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焼酎の熟成期と蔵人 ~焼酎も蔵人も落ち着くころ~

蔵人です。
蔵も春の陽気になり暖かくなってきました。
昨年仕込んだ焼酎はこの時期からより熟成が進みはじめます。

■芋の熟成期間

~蒸留したての「芋ツン期」~

蒸留したての焼酎は「ガス香」と呼ばれる香りや雑味を含み、ピリッとした酒質です。「若い」と表現したりします。粗削りながらフレッシュな芋芋しさもあります。「新酒らしさがたまらん」とおっしゃるお客様もたくさんいらっしゃいます。

~時間が経ち落ち着いてきた「芋ダンディ期」~


新酒の荒さの原因は、アルデヒドやイオウ化合物などの成分が多くあることにあります。
刺激的な青臭さ、焦げ臭さ、イオウのような臭い、ゴムのような臭い。
これらは時間がたつにつれて散っていき、荒さがおちついてきます。
量が適度であると、いい香りにもなるのですべて悪ではありません。
熟成が進むと新酒とはちがう芳醇な香りも生成されていきます。

~まろやかになった「‥どなた期」~

もう一つ、お酒の主成分であるアルコールにも特有の刺激がありますが、時間の経過でアルコールに水分子がまとわりついてくることで角がとれたようになり、まろやかになります。
水とアルコールは相性いいように思えますが、しっかりなじむには時間がかかります。


■熟成させるのも奥が深い

蔵人は結婚式のとき、当時の工場長にスピーチでこの話を伺いました。
他人同士が時間をかけてなじみ、家族になる。う~ん、夫婦関係の真髄ですね。

~たくさん寝かせてあげたいけど‥~

長く熟成させればいいというわけでもなく、芋焼酎の場合芋らしい風味は時間の経過とともにきえていってしまいます。丸くなる代わりに「らしさ」がなくなるなんともジレンマのあるお酒です。

定番酒は落ち着いた原酒と若い原酒を絶妙にブレンドすることで年中同じ味わいになるように調節しています。これはブレンダーのなせる特殊技能です。


■蔵人の1年ってこんな感じ

新酒のつんつんした状態ではお酒の本質をみることは難しいので、ある程度おちついてからどんなお酒になったかを確認していきます。
実は昨年の反省が始まるのもこの時期からなのです。

生のさつま芋は水分を多く含んでいるので、貯蔵に向いていません。
当社ではさつま芋の収穫時期にあわせて、年間製造数量のほぼ全量を仕込みます。
8月盆過ぎから11月末までの3か月ほどの間、とにかく一極集中、体力勝負。
一気にエイヤーっと造り終え、春になって酒質を確認します。

タンクごとに利き酒を行って意図とギャップ、手ごたえや改善点を検討しながら、次シーズンへの構想を練ります。
あと何シーズン造りに携わることができるかな~とふと思い、
「俺の人生は…」と哀愁をおびた表情を醸し出します。至高の域はまだまだ遠いです。
挑戦する時期、反省する時期と1年単位で取り組むのが、ちょうどいいと思うこともあります。

~蔵人の1年~

芋焼酎の製造時期は過酷さ故、体重がみるみる減少し、引き締まった肉体になります。

最盛期をすぎ、正月で体重は一気に回復し、
そこから春の陽気を感じつつ悶々としはじめ、
夏には前年比102%くらいで翌シーズンを迎え…。

「あれ?…増えてる。」

これを成長といってはいけないと思う蔵人です。



編集担当より

今回は、焼酎の熟成について…
毎回ためになるな~と私たちも勉強しながら編集しています。

編集というほど、大したことはしていませんが(笑)

私は、毎回投稿のイラストの中に「推しイラスト」を見つけています。
今回の私の「推しイラスト」はこちら!!

ベストオブ「推しイラスト」

この、ちんまりした感じにズキューンときました!
今回は忙しい合間をぬってイラスト書いてくださいました!本当に感謝!

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