見出し画像

ハノイ制服図鑑/某国国営焼き肉レストランは日替わり制服

画像1

この店について書くときは、最近の世界情勢とか、国連決議とか、もうすぐ誕生日が来るあの方のこととか、そういう背景的なことには一切触れず、制服と料理のことだけを書かねばなりません。ちょっとキワどい状況なので。
それでもここに行くことは未知との遭遇、月世界旅行です。

ここで働くオジョー達は子どもや親をクニに残し、単身出稼ぎの身ながら日夜懸命にシゴトにハゲんでいます。
みんな高度な民族識別能力と語学力を持っていて、顔だけ見てニッポン人と見抜けばニッポン語で話しかけてきます。
服は全部支給品です。みんな同じ。ニッポンの1970年代のBG的雰囲気を漂わせています。OLって言う前はBGでした。ビジネスガール。OLもBGも今は死語。
行くたびに違う服を着ています。何着持ってるんだろ。胸にはあの方のバッジが燦然と輝きます。

夜7時半頃、突然ショータイムが始まります。それまで給仕をしていたオジョー達が、ギターを鳴らしドラムを叩きキーボードを弾きます。
お客にニッポン人がいれば、すかさず北国の春なんかを演奏してくれます。本国からのパワハラで傷ついた単身フニン者のココロを癒すには十分な歌唱力です。思わず泣きます。

料理は国営だけあってさすがにウマいです。冷たいおソバは絶品。辛い白菜漬けも新鮮でサクサクしてて、その上深みがあって上品な味です。
極めつけは幻のビール。国営工場で作られたモノがここでだけ飲めます。やや、というか、かなり高いです。1本250k.ドン≒1,200円。話のタネです。
注ぎ方も訓練されたモノです。瓶の口をグラスの縁に載せて少し倒して、要は左手を使わず泡が立たないようグラスを斜めにして注ぎます。

ここで行われていることはニッポンでは絶対に体験できません。
世の中に絶対ということは滅多にないと、昔、自動車教習所の教官に言われたことを思い出します。
教習所の踏切は絶対に電車は通らない。だからたとえ脱輪しても慌てるな、って。
それくらい絶対です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?