「選択の科学」(文春文庫)書評-「選択肢過多理論」という逆説的理論に対する逆説的結果

 逆説:真理に反対しているようであるが、よく吟味すれば真理である説。(広辞苑より)

 今回取り上げる本は、シーナ・アイエンガー著・櫻井祐子訳の「選択の科学」(文春文庫)です。私が公務員から畑違いの民間企業に転職後、この本のおかげで転職先に多少のインパクトを与えることができたと考えるので、取り上げることとしました。この本を読もうと考えたきっかけは面白そうだと思って手に取った際に訳者が櫻井祐子であったから、という単純な理由によるものです。この人が翻訳している本は単純に面白いものが多いので転職の直前に読んでみました。個人的には櫻井祐子と村井章子の翻訳は大好きで、今まで読んできた中でも外れはなかった気がします。実際、初めて読んでから6年近く経過した今も著者のシーナ・アイエンガーは意思決定に関する議論の端緒を開いたという意味で尊敬していますし、自分では絶対にここまで深い考察はできないとも感じています。ただし、今回取り上げるのはこの「選択の科学」で提示された「選択肢過多」という逆説的理論が、実際のビジネス上はかなり応用が難しいということについて、私の民間企業で活動を踏まえつつ議論を展開していきたいと考えております。

 まず「選択の科学」の中でもっとも有名な「選択肢過多理論」の実験について取り上げます。かなり有名な実験で、様々な心理学の書籍やビジネス書で取り上げられているので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

問.デパートの試食ブースでジャムを販売した場合、以下①②のどちらのブースで販売したジャムのほうがよく売れるか。

①6種類のジャムを販売するブース

②24種類のジャムを販売するブース

この結果は驚くべきことに、①のほうが②の7倍の売上げがあったというものでした。「種類が少ないほうがよく売れるんかーい⁉」という反応が普通かと思います。私も実際にこの本を初めて読んだ際には、心の中で同様の独り言を叫んでいました。試食ブースの前で立ち止まる方は②24種類のジャムのほうが多いのですが、実際にジャムを購入する客の割合は①6種類のブースでは30%であったのに対して、②24種類のブースでは3%にとどまったとのことです。種類が少ない方が選択される、これを「選択肢過多理論」と言います。たしかに言われてみると、自分の経験上も電化製品を買いに行った際に種類が多すぎて頭がパンクしてしまうことがあったので、よく考えるとその通りなのかもしれないとも思いました。こうしてこの実験が書いてある「選択の科学」を読んだ私は「しめしめ」と思い、さっそく民間企業への転職後、初任者研修という最初の研修を受講した後で提出が課されていた報告書でこの理論をぶっこみました。

以下、その一部を抜粋します。(太字部分が選択肢過多理論について直接言及した箇所です。)

