【七夕後日談(たなばたごじつだん)】
例によって、7月7日、七夕。
今年も雨だった。
そもそも日本は雨季であり、織姫と彦星にとって圧倒的にアウェーな状況なのだ。
天の川の絶景と彼女らの恋愛模様は梅雨前線が発達していない、世界のどこかの地域に託すとしよう。
なんて味気ないことを考えて空を眺めていたら、星が瞬いた。
流れ星かなと思って見ていたら、裏山に落ちた。
もう一度だけ言う、裏山に落ちた。
爆発音で耳が痛い。
ここで別にスルーしてもいいのだが話が「起」ぐらいで終わってしまうので「承」を探しに行くことにした。
裏山は雨でぬかるんでいて最悪のコンディションだった。
早く帰ってシャワーを浴びたいが作者が泣くので物語を前に進めよう。
森を抜けると急に視界が開けた。
さっきの爆発で辺りが吹き飛んで更地になっている。
さらっと表現してみたが文字通りの焼け野原状態である。
こんなところに人は居なかったと思うが、もしもを考えるとゾッとしない。
何か物音がした。
まさかと思ってスマホのライトで照らすと10代くらいの女の子が倒れていた。
寒気がした。
言わんこっちゃない。
最悪の展開である。
さっきの爆発音で助かっているとは到底思えなかったが急いで駆け寄る。
「おい、大丈夫か、しっかりしろ!?」
反応がない…
そりゃそうだ、あの衝撃だったし…
なんでこんなところに居たんだよとも思ったが、きっと運が悪かったのだろう…
念のため、救急と警察に電話しようとしたら、何か物音がした。
「ZZZz…」
寝息だった。
もう一度だけ言う、寝息だった。
「ふざけんな、起きろ!」
軽め(気持ち強め)にチョップした。
決してDVじゃない。
「痛たたた…。何するのよ、いきなり!」
「オマエが何してるんだよ。こんなところで寝てるんじゃねーよマジで。」
「仕方がないじゃない、長旅だったんだもの…」
「は?意味が分かんねーよ、こんな夜中にこんな裏山で寝てる旅行者が居るわけないだろ。」
「違う、私は、オリヒメなの。こと座のベガ、別名アークライトからやってきたの。この星を救いに来たの。」
頭が真っ白になった。
意味が分からなかった。
瞬間的に思考を何十も繰り返した結果、僕はある結論にたどり着いた。
「よし、とりあえず警察に連れて行こう、うん。」
「ちょ、待っ、えっ、えっ、えっ?」
…
…
…
始まりはいつも突然に前触れもなく、
いつの間にか巻き込まれている。
小さな歯車でさえ動きだせば、
やがて大きな仕掛けを動かす事になる。
出会いに必ず意味があるのなら、
偶然が必然なら、運命があるのなら、
自称オリヒメとの出会いにもきっと。
~To be continued.~
2019/03/12(Thu): 今日から三年ぶりの上京です、楽しみですよ。 「東京バナナ」を必ず買います、大好きです。