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「地域の子どもは地域で育てる」~子ども会と育成会が主軸の地域教育システムの構築~

■次世代に目を向けた持続可能なまちづくり 

 少子高齢社会の到来により、社会保障が児童手当や高校授業料無償化など、高齢者中心から支え手世代へと広がりました。地域においても、次世代に目を向けた持続可能なまちづくりを目指す方向にあります。
 そうした中、文部科学省は、学校を"地域の核"とするコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を広げているようですが、学校の統廃合が進む地方や地域では、後々"地域の核"を再編せねばならなくなります。

 私には「文科省はなぜ、子ども会に目を向けないのだろうか?地域の力を教育に活かそうというのなら、地域の人々が育成者や指導者として関わるこの仕組みを活用し、公民館を核にする方法もあるのに・・・」と思えてなりません。
 
 都城市では、各地で祭りや伝統行事、お楽しみ会などが行われ、「地域の子どもは地域で育てる」のスローガンが掲げられてきました。しかし、近年はスローガン負けしているように見えます。今後、どんな地域教育システムを整えれば、市内全域、持続可能でしょうか?

 「子どもを中心に、保護者だけでなく地域のだれもが関われること、地域の人材が自然に育ち活躍できる仕組みがあること」ではないか……と考えて、たどり着いた「自治公民館および15地区における、子ども会と育成会を主軸とした地域システムの構築」について述べていきたいと思います。
※都城市以外の市町村でも参考になると思います。

 子ども会に関しては、社会全体が正しい理解に乏しいようですので、まずは、基本的な解説から始めさせていただきます。

■子ども会および育成会について

 子ども会とは、地域を単位とした子ども達の異年令集団であり、子どもの主体性を活かした活動が、保護者や地域の人々の指導と援助によって、継続的に支えられるものです。
・対象者:小学1年生から中学3年生まで
・目的:楽しい集団活動を通じて、社会の一員として必要な知識や技能および態度を学ぶ。
・活動:子どもの役員やルールなどを自分たちで決め、大人の支援を得て進む、自治活動の体験の場。

⑧子ども会育成会を主軸に

●地域の大人や若者による指導支援が重要
・育成者:場所や用具の確保、安全対策など、物心両面にわたり援助する。地域のだれもが関われる。
・指導者:直接子ども達に接し、指導助言する。それなりの経験や技術が必要。以下の4者がある。

①集団指導者:育成会から委嘱された成人の指導者。子どもの自主的な活動に対し、指導や援助を行う。
②特技指導者:育成会からの依頼により、歌・ゲーム・スポーツ・郷土芸能など特定分野の活動について実技面の指導にあたる。
③ジュニア・リーダー(中・高校生):地区や市の育成会で養成され、遊びや歌、会議、プログラム作成などの指導ができる。成人指導者や育成者との連絡も行う。中学生は、自分の所属する単位子ども会ではイン・リーダーの役目。
④シニア・リーダー(主として18~22歳):子ども達への指導助言に加え、ジュニア・リーダーの指導も行う。
 
 また、地域の育成者や行政・各団体とのパイプ役も重要で、「総括指導者」と呼ばれる。
・総括指導者:総括的・監督的立場で各指導者に対し、指導助言を行う。啓発活動、指導者の発掘など。

●安心安全のための共済制度と安全教育
 子ども達の活動でケガをすることもあります。「全国子ども会安全共済会」という見舞金+賠償責任保険の制度があり、低額なのも魅力ですが、単位の活動から、地区や市・県の連合組織の行事参加などにも対応する広汎さも特徴です。

 しかし、一番重要なのは、大きなケガや事故が起きないようにすることです。その点では、子ども会における安全教育が注目に値します。指導者・育成者に対し、事前の点検、当日の心構え、事故発生時の救急体制などを促す学習会が行われています。 
 また、活動前に指導者やジュニア・リーダーが子ども達に対して行うKYTと呼ばれる、危険予知トレーニングも大変意義深いものがあります(危険のK、予知のY、トレーニングのT)。「どこがどう危険か?どうしたら良いか?」を子ども達に話し合わせ注意喚起するものです。KYTは、防災教育ツールとして広く活用されてよいと思います。

