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BIMが得意なこと苦手なこと【Archicad編】

建築BIM加速化事業により、これから新しくBIMを導入しようと考えられている事務所も増えてきましたが、これまでのCADとどう違うのか・どんなメリットがあるのか不安に思う方も多いと思います。
今回はArchicadを例にしてBIMの特徴について紹介します。

1.立体的な整合性の把握、干渉チェックがしやすい

CADでは建築物をある面で切り取った切断面を図面としてまとめている関係上、図面に直接出てこない部分で不整合や確認漏れが起きやすいです。
対してBIMでは立体的なモデルを組み立て、そこから図面を切り出す流れになっているため、全体の整合性が取りやすく、干渉している部分のチェックがしやすいです。
しかし、CADよりも各段にデータの情報量が増えているため、設計をし始めたばかりの段階では、極力書込み量を押さえて、ラフなモデルの状態で検討を繰り返し、まとまった段階で詳細な作り込みに移るように常に意識する必要があります。
とは言え、部分的にここの詳細が見たい、パースで仕上を見ておきたい等の要望は出てきますので、その部分だけを取り出して作り込む事や、別のソフトや手描きスケッチ等の手法も組み合わせて、なるべく手間の少ない検討フローを構築することが重要です。


GRAPHISOFTが公開しているAC25確認申請サンプルモデルより
このモデルは二次部材までかなり作り込まれていますが、ラフに作り込むだけでも、
意匠・構造・設備の干渉が無いか直接確認が可能です。

2.初期段階でシミュレーションをかけてVEできる

1点目で述べたように、設計の初期段階で立体のデータを準備できるため、それを使ったシミュレーションを早い段階で行うことが出来ます。
CADの場合は図面を用意する→3Dで立ち上げるの順序になるため、検討のタイミングやデータ量的にきつい作業になりがちです。また、構造や環境負荷等の要素は建築のコスト全体に占めるインパクトが大きな部分になります。
提案の大筋を決める前段階でシミュレーションをかけることで、その後のコストや性能を大まかに確認することができるのは大きなメリットです。

3.繰り返しの省力化ができる(テンプレート、お気に入り)

この点についてはCADと近い部分が多いですが、BIMでも、ファイルの環境設定をテンプレートファイルに書き出したり、オブジェクトや柱・壁等の各要素をお気に入りに設定することが出来ます。
BIMは、事務所で普段使用している図面表現の方法に近づけるため等の初期設定の検討と、その入力がかなり手間になるのですが、一度決めた設定をテンプレートやお気に入りとして各プロジェクト間で共通に使い回すことで、かなりの効率化を図ることが可能です。

4.リストとモデルの整合性がとりやすい、ミスが減らせる

建具表や内部仕上表などの情報量と変更が多いリストと、モデルの内容を直接紐づけることができます。これまでは建具や仕上の情報はただの線と文字で独立して存在していたため、ほぼ手作業と目視の確認でしか集計や表にまとめることができませんでした。BIMでは3Dモデルから情報を取り出して表にまとめるという順序になるため、表のフォーマットを始めに設定してしまえば、以後の整理はBIM側でほぼ自動的に行ってくれます。

5.自動処理(包絡、集計、計算)による省力化と制限

BIMはCADのように厚みのない線ではなく、壁・スラブ・屋根等の各立体的な要素を直接扱ってモデルを組み立てることになります。そのためこれらの要素の納まりを自動的に処理して、勝ち負けを付けてくれる包絡機能が標準でついています。
階段や手摺といった複雑な要素も、寸法や断面形状を選択するだけで、自動的に形状を変化させてくれる機能も充実しています。
また、入力した要素の面積や体積等を、種類別に集計して概算表や数量表を作成したり、敷地面積等の求積表をほぼ自動で作成できるツール等もあります。これまで設計期間中に多くの時間を取られていた、比較的、単純作業の部分を省力化することができます。
その反面、BIMソフト側で想定していない納まりには上記の自動処理やツールを使うことが難しい場面が往々にして登場します。その場合にはモルフ化したり、別の3DCADソフトを併用する等、データの作り方を工夫することが求められます。この特徴により、詳細で厳密なモデリングを詳細設計や施工レベルまで扱うことはハンドリングが難しくなります。

6.文字入力の手間はそれほど変わらない

5点目のような自動処理やツール等で省略化できる点が多い反面、そのオブジェクトに仕様を書き加える手間は、これまでのCADで行っていた操作とそれほど変わりません。仕様はメーカーや状況によって多種多様に変わるため、自動処理の範囲でこれをカバー仕切れないことが多いため、手動で直接打込むことが多いです。特に建具や家具、設備等に記載する金物などの細かな情報の入力を自動化することは困難です。
屋根や壁などの複合構造で作成した要素の設定に、手入力で各断面層の仕様を入れておくと、書出しツールで文字を引き出すことはできるため、頻繁に使う複合断面の要素はこのようにお気に入り登録をしておくと、省力化と整合性の二重でメリットがあります。


GRAPHISOFTが公開しているAC25確認申請サンプルモデルより
軒天の屋根要素にプロパティを手入力しておくと、その内容を自動ラベルで断面図に引き出せる

7.場面に応じたソフトの切替は必要(手描きとCADは無くならない)

6点目のようなハンドリングが難しい問題が生じる場合、仕様等の複雑な文字情報の管理はエクセル等の表管理ソフトに任せて、そのリストとBIM内のモデルをIDだけで紐付ける等の、データ管理の工夫が必要になってきます。
似たような問題は、詳細図等のディテールの作り込みが難しい図面や、外部仕上表等の仕上情報の集計だけでは難しい図面にもついて回りますので、3Dデータでの管理が不要なものは2DCADや表計算ソフトで作成する等の、それぞれの特長を生かした切替を検討した方が良い事が多いです。

設計フローに合わせた使い道・使い方を明確にすることが大切

ここまでBIMの特徴について7点取り上げてきましたが、各事務所のやり方に合わせて、どこまで作り込む事をゴールにするのか・何の資料をまとめるためにBIMで管理がしたいのか・会社で既に使用している他のソフトとの関係はどうか等の使い道と使い方を定めなければ、手間がかかる割に思ったような成果が出てこないという様な結果になりがちです。
具体的なソフトの使い方や効率化のための手法等はネットに多く紹介されていますが、BIMを使う目的や使い道については個々の事務所によって微妙に異なるため、BIMメインへの切り替えを機に、自社のフローがどのようになっているか確認と見直しをお勧めします。

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