見出し画像

マレーシアが中国船を拿捕(その1)                

さて…。

マレーシアのEEZに沈んだ英国の船。太平洋戦争中に日本軍に沈められました。この船を中国の民間船がスクラップ回収目的で一部引き上げ。

それを見たマレーシアが民間船を拿捕しました。

【クアラルンプール時事】マレーシア海上法令執行庁(MMEA)は29日、マレー半島南部にあるジョホール州東岸沖の領海内で、無許可で停泊していた中国船籍の貨物船を拿捕(だほ)したと発表した。貨物船は、太平洋戦争開戦直後に日本軍により撃沈された英海軍の戦艦プリンス・オブ・ウェールズの残骸から、遺物を不法に回収していた疑いがある。
MMEAは、貨物船を捜索した結果、沈没船から回収したとみられる金属片や砲弾を発見した。金属スクラップとして販売することが目的だった可能性がある。
プリンス・オブ・ウェールズは当時の英海軍新鋭艦で、1941年12月10日、マレー半島東部沖の南シナ海で日本軍に撃沈された。ただ、中国船が拿捕された海域は、中国が主張する同国領海の外とみられる。


これから裁判などが行われるのでしょうが、いや、どうなるんだろう…。

さて、ユネスコ文化遺産保護条約というのがありますが、これらの3か国は批准していませんので、厳密にいえば、ここでは扱う根拠がありません。とはいえ、現在70か国以上が批准をしているので、影響がないわけではありません。法律的な根拠はないにせよ、他国との関係など…。

SDGs、国連海洋科学の10年などの取り組みでは、拘束力などはありませんが、水中文化遺産の保護を課題の一つとして捉えていますので、その枠組みの中で中国の行動は避難に値するかもしれません。ただし、これも、根拠はありませんが、やはり国際的な関係の上でどう動くか…

次、マレーシアのEEZにあるということ。領海ではないです。排他的経済水域では経済活動の優位性・資源の活用に関しては主張できますが、それ以外の活動は規制する根拠がありません。排他的経済水域は、公海と考えて差し支えありません。マレーシアはEEZにおいて文化財を規定する根拠を持っていません。つまり、厳密にみるとマレーシアの拿捕には根拠がありません。

中国は、今回の拿捕に対して異議を唱える可能性もあります。さらにマレーシアの法廷に中国船を出廷させる根拠がない…。

では、英国側の見方
これは、軍艦であるので所有権は明確です。イギリスの所有物を傷つけられたことになりますので、イギリスは中国に対して民間船を野放しにさせた、というお叱りを発することは可能。まあ、しかし、これは英国と中国の関係を見ないと…。この船、数年前からサルベージの対象になっていたようですので、イギリスも見て見ぬふり? 

私としては、中国は水中文化遺産を尊重している優等生だ、という主張を世界に示したいのではないかと思います。そうなると、中国船籍を自ら処罰する可能性も?どうなんでしょう?

いや、中国政府がどう出るか…まあ、領海問題などは全く関係ないです。

さて、この問題…日本にとって対岸の火事ではありません。

1.日本はユネスコ水中文化遺産保護条約を批准していない
2.EEZにおける文化財の保護の規定が全くない
3.これまで無作為に引き上げられた日本の沈船に対して対応していない

同様のことが日本近海で起こる可能性もあります。また、太平洋戦争で失った船舶で最も多いのは日本のモノ。

さらに、例えば…中国政府が、日本のEEZで中国から出発した遣唐使船を引き揚げても、実は日本政府は何もできません。

日本は海洋国家と内閣府は言ってますが、どうでしょうか?法の支配…?さてさて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?