感染症対策としてのテレワークと核オフィス、自宅オフィス


自宅オフィスは核オフィスの一種であり、自宅兼用オフィスとして日常生活を送る場である。
この自宅オフィスは、既に町医者等の自営業の人たちが実際に建てて暮らしている場であり、既存の事例から、その理想像を追及することが可能である。
例えば、子供や高齢者といった非生産的でケアの必要な家族要員をいかに見張ったり、世話をするかについての工夫が自営業者の建てて住んでいる家には既に施されていることが考えられる。
それが、例えば、新型コロナウィルスのような急な地球規模の感染症の拡大から退避するために、今まで職住分離で暮らしてきた人たちが突然、職住融合の生活を送る必要が出てきて、そのために、職住分離を前提として設計され建てられた家宅をいかに職住融合向けにリフォームしたり、ちょっとした改装や模様替えで職住融合に適した住まいにできるかということが喫緊の課題として出てくる訳である。
すなわち、政府機関から自宅待機の要請が出てからわずかの期間のうちに、今まで自宅を出て、徒歩、鉄道、バス等で通勤通学をしていた人たちが、自宅マンションとかにインターネット回線あるいは高速モバイル回線を開通させて、それにカメラ、マイク機能の付いたパソコンのような端末を接続させ、そこから家族が今まで通勤していた会社や、通学していた学校の内部ネットワークに高度なセキュリティを保った状態で接続し、オンラインで書類やノート類、プレゼンテーション資料等を作成、処理、決済したり、オンライン教材を学習したり、あるいはリアルタイムでのカメラとマイクを使ったオンライン会議、オンライン授業に参加して、同じ会社の他の人たちや同じ学校の他の教官や生徒、学生たちと、直接面と向かって話すのと同様に、ネットを介して必要なコミュニケーション、情報のやりとりを行い、必要な教示を受け取ることが、急速に当たり前のようになされるようになっている。
これは、自宅がそのまま勤務、学習用途のオフィスとして使われることが、自営業者に限らず、勤労者の人々にとっても急速に当たり前のことに転化したことを意味している。
この場合、そのままだと、自宅の様子が全て勤務先の会社や通学先の学校に筒抜けになるので、何らかの形で、自宅内を、家族の秘密が保たれるプライベートゾーンと、秘密が勤務先、通学先に公開されても構わない自宅内準パブリックゾーンとを分けて運用することが必要である。
また、世話に手のかかる子供や高齢者がオンラインでの自宅作業や自宅学習にあまり支障を来たさないように、適宜オンライン勤務作業、学習を中断して世話をすることが必要になる。その点、従来の勤務先に出勤しての時間給を受け取るやり方、通学先で一定の学習時間を確保するやり方では、うまく行かないため、勤務時間、学習時間それ自体には重きを置かず、そうした時間主義での評価から転換して、その代わりに、所定期日までにどのくらい仕事がはかどったか、あるいはどのくらい学習が進んだかを評価する進捗主義、成果主義での評価に、勤務評価、学習評価が急速に転換することになる。
現状、個人個人を感染症から隔離するために、各自が自宅で、通勤通学しているのと同等の作業をこなす必要が急速に生じているのであり、既存の通勤通学者にとっては、まだ試行錯誤が続いているといえる。
これを、今まで一通り自宅で必要な作業をこなしてきた、医者や農家、自宅工場主、士業の人たちといった自営業者の人たちの生活を参考にしつつ、高速外部ネットワーク接続を前提とした自宅オフィスでの作業のあり方の理想像を早急に確立する必要がある。
この場合、勤務、学習環境は、対象家庭のあり方によって、自宅オフィス化の方が良くなるか、より不良になるかが分かれてくると考えられる。
家庭が崩壊していたり、家庭内で虐待が起きていたり、家庭が貧困で家庭では十分な食事が用意できなかったり、家庭での要介護者の数が多すぎる場合は、自宅オフィスは、効率的、効果的なな作業、学習の場としては残念ながらあまり機能しない。かといって、運転本数の少なくなった電車やバスに乗って従来の会社、学校に通うのでは、感染症の拡大を招いてしまう恐れが大きい。
そこで対策として考えられるのが、自宅から外には出るが、距離的にさほど離れていない、ある程度交通が便利で、無用な人混みができないところに、従来の公立図書館の個室の学習室のような設備の核オフィスを、使われなくなった古い団地の部屋とかをリフォームしてネットワーク環境も整備して大量供給することが考えられる。事情があって自宅をそのままオフィスとして利用できない事情を抱えた人たちは、そうしたサテライトの核オフィスに通うようにすれば、誰にもじゃまされずにマイペースで仕事や学習を進めることができて良いと考えられる。そうした施設には、人間が生物である以上、自宅オフィス同様にトイレやキッチンやシャワールームを用意する必要がある。
テレワークでは、音声会議、ビデオ会議、あるいはwebベースでのチャットによる会議が利用される。そこではプレゼンテーション資料や学習資料をネットワークのクラウド上にアップロードして、出席者でそれを共有することが行われる。
対人感染力の強力な病原体の大流行に際しては、感染防止のためには、ワーカー同士の物理的な隔離の確保と、ワーカー同士のインターネット等のネットワークを通じたコミュニケーションの確保、意思疎通、意思決定の確保とが両立する必要がある。
それは、ワーカー各自が個別に別々のカプセルに入って隔離されて病原体への感染から守られつつ、ワーカー同士の今まで通りの共同作業が相当レベルまで可能であることの実現が必要であることを意味する。
従来、テレワークでは難しいとされてきた物理的なデバイス、部品、あるいは患者のような生身の人間のような存在も、一か所に存在させて、それをビデオカメラ、スマホカメラ、アクションカメラ等に映して、その映像をリアルタイムで視点を変えて観察、検証することが、宇宙衛星とかの離れた対象の遠隔操作とかの技術の大幅向上や、ネットワーク高速化技術の向上で容易になってきており、これも従来の通勤通学を前提とした業務や学習のテレワークへの移行を促進している。
なお、人間による物理的な移動がどうしても必要な場合には、多数が同時に乗り合わせて病原体への感染確率が高い公共交通機関ではなく、個人で動ける自家用車やバイク、自転車での移動がメインになってくる。あるいは、公共交通機関でも個室と同等の機能を持つ、利用客毎の車内での個別空間隔離サービスの開発により、感染症が広まっても、ある程度安心して利用できるようになると考えられる。

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