」という形式を使うことであそこまで理解がしやすくなるとは驚きです。
しかし、ビジネス書でイラストが多過ぎると、文章で説明する気があるのかどうか感じられなくなります。
本当に「最低限のイラスト」だけあればいいと思います。文章の説明を助ける以上の役目は追わなくていい。もしイラストが文章の代わりに説明しようとしたら、その本は閉じて構いません。
図・グラフ
読者の理解を助けるのは、意外にも「イラスト」ではなく「図・グラフ」の方です。
これは「デザイン」の概念を知っていただければ、理解しやすいと思います。「デザイン」とは「視覚的な情報の入手を容易にする配慮」のことを言います。
例えば、本に書かれた文字は視覚から入手する情報です。そして、白紙にびっしりと埋められた文字は、かなり読みにくいですよね。
ところが「デザインの考え方」によって、文字数を減らしたり、適切な配置に変更すると、途端に読みやすさが増します。
「図・グラフ」は、デザインの力の塊です。言語情報では冗長な箇所も、視覚的にわかりやすく説明できる。したがって「図・グラフ」がしっかりと練って作られているか?これは「良い本選び」をするなら、欠かせない部分でもあるのです。
付録
「付録」がある小説やビジネス書に出会ったことがありません。学生時代は雑誌をよく買っていまして、それには「限定カード」やら「DVD」やら毎号何かしらがあったような気がします。
近い例で考えると「購入者特典」があります。書籍を購入した人だけがアクセスできるWebページが用意されていて、巻末にQRコードが載っているパターンが多いですね。
ただ「良い本を選ぶ」という視点で考えると、あまり重視してはいけない項目でもあります。というのは、マーケティング的には、こういう「購入者特典」はより高い商材を買ってもらうための入り口に過ぎないからです。
せっかく購入してくれた人に対して報いる感情はゼロではないと思いますが、著者の本意はそこにはありません。
レビュー
いよいよ最後に「レビュー」を解説して終わりにします。
ここまで「本」を構成する要素を「項目別」に解説してきました。まず本を執筆する「著者」がいて、同時に、商業出版を成立させる「編集者」がいます。「出版社」がなければ、基本的に本は読者の手に届かず、読者は「表紙」をもとに本を手に取ります。
一方、ここで取り扱う「レビュー」は、正確には「本を構成する要素」ではありません。現に、一昔前は「レビュー」が今ほど一般的ではなく、読者同士の口コミか、一部雑誌の書評程度に留まっていました。
ところが今はネットの普及により、口コミが前提のものとして、プロダクト(製品)が生産されています。
書籍よりも身近なのは、食事でしょう。昔は、自分の勘を頼りに美味しそうなお店を探したものですが、現在では「食べログ」を参照するのが一般的です。
また、SNSで商品やサービス、お店の評判が拡散されることも大きいです。結局のところ、10年間、20年間とは違って、あらゆる商品やサービスは、第三者による「レビュー」を抜きにしては語れなくなってしまったのです。
さて、ここで伏線回収をしておきたいと思います。じつは冒頭「著者」の項目で、こんなことを述べていました。
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なお、上で紹介したような「有名大学の大学教授」なのにもかかわらず、科学的根拠を軽視する人間は一定数存在するので、注意してください。本来であれば信用できる立場にいながら、主張する内容がおかしな人もいます。
そうした人の見抜き方は「レビュー」の項目で解説します。
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この「おかしな人の見抜き方」なのですが、察しの良い方は気がついておられるでしょう。外部レビューを利用します。
要は「レビューの存在」が自明のものになってしまったからこそ、その活かし方を学び、本選びの精度を上げるのです。
早速ですが、ここで参照するレビューは「Amazonレビュー」を参照しています。ですが、どのサイトでも基本的な考え方は同じなので、そのまま同じ枠組みを流用するかたちで判断いただいて問題ありません。
最初に目が行くのは「星の数」でしょう。ここは基本的に、星が4以上、もっと言えば、限りなく5に近いようでなければ、私は手を出しません。
ここで「Amazonレビューなんてあてになるのか?」という根本的な問いかけも生じてくると思います。それに対しては「レビュー数」を見て判断しようと答えています。
極端に言えば、レビューの数が多ければ多いほど、その信用性は増します。流行のビジネス書であれば、1000件を超えるレビュー数も少なくありません。まさか、ほぼ全員が「サクラ」なんて事態は考えにくいです。
ただし、不自然にレビュー数が多いものはあります。これはファンが過剰な反応を示しているパターンですね。熱心なファンが多数いて、書籍が知名度の割にかなり多めのレビューをもらっている状態です。
残念ながら、冷静な評価を下すと、こうしたレビューは参考になりません。同じく「信者型ビジネス」をしている方の書籍についても、レビューから客観的な評価を下すに際し、評価対象とはなり得ません。
最後は「レビューの内容」ですね。ここが正直最も重要です。
個人的な経験を踏まえると、レビューは玉石混交です。多くの場合、匿名で投稿されているので、どうしても質にバラツキがあります。
重要なのは「質の良いレビュー」を掬い上げ、判断の材料にすることです。
質の良いレビューは、次の3点から成り立っているように思います。
論理的妥当性
科学的妥当性
社会的妥当性
「論理的妥当性」は、主張にロジックが合っているかが鍵となります。文章の「最初」と「最後」でメッセージが逆転していたり、ロジック自体が道理に反しているケースは、往々にしてあることです。
「科学的妥当性」は、該当の主張が果たして科学的根拠に支えられているのかどうかが検討の対象となります。注意しなければならないのは、一見科学的だと思えても、その分野の専門書をあたってみると、全く「科学的ではなかった」と思わされる事例ばかりだということです。
そういう書籍では、著者が「発想の飛躍」をしてしまっています。経歴上、科学的な訓練を受けていても、解明が進んでいない分野について、なかば断定的な言説をするのは、どう考えても「科学的な態度」ではありません。
「社会的妥当性」では、意外に思われるかもしれませんが「社会の常識」を参照します。つまり、一般常識に照らしてみて「妥当」だと思えれば、一定程度の信用は与えてもいいのです。
これは勘違いされることも多いのですが「みんなの意見は案外正しい」ということです。
むろん、常識が間違っている場合はありますが、言うほど多くないです。アインシュタインは「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことを言う」という言葉を残していますが、このたぐいの名言は使いどころが肝腎です。
要は、クリエイティブな頭の働きが要求される場合(芸術活動や広告業、新規事業の創設)に関しては、むしろ「常識」は積極的に疑ってかからないといけません。
しかし、通常の「本選び」では、その限りではありません。当たり前ですが、毎日常識をぶち壊そうとしていたら、日常生活がままならなくなりますから…。
上記、3点を「拠り所」として、レビューの利用を考えてみてください。
おわりに
ここまで目を通していただき誠にありがとうございました。
少しずつ執筆を進めていたら、いつの間にか1万字をとうに超えてしまい、もう少しコンパクトに伝えられないかと思いましたが、まあ無理でした。
本当は、もっと細かい部分を伝えようとすると、この10倍の分量があっても足りそうにありません。
この続きや質問については、Twitterをやっていますので、そちらからリプなりDMをいただければ、折を見て返答できるかと存じます。
最後になりますが、読書は本当に奥が深いものです。
読む前段階の「本選び」のノウハウを言語化しても、これだけ書けて、まだ書き足りないと思うところがある状態です。本当にヤバいですね。
では、あなたの読書生活が実りあるものでありますように。
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