1. ボックスストアについて(●●主任より)
 主にAldiの歴史やわが社とAldiの比較についてご講話いただいた。個人的には、①Aldiの牛乳や小麦粉がReweのそれと比較して圧倒的に安価であるという点と、②Aldiのアイテム数が800~1,200、わが社のそれが1,500~1,800、通常のスーパーマーケットがおよそ15,000であるという点が興味深かった。①について、Aldiの扱っている牛乳や小麦粉が低価格なのは、産地がEU域内 の東欧の農業国だからではないか、農業の規模が日本とは比較にならないくらい大規模であるからではないか、あるいはヨーロッパの気候が日本より 冷涼なため輸送に冷蔵設備をほとんど要しないからではないかといった質問を私からし、それに対して適切な回答をいただけた。②については、アイテムを絞ることによって、コストを抑制することができるということを学んだ。わが社がこれまで様々なアイディアによって生存競争を勝ち抜き、お客様にも貢献してきたということが理解できた。
話が少しそれるが、②についてのお話を聞いているときに、アイテム数を絞ることはコストを抑制するのみならず、お客様が商品を選択することそれ自体に貢献しているのではないかとも思った。というのも私事で恐縮ではあるが、最近「選択の科学」(シーナ・アイエンガー著、櫻井祐子訳/文春文庫)という本を読み、アイテム数が豊富であることは必ずしもお客様の幸福には直結しないと考えるようになっていたからである。この本には選択肢が多く、より自由な状況が与えられていても、人間は必ずしも幸福になるとは限らないということが書かれていた(もちろん幸福になる「とは限らない」のであって、場合によっては選択肢が豊富なほうが幸福であるということもある)。たとえば、アメリカのスーパーマーケットのドレーガーズで英女王御用達のジャムを試食コーナーで販売し、一方の状況では試食することのできるジャムの種類を6種類とし、他方の状況では24種類とする実験を行った。その結果、24種類のときは買い物客の60%が試食に立ち寄ったが、6種類のときは買い物客の40%しか立ち寄らなかった。しかし、ここからが驚くべきことであるが、24種類の試食に立ち寄った試食客のうち実際にジャムを購入したのはたったの3%であったのに対し、6種類の試食客のうち実際にジャムを購入したのはなんと30%もいたのである。実際にジャムを購入した人数は6種類の場合のほうが24種類の場合の6倍以上であったということである。
この本では、それ以外にアメリカの確定拠出型年金の加入率、医療保険制度のパートD、P&Gの売上についても同様の言及がなされているが、私自身も最近選択肢が少ないほうが幸福なのではないかと感じたことがあったのでその点についても言及したい。
 私は時間に余裕がある時、店舗見学をすることがあるが、見た目のせいかよく他の買い物客から話しかけられる(一度などはユニクロで買い物中に年配の方から靴下はどこにあったかと聞かれ、たしかあのあたりにありましたよと言って案内したこともある)。
 その日は近所のスーパーマーケットの店舗見学をしており、ちょうど卵をぼんやり眺めていたところ、隣にいらっしゃったやはり年配の女性から「どの卵がいいのかしらね」と話しかけられた。その方は「種類が多すぎて選べない、困っちゃう」ともおっしゃっていた。後で私はその店舗の卵の種類を数えたが、その種類はなんと6種類であった。その時の女性の表情は選択肢を豊富に提供されていることからくる喜びの表情というより、むしろ何をどう選択すればいいのか分からないといった困惑の表情であった。
 私も今後、自己の担当を持つことになるかと思うが、その際にはこのような点にも留意しなければならないと感じた。

 もともと私が転職したディスカウント系の小売業のサンディという会社は単品大量仕入による原価ダウンを志向していたこともあり、私が上記の研修報告書を提出してから、1ヶ月と経たないうちに店舗で扱えるアイテム数が大幅に削減されることとなりました。この結果はシーナ・アイエンガーが提唱した「選択肢過多理論」と同じようになったのかというと、話はそう単純ではなく、かなり面白い結果が出ました。これについては、後ほどまとめて言及します。

 そして転職してから2年9ヶ月ほど経った頃、私の作成した上記とはまた別の提案(スピンオフの別記事として後日投稿します。)が会長の目に留まり、ある日の午前7時から会長と面談することになり、2時間ほど読書や映画の話で盛り上がりました。そしてその1ヶ月後には、私は平社員のまま店舗から本社の商品部という部署へ異動しました。2019年3月に異動となり、それからはずっと商品データの入力という正確性と迅速性がひたすら要求される業務に携わっていました。当時の上司やご指導くださった先輩社員には申し訳ないのですが、正確性・迅速性を求められる業務は私がもっとも苦手とするタイプの業務であり、どう考えてもデータ入力を10年、20年専門にされている社員より劣ることは明らかでした。この時期の収穫は、あまりに仕事で達成感が得られなかったがゆえに勤務時間外にその鬱憤を晴らすべく読書に集中することができ、普段は年間の読書冊数が100冊ちょっと、多くても150冊程度なのですが、本社に異動後の半年間ではおそらく120〜130冊程度は本を読めたことくらいです。
 その後、2泊3日の社外研修に行き、社費を使っての研修であったことから自社の会長へ報告書を提出しました。報告書を提出するにあたって、当時の私は商品部長の直属の社員であったため、まず商品部長の承認をいただいてから報告書を会長に提出することとなりました。その時に部長に提出した報告書が書籍の内容を多数引用したものだったのですが、これが当時の部長から思いのほか受けてしまい(これもスピンオフの別記事として後日投稿します。)、おすすめの本を教えてほしいと言われましたので、数冊の本を報告書形式で紹介しました。そうすると紹介した本が面白いと思ってくださったのか、毎週水曜日に開催される商品部ミーティングの最後に3週連続で書籍を使って小売業に関連したプレゼンテーションをするように指示されました。
そこで私は、プレゼンテーションというほどの大それたものではないので、とりあえず「小噺」という形で準備をすることとしました。以下が当時商品部で小噺の前週に配布したレジュメの概要です。

