あらとうと 【詩】
はるかに遠い昔の
人々がまだ素朴であった時代
世界は詩でできていた
朴の葉が宙をただよい
地面にたどりつくまでの間に
無数の詩がつくられた
(あらとうと あらとうと)
今でも ごく稀に
山頂で発見される
抹香鯨の化石
まだ山が海に沈んでいた時代の
杣道を辿っていくと
貝に似た詩片がころがっている
(あらたっと あらたっと)
シェスタから目が覚めると
ポチャン
と水音がして
梨の塊りが沈んでいく
甘酸っぱい腐敗の匂い
めづらかなる詩のひとかけらでも
(あなたっとし あなたっとし)
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