●連合組織の支援 

⑤子ども会育成会を主軸に

 子ども会には、地区・市・県・全国と連合組織があり、単位子ども会活動の支えとなる、様々な支援を行っています。
 都城市子ども会育成連絡協議会(市子連)は、安全共済会の取りまとめ、情報提供、学習会の開催ほか、ジュニア・リーダーの養成と派遣を行っています。

②-2子ども会育成会を主軸に

 来年、都城市子連と宮崎県子連は、発足50周年を迎えます。核家族化、家庭内少子化により、学校や家庭とは別の子どもの体験の場、自治の学習の場として、子ども会の重要性は高まっていると言えます。また、人生100年時代における大人達の活躍の場としても、必要性があると見ます。

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参考書籍:池本要著 『―豊かな心を育てる―子ども会指導の手引き』昭和62年・宮崎県子ども会育成連絡協議会発行

■子ども会と育成会が主軸の地域教育システム


●自治公民館の配下に子ども会と育成会を
 都城市には301の自治公民館があり、それぞれが部会と役員の方々を中心に地域を支えて下さっています。
 コミュニティの柱は、互いに顔を見知った自治公民館単位です。子どもを輪の中心にすれば、住民の世代間交流が活発になり、若い世代がいずれ地域を担う人材となっていくでしょう。
 

①子ども会育成会を主軸に


 都城市内では主に、小学生の保護者のみによって動いている「子ども会と育成会」を、福祉部や青壮年部と同じように、自治公民館下におく形態が理想的だと思います。その地の小・中学生が全員対象となり、校区外の学校や支援学校に通う子どもも参加できるようになります。 

 育成会は小学生の保護者に限らず、地域のみんなが参画できる組織にする必要があります。大人と子ども一緒に、子ども会の行事を練るとか、防災炊出し訓練と子どもお楽しみ会を兼ねるなど、工夫すれば、地域総参加型になります。一自治公民館では難しい場合も、となりの地域と連携する方法もあります。

●都城市内15地区における仕組み
 市内15地区(姫城・妻ヶ丘・小松原・祝吉・沖水・鷹尾・横市・庄内・志和池・西岳・中郷・山田・高崎・高城・山之口)全てにまちづくり協議会(まち協)が整いました。
 自治公民館・各種団体・NPO・事業所等が繋がり、住みよいまちにするため自分達で何ができるか考え活動する組織です。地区公民館を拠点に、地域の課題発見と解決を図る場として期待されています。 

 まち協には「自治公民館を直接的に支援する」存在であってほしいと思います。自治公民館役員の学習交流会の開催や、同じ悩み同士の自治会を結びつけ解決させる役目など、地区での事業には、先導的で自治公民館に刺激を与え、その後の活動に役立つものが必要です。

 各自治公民館で「防災訓練の実施」「子ども宿泊体験」などを催せる人材の発掘・養成が肝要だと思います。また、テントや餅つきセットなど器具を自治公民館に貸出すサービスも喜ばれるでしょう。

 子ども会に関する組織については、まち協内の「教育文化部会」に、地区子連の役目も担っていただきたい。子どもに関心を持つ意欲ある人を誘い入れれば、現役保護者は単位の子ども会活動に専念できるようになり、負担が減ります。

 山之口町(発足昭和47年)と山田町(発足昭和51年)の子ども会は、市子連と合併せず独自に活動してきました。ゆえに両町子連は、保護者以外の役員が活躍している地区(中学校区)の模範例になることでしょう。

●ジュニア・リーダーの準部活動化
 地区公民館(または中学校)にジュニア・リーダークラブを置き、地域の若手人材として育成する仕組みを確立できないものでしょうか。週に数日の活動でよく、指導者は地域の方に委嘱します。

