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2021春-房総半島を格安一周旅

1枚のきっぷ、無限大の可能性

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 2021年4月1日木曜日、時刻は朝5時45分。

 船橋駅から、久しぶりの旅を始めていくことにしよう。

 今持っているのは、見ての通り船橋から総武線で一駅、西船橋までの普通乗車券だ。お値段140円。これで房総半島一周とは?と思っている読者の方も多いだろう。

 実は、JRの運賃計算の特例のひとつに、こんなものがある。時刻表にも載っている内容だ。以下引用。

大都市近郊区間内のみをご利用になる場合の特例
図のそれぞれの大都市近郊区間内のみを普通乗車券または回数乗車券でご利用になる場合は、実際にご乗車になる経路にかかわらず、最も安くなる経路で計算した運賃で乗車することができます。
重複しない限り乗車経路は自由に選べますが、途中下車はできません。途中で下車される場合は、実際に乗車された区間の運賃と比較して不足している場合はその差額をいただきます。

(以上「JR東日本 きっぷのあれこれ 運賃計算の特例」より引用。図は引用元のページに存在する。要請があれば削除します)

 要するに、その「大都市近郊区間」の中でおさまり、かついくつかの条件を満たせば、どこに行こうとも運賃はきっぷの区間での最安経路で計算されるわけだ。

 たとえば、山手線で東京から秋葉原まで行く際、わざわざ外回り電車に乗って新宿や池袋を通ったり、代々木で総武線に乗り換えたりしても、内回り電車に乗り、神田を通って行く最短・最安経路と運賃は変わらない、ということである。

 このルールを活用した乗り鉄の方法がいわゆる「大回り乗車」である。船橋から総武線→東金線→外房線→内房線→京葉線…などと遠回りしても、途中下車しなければ、西船橋までの140円きっぷだけで事が済んでしまうのだ。

 そういうわけで、房総半島をぐるっとまわってみることにしよう。

都会を離れて…

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 船橋から総武線の黄色い電車に乗って、15分ほどで千葉に到着。平日の朝6時台だが、さすが千葉駅、人が多い。

 今日はこれから先のことをあまり決めていない。まったくというわけではないが無計画旅だ。朝食のことと、これからの行程のことを考えつつ、千葉駅をうろうろしてみることにする。

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 8番線に入ってきたのは中央本線の松本行き特急「あずさ」。河口湖行き「富士回遊」もつないだ、堂々の12両編成だ。中央本線の特急列車が千葉にやってくるのは1日2回、毎日見られるとはいえそこそこレアな光景だ。

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 などとやっているうちに、数少ない銚子へ向かう成田線の電車などは出てしまい、銚子経由は難しくなってしまったので、見切りをつけて西口改札前の「菜の花そば」さんで朝食をとる。かけそば270円なり。

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 昼食を売店でささっと調達して、7時15分発の銚子行き、総武本線の電車に乗る。車内は案外空いており、ボックス席をしっかり確保できた。

 時刻通りに発車。千葉市街をゆっくりと進む。

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 千葉市とは面白いもので、中心部ではあんなに都会の雰囲気を感じるのに、ちょっと走ればすぐ田舎の風景になる。まあその変化が楽しいし何より好きな所なのだが。

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 突然赤い看板が出現。とても目立つ。

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 そんな調子で15分程走り、佐倉で成田線と分かれる。複線から単線になり、本数もここからぐっと減って、ローカル線味が増す。

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 成東には8時02分に到着。1分の接続で向かい側にいた東金線の電車に乗り換える。前回ここに来た時も大急ぎで乗り換えたので、この駅をじっくりと観察した記憶がない。次回こそはもう少し時間がほしいものだ。

 変わらず田んぼの中を駆け抜けて、8時27分に大網に着いた。

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 おそらく国鉄時代から使われているであろうホーロー看板や乗換案内の掲示は、平成生まれの209系にはちょっと不釣り合いで、それがまた面白い。

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 東側はそれなりに駅前らしいが、

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西側に目を向けてみるとまったく違う風景が広がっている。鉄道が街を分断するというのはこういうことなのかなと思う。

 大網駅の構内を歩き回って時間をつぶし、8時41分発の上総一ノ宮行きに乗る。ここからは外房線だ。

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 高架橋の上を走ると茂原に着く。外房線沿線でも大きな街の一つで、明治時代に天然ガスが埋まっているのが見つかって以来、ガス関連の企業が多く集まる都市となっている。また、例年であれば7月に七夕まつりが開かれている。