小噺その1:「選択の科学」(シーナ・アイエンガー著・櫻井祐子著/文春文庫)
選択肢過多理論について提唱した名著。選択肢過多理論のメリット・デメリットについて解説します。
小噺その2:「経済は感情で動く」「世界は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ著・泉典子訳/ともに紀伊國屋書店)
行動経済学について分かりやすく解説したベストセラー。小売業への応用も可能です。
小噺その3:「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明(伊神満著/日経BP社)
名著「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・クリステンセン著・玉田俊平太監修・伊豆原弓訳/翔泳社)の解説本。現在の大企業によるM&Aを説明するのに便利な視点を提供してくれます。

 こうして本社の商品部へ異動後、商品データの入力ばかりで干上がった陸に打ち上げられた魚のような状態だった私は生気を取り戻し、プレゼンテーションの1回目(小噺その1)を迎えました。

 以下、その時のプレゼンテーション(小噺)を再現します。実は当時、原料価格や物流費の高騰から、メーカーによる値上げ攻勢にさらされていたサンディはアイテム数を絞ることで仕入原価の維持あるいはダウンを企図していたのですが、私はその事実を小噺の直前に知ったので、その場の雰囲気で言及しなかった分析もいくつかあります。この記事ではその分析も盛り込みつつ話を展開していきたいと思います。話の冒頭はこの記事の冒頭とまったく同様ですので、飛ばし読みしていただいても記事の理解にはまったく支障がありません。というか、途中まで完全にコピペですので、あしからずご了承ください。

 まず「選択の科学」の中でもっとも有名な「選択肢過多理論」の実験について取り上げます。かなり有名な実験で、様々な心理学の書籍やビジネス書で取り上げられているので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

問.デパートの試食ブースでジャムを販売した場合、以下①②のどちらのブースで販売したジャムのほうがよく売れるか。

①6種類のジャムを販売するブース

②24種類のジャムを販売するブース

この結果は驚くべきことに、①のほうが②の7倍の売上げがあったというものでした。「種類が少ないほうがよく売れるんかーい⁉」という反応が普通かと思います。私も実際にこの本を初めて読んだ際には、心の中で同様の独り言を叫んでいました。試食ブースの前で立ち止まる方は②24種類のジャムのほうが多いのですが、実際にジャムを購入する客の割合は①6種類のブースでは30%であったのに対して、②24種類のブースでは3%にとどまったとのことです。そしてこの実験が書いてある「選択の科学」を読んだ私は「しめしめ」と思い、さっそく民間企業への転職後、初任者研修という最初の研修を受講した後に、提出が課されていた報告書でこの理論をぶっこみました。
 私が転職したディスカウント系の小売業のサンディという会社は単品大量仕入による原価ダウンを志向していたこともあり、私が上記の研修報告書を提出してから、1ヶ月と経たないうちに店舗で扱えるアイテム数が大幅に削減されることとなりました。この結果がシーナ・アイエンガーの提唱する「選択肢過多理論」と同じようになったかというと、話はそう単純ではなく、かなり面白い結果となりました。

 ここからが記事の冒頭からつながってくる内容です。

 では、どうなったかと申しますと、たしかに店舗で扱えるアイテム数が削減されるまでは前年比98%〜100%で推移していた全店売上げ(単純に人口減や食の多様化・店舗の過密化によるところが大きいと思われます。)が、アイテム数削減後には前年比102%〜103%になりました。「おいおい、選択肢過多理論の通りやないか!これのどこが「そう単純ではなくかなり面白い結果となった」やねん⁉」と思われるかもしれません。実はここからが「選択の科学」では言及されていない展開になります。まず、対前年比102%〜103%の状態はアイテムカット直後から2ヶ月ほど続くのですが、その後急激に売上は落ち込み、対前年比96%〜98%になりそのままの状態が続きました。結局その時の会社はどう対応したかというと、他の部署に異動していたやり手の元バイヤーを商品部に呼び戻し、大量の送込み(新たなアイテムの投入)をして売上を立て直しました。ここから考えられることは、選択肢過多理論は万能の理論ではなく、使い方を間違えると大失敗に陥る理論であるということです。おそらくこれは初めて店舗に来た際にお客様が認知できる商品は限られているものの、同じ店舗に繰り返し通っていると視野が広がってきて認知できる商品数も広がってくることが原因と思われます。そうすると自分の用途に合致した細かい条件に基づいて商品を選択することとなり、結果アイテムを削減した場合、お客様の満足度が下がってしまい売上が落ちる、といったところでしょう。ジャムの実験では、人気のフレーバーであるイチゴ、ラズベリー、ブドウ、オレンジ・マーマレードを普段から購入しているという理由から選択肢に含めなかったというのもこの実験の結果に影響していると思われます。実際、選択肢を増やすことで売上を増やしている企業は多くあります。ここからは選択肢過多理論に反して成功している例と選択肢過多理論に則って成功している例について順にみていきたいと思います。

