【SS】ウミトツキ【絵のない絵本】
あおいあおい海の、ふかいふかい場所の、くらいくらい水のなか。
ひとりぼっちで泳ぐのは、すけてきえてしまいそうなほどきれいなクラゲのクゥ。
クゥは仲間のなかで少しういていました。
クゥはいつも上からとどくぴかぴかした光をみあげているのがすきでした。
ただ、そのはなしをまわりのかぞく、ともだち、学校のせんせい、だれにはなしても、いやなかおをされ、ばかにされてしまいます。
それでもクゥはそのぴかぴかをみあげることをやめませんでした。
ある日の夜。クゥはとうとうがまんできず、家をこっそりぬけだし、ぴかぴかの正体をみにいくことにしました。
海の上をみにいくのはみんなが口をそろえてやめなさいといいます。
たしかにひとりで泳いでいくのはとってもこわい。みんなにきらわれて、ばかにされるのもこわい。
だけどクゥはしらないままでいることのほうがいやだったのです。下をむけば元いたところはまっくらで、そのことのほうがこわくてぴかぴかにむかっていっしょうけんめい泳ぎました。
チャプン。
海からかおを出したクゥはおどろきました。
目の前にはおおきくて、やさしい、きいろいひかり。
しずかでここちいいかぜ。
みんながそうぞうしていたこととはおおちがい。
きれいなせかいがひろがっています。
「やあ、こんばんは」
おおきなぴかぴかはクゥにきづいて、あいさつをしてくれました。
「きみはなあに?」クゥはおもわずきいてしまいました。
「わたしはツキだよ」
海のそこにまでとどくぴかぴかの正体はお月さまでした。
「あなたは?」
「ぼくはクラゲのクゥだよ」
ツキはにっこりわらって「あなたとわたしはなんだかにているね」といいました。
クゥはそのことばにうれしくなってなんどもなんどもうなづきました。
それから夜があけるまでクゥはツキとたくさんおはなしをしました。
夜があけて、ツキとのさよならのじかんです。
「ツキ、もういっちゃうの?まだまだいっしょにいたいよ」
「だいじょうぶだよ、クゥ。またたくさんおはなしきかせてね」
あさひがのぼり、ツキはいってしまいました。
それからクゥはいきたいところにいく旅にでることにしました。
クゥはもうじぶんがひとりじゃないことをしりました。
またツキにあうときはもっとたくさんのおはなしをするでしょう。
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