ジュニアリーダー蒲公英のチラシ - コピー (2)

 ジュニアは、レクリエーションや歌、企画・運営・会計・安全対策・話し合い活動などのスキルを磨き、単位子ども会や児童クラブ等に派遣で出向きます。そこでは地域の人々との交流もありますから、ジュニア達が架け橋となり「地域に開かれた学校」にしてくれることでしょう。

 ジュニア達の企画・運営・会計などの活動を見てきた私には、自治会の役員さん方に匹敵するスキルをジュニア達は培っていると感じられるのです。
 準部活動化により、彼らも学校内で正当な評価を得られるようになります。将来、保育や教育関係をめざす人のみならず、ここでの体験は人生に役立つことでしょう。
 15地区で養成されたジュニア達が、市全体や県・全国のジュニア達と交流する形が理想的だと思います。

●専任の地域コーディネーターの配置
 まち協や各団体の多くがボランティアです。その活動が潤滑に進むよう、職員としての専任者が必要だと思います。
 自治公民館への連携支援、情報収集と共有化、人材の発掘とサポート、行政・学校・各団体間との連絡調整など、子ども会で言うところの総括指導者の役目を持つ人です。 
 15地区のコーディネーターが市全体会議で集って、情報を共有するシステムも必要となることでしょう。

■教育行政の支援のあり方が重要

 ここまで述べたことの実現に、教育行政の積極的な支援が必要なことは言うまでもありません。
 市長部局と教育委員会が同じ卓につく「総合教育会議」のテーマに据え、全庁横断型のプロジェクトチームの立ち上げを望みます。
 教育委員会・コミュニティ文化課・市子連・社会教育関係団体等連協・社会福祉協議会・南九州大学などの連携体制も重要です。

⑦-2子ども会育成会を主軸に

 地域が求めるのは、お金や物の支給だけでなく、気軽に相談でき、有益な情報や知恵・アドバイスが得られることではないでようか。課題解決に直結するものと思います。

●地域の人材育成と人材バンク
 特技を活かした社会貢献には、子ども相手なら、それなりの伝える力が必要となります。技があっても"伝えること"に自信が持てず、しり込みしている方々がいますので、背中を押してくれる学習会やサポートが欲しいところです。
 都城市子連が50年前の発足当時にまずしたことは、成人の指導者育成でした。これが肝なのです。

 集団指導者を養成・認定し相互研鑽を図る組織「指導者の会」の設立が必要だと思います。福岡県糸島市の「指導者の会」を参考にしたいところです。
 以前福岡で開催された「子ども会安全指導者研修」で糸島市の方から聞き、ネットで調べると、若手もいる充実の組織でした。

 また、特技指導者(学生から高齢者まで特技を持つ人)を、募って認定登録すれば「都城の人材バンク」となり得るでしょう。子ども会ほか各団体や学校の授業など、様々な派遣要請に応えられます。人材発掘を地区でしてもらい、市全体で共有し派遣する仕組みが良いと思います。

●都城から社会教育のしくみを発信

 「地方自治体の教育政策の課題は、地域教育の社会構造的分析を行い、地域の社会教育のシステム化を進めること」と、以前から専門家の指摘がありました。
 今、国では子ども庁の創設を検討中です。都城全域で「地域の子どもは地域で育てる」システムが整えば、全国の参考事例として注目されることでしょう。
 財源は日本一のふるさと納税で! 寄付者の使途の希望として一番多いのが、子ども支援だということですから。 

⑦子ども会育成会を主軸に「地域の子どもは地域で育てる」

■私の実体験より、直面した課題

 私の子ども会活動は、単位(北原町)に始まり、全国子ども会連合会の会議に参加するまでに至りました。
 しかしながら、無念にも力及ばずで、悩ましい課題が未解決であります。この提案の所以でもありますので、記しておきたいと思います。