選択肢過多理論に反して成功している例
・ドン・キホーテの圧縮陳列
・イトーヨーカ堂の羽毛布団
・ディスカウントストア・ターゲットで販売されるキッチンエイドのミキサー
・アマゾン

 まずドン・キホーテですが、扱っているのは約10万アイテムで、売場にぎっしりと商品が詰め込まれている印象です。これを圧縮陳列と言うのですが、ドン・キホーテの創業者である安田隆夫氏はこの陳列の中でお客様に買い物をしていただくことを「ジャングルでの宝探しのようなもの」であると語っています。この急成長企業において選択肢過多は考慮されていません。
 次に、イトーヨーカ堂の羽毛布団ですが、18000円の羽毛布団と58000円の羽毛布団を並べて販売したところ、高いほうの布団はあまり売れなかったのですが、ここに38000円の羽毛布団をラインナップとして加えると、18000円の羽毛布団より58000円の羽毛布団のほうがよく売れるようになったとのことです。
 これはアメリカのディスカウントストアであるターゲットで販売されているキッチンエイド社製の料理用ミキサーですが、白のミキサー・黒のミキサーの2種類に加えて、鮮やかな色のミキサーを陳列するそうです。これにより3種類の合計の売上が増えるだけでなく、白のミキサーの売上も増えるとのことです。
 最後にアマゾンですが、これは説明するまでもないでしょう。

選択肢過多理論に則って成功している例
・卵
・短期商材
・フィルタ(ナビゲーション・レイヤー)
・コンビニ

 まず卵ですが、これは産地やメーカー等に特別のこだわりがあまり見られない商品です。すなわち「どっちでもよい」商品に関しては種類を絞っても全然問題がないということです。これについては私が在籍していたサンディ社も私が選択肢過多理論に関する報告書を提出するまでは5種類ほど卵を扱っていましたが、報告書提出後は2種類まで減ってそのまま数年同じ状態が継続していました。その後卵の種類が増えなかったことからおそらく売上自体は維持あるいはアップしたということでしょう。
 次に短期商材ですが、これは選択肢過多理論をうまく利用できます。サンディ社ではアイテム数削減後2ヶ月後までは売上がアップしてその後急落したと申し上げましたが、逆に言えば2ヶ月までは売上がアップするわけです。そうだとすると2ヶ月以内で売り抜ける商品についてはアイテム数を削減しても売上が減少することはないはずです。端的な例は恵方巻です。これも私がサンディ社に転職した際には5種類ほどありましたが、その後2種類まで減少しました。1日で売り抜けなければならないので、アイテム数が絞られている方が商品管理もしやすいですし、次年度の売上予測もたてやすいはずです。ただし、これについては、リスク管理という面でかなり危険ではあります。そこで同一規格の商品を複数のメーカーに製造していただくというのが理想になってくると思われます。
 さらにフィルタ(ナビゲーション・レイヤー)についてです。これは検索における絞り込み機能のことです。この点についてはアマゾンも活用していて、例えばEC(電子商取引)サイトで価格帯やメーカーで絞り込みをかけるのは選択肢過多を避けるためのものです。
 最後にコンビニについてです。コンビニでは、死に筋の商品が出た場合、その商品を撤去した後、今までになかった新商品を置くのではなく、売れ行きが2番手、3番手の商品の陳列を広げることがあるとのことです。コンビニではカップ麺のコーナーやスナック菓子・おつまみのコーナーが2列・3列で陳列されている所が多いので、セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートをご覧いただければお分かりいただけるかと思います。ただし、これは結果だけを見るとアイテム数を削減していることになりますが、実際にはフェイス(陳列面)を拡げると売上げが上がるという効果から来ているものにすぎないかもしれず、もし売場面積が十分に広ければ既存の売れ筋の商品の陳列面を十分に確保できるわけですから、死に筋商品の代わりに新しい商品を陳列した方が良くなるかもしれません。よってここで選択肢過多理論が機能しているかは不明です。

 最後にサンディ社以外にも、おそらく「選択の科学」を読んでアイテム数の削減に挑戦したと思われる企業が2社ほどあるので、そこにも言及します。
私の推測になるのですが、おそらく
・ユニクロ
・しまむら
の2社はアイテム数削減に挑戦して、そして失敗していると思われます。
まず、ユニクロですが、定番中の定番のアイテムであるフリースジャケットのカラーバリエーションが、一時期5種類あるいは6種類程度になっていたはずです。「選択の科学」を読む前だったのですが、個人的にはかなりカラーバリエーションが少ないなと思いましたので、印象に残っています。昨年にユニクロの店舗でフリースジャケットの種類を確認した際にはたしか9種類ほどあったはずですので、柳井正氏がこの本かこの本の原書のどちらかをご覧になってアイテム数削減に挑戦し、そして失敗した可能性があります。ただし、私の記憶が間違っていなければ、ユニクロは5〜6種類にフリースジャケットのカラーバリエーションを絞る前は10種類以上のカラーバリエーションを揃えていた気がしますので、10種類以上→5〜6種類→9種類とカラーバリエーションが移行したと考えると、選択肢過多→選択肢過少→選択肢最適へと変遷しているのかもしれません。今後も何がしかのイノベーションによりフリースジャケットに取って代わる商品が出てこない限り、フリースジャケットはマイナーチェンジを繰り返しつつ毎年定番の商品として登場するはずですので、ビジネスモデルや陳列方法の発展とともにそのカラーバリエーションがどのように変遷していくのかについても確認できればよいと思います。
 また、しまむらについては毎日新聞の2021年4月27日付朝刊で確認したのですが、

17年2月期からは「種類を絞って大量発注」が功を奏したものの、その後は商品の種類が豊富な「しまむららしさ」が失われたと買い物客の目には映り、18年2月期から3年連続の減収減益になった、とあります。おそらくこれも選択肢過多理論に取り組み、敗れ去ったということでしょう。

 選択肢過多理論は応用が非常に難しいのですが、使い方によっては非常に有効です。また「選択の科学」に関しては、やたらと選択肢過多理論に焦点が当たるのですが、はっきり申しましてそれ以外の記述も秀逸です。今でも私はたまに読み返しますし、英語の勉強も兼ねて原書を購入しようか迷っているくらいです。読んで視野が広がることは請け合いです。

 以上がサンディ社での私のプレゼンテーション1回目(小噺その1)を基にした「選択の科学」の書評でした。「小噺その2」「小噺その3」については、翌週が私の準備不足で延期、翌々週は部のミーティングが紛糾しその雰囲気のまま延期、その後の2週は店舗改装の応援に派遣され商品部のミーティング自体に出席できずに流れ、その後は商品部のミーティングで小噺の話題が出ることもなくなりました。こうして大した仕事もできないまま、そのまま企画系の部署に異動となりました。後日、複数の心優しい方から小噺その2以降も聞きたかったと言っていただいたので、また医学部合格後にでも時間を見つけて記事を投稿できればいいなと思います。民間企業の在籍時にはこの記事と同程度の提案を口頭や単発のものを含めても5年弱で30〜40本程度しか作成できなかったのですが、サンディ社以外にも通用しそうな汎用性の高い提案も数本は作成していたので、医学部合格後にこちらも投稿できればよいなと思います。

 最後までご清覧くださいましてありがとうございました。

参考文献
「選択の科学」(シーナ・アイエンガー著・櫻井祐子訳/文春文庫)
「戦略思考トレーニング」(鈴木貴博著/日経文庫)
「戦略思考トレーニング2」(鈴木貴博著/日経文庫)
「ロングテール」(クリス・アンダーソン著・篠森ゆりこ訳/ハヤカワNF文庫)
「ドン・キホーテ 闘魂経営」(安田隆夫著/徳間書店)

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