①PTAと育成会の混同視が招く弊害
 2000年、北原町の夏祭りで、5、6年生の手による子どもの店を開きました。元教師のNさんが市の補助金(子ども会の新たな試み対象)を申請し、私も一緒に子ども達の活動を支援しました。
 活き活きと主体的に楽しむ子ども達の姿に、手ごたえを得た私達でしたが、自分の子どもの小学卒業と同時にやむなく引退。
 育成会=小学校PTA(保護者のみ)のため閉鎖的だったのです。これでは、育成会も自治公民館も、次の地域人材が育つ機会を逸していると言えましょう。

②居住地によって、子どもの体験機会に差
 市子連主催の球技大会が昔はあり、夏休みに練習を重ねた単位子ども会が、地区予選を経て集い競い合ったものでした。
 となりの栄町は、子どもが少なくてチームを組めないため、私たち役員は、そこの5、6年生を北原チームに誘い入れました。
 居住地によって楽しい体験の機会に差があるのは、気の毒に思いませんか? 町ぐるみの互助が必要だと思います。

③保護者の負担が重すぎて地区子連が衰退
 小松原や妻ヶ丘地区(中学校区)の、市子連脱退を抑止できなかったことが、本当に残念でなりません。
 単位の育成会長が集まり地区子連を構成するため、役員全員が小学生の保護者。単位と地区両方の子ども会活動で忙しいうえ、地区公民館からの様々な動員も大きな負担、というのが脱退の理由でした。
(私も気持ちは理解できます。かつて小松原地区の役員をしていた頃も同様でしたが、人材が揃っていたから出来ていたと言えます)。
 ここでも元凶は「育成会=小学校保護者のみ」だということです。
 地区子連は、保護者以外の地域人材で担うのがベストだと思います。

④安定した仕組みなしには、持続不可能
 地区子連が消滅した小松原地区で、有志による鹿児島海水浴が企画され、私も大学生(当時)の娘とスタッフとして参加したことがあります。
 よそから転勤できたばかりの親子の声「初めての都城、地域の方々によるバスの旅(市のバスを手配)なんて、本当にありがたい」が耳に残っています。
 しかし、継続はかなわず・・・。安定的な組織として地区子連の存在意義は大きいと言えます。

⑤頼れるジュニア・リーダーを呼べない
 小松原地区での子どもイベントで、ジュニアの派遣を市に要請すると、小松原中学校の生徒が、文化祭の練習の合間に交代で来て盛り上げてくれました。
 見事な引継ぎぶりと確かなスキル、頼りになる地域人材です。が、現在では市子連に所属していない小松原地区に、ジュニアが派遣で来ることはありません。

ジュニアリーダー蒲公英のチラシ - コピー - コピー

⑥ジュニア・リーダーが自分の地元で活躍できない 都城市ジュニア・リーダークラブ蒲公英(たんぽぽ)に市子連役員として2007年、私は関わり始めます。
 志を持つ中・高校生が月2回集って、子ども会活動の指導スキルを磨いています。その様は、今、学校教育で進んでいるアクティブ・ラーニング(教師・生徒間の対話重視)そのものでした。
 時には、各育成会からの派遣要請を受け、仲間や大人たちと連絡調整をして出向きます。派遣先は現在、市子連所属の祝吉・沖水・横市・五十市の4地区のみ・・・、せっかくの人材が活かされていないのが残念です。
 それ以外の地区に居住するジュニア達は、自分の地元で存在さえも知られず口惜しいばかりです。

 以上のような経緯があるものですから、私は、現役保護者を含めた次世代のために、ふるさと都城の発展のために「子ども会と育成会が主軸の地域教育システムの構築」の実現を願っているのです。

 ※都城文化誌「霧」107号(6月発行)に掲載され、Facebookで3回に分けて投稿した文章を、加筆修正して記載しております。

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