太平洋を目指して-外房をゆく

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 上総一ノ宮には9時03分に到着。一宮町は東京オリンピックでサーフィンの競技会場に選ばれており、駅の待合室にはサーフボードがベンチの背もたれ代わりに置かれている。

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 ここは外房線の運行上の拠点となっており、現在昼間は原則としてこの駅での乗り換えが必要となっているが、雰囲気はいたって普通の駅で、のどかだ。

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 しばらくすると乗り継ぎ列車がやってきた。これが9時23分発の安房鴨川行きで、車両は今年の3月にデビューしたばかり、ピカピカのE131系電車。2両編成と短く、ワンマン運転を行う。

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 時刻通りに発車。立ち客もいて乗車率は120%くらいといったところか。
 上総一ノ宮からは単線となり、一気にローカル線感が増す。右側には留置線があって、数本の電車が一休みしている。

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 外房線は名の通り外房、房総半島の太平洋沿いを走る路線だが、名に反して海が見える区間は少なく、しばらくは平凡な車窓が続いていく。

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 左手からいすみ鉄道が寄ってくると、大原に着く。主要駅らしく構内も広い。
 いすみ鉄道は大原から上総中野までを結ぶ路線で、小湊鉄道とともに房総横断鉄道の一端をなす存在だ。国鉄時代に使われていたディーゼルカーを買い取って現役で運用しており、観光の面において注目度の高い路線である。個人的にもいつか乗りに行きたい路線の一つだ。

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 御宿を出てトンネルが連続する区間を抜けると、ようやく進行方向左手に太平洋がちらっと見えるようになる。

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 そこからさらにトンネルを何本か抜けて勝浦に着く。千葉を代表する有名なリゾート地で、駅前にもホテルが何軒か建っている。のどかなところだ。

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 その勝浦を出ると、一気に太平洋が近くなる。海がエメラルドグリーンに光ってとてもきれいだ。大げさかもしれないが、こういうのを「風光明媚」とでも言うのだろう。

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 山の中に入っていき、しばらく行くと小さな駅に着く。ここが行川アイランドだ。もとは遊園地の最寄り駅としてつくられたが、2000年にその遊園地が閉園してしまい、駅名だけがそのまま残された。周辺に人家は少なく、千葉県内屈指の「秘境駅」として挙げられている。

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東京湾へ進む-内房をゆく

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 10時25分、時刻通りに終点の安房鴨川に到着。昼間は、外房線とここから木更津方面へ延びる内房線とを直通する列車もあるのだが、この列車は安房鴨川が終点なので、ここで乗り換える。

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 駅の裏手にはイオンがあって、ヤシかソテツか、背の高い木が植えられている。まさに南国気分だ。

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 鴨川市といえば鴨川シーワールド。駅構内に小さな水槽があり、魚たちが泳いでいる。シャチやイルカのショーこそ見られないものの、この小さな空間は疲れた体に癒しをあたえてくれる。

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 ホームにこんな表示があった。ずいぶんくたびれているが、どうやらおととしまで運転されていた臨時列車のものらしい。

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 ひととおり改札内を探索したところで、10時58分発の木更津行きに乗る。さきほどまでの外房線に比べると空席が目立つ。

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 接続をとる特急わかしお号が遅れてやってきたので、こちらもやや遅れて安房鴨川を出た。

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 次の駅、太海の手前で、早速海が見えてくる。内房線は外房線と比べれば海の見える区間が長く、車窓もコロコロと変わっていく。

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 その太海には古い木造駅舎が残っている。無人化されてから長いのか、窓がふさがれていて原型はだいぶ失われているが、それでも風格を感じる。

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 海岸線すれすれを走る。見下ろせばすぐに砂浜が広がっている。並行する道路橋をよく見ると、カモメが数羽飛んでいた。

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 千葉県最南端に位置する南房総市。その温暖な気候を生かして、漁業だけでなく、アイリスやキンセンカなどの花卉(かき)や、ビワやミカンなどの果物の栽培が盛んなところだ。中には生産量日本一の品種もある。そんなわけで、車窓にはビニールハウスも多く登場する。

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 ちなみに漁業の方でも、「白浜の海女」といわれる素潜り漁がおこなわれていたり、関東では唯一の捕鯨基地があったりと、なにかと特徴の多いところである。

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 千倉。観光案内所を併設した新しい駅舎を持つ。かつては特急「さざなみ」がここまで乗り入れていた。

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 館山を発車。鴨川以来の大きな街で、南房総エリアの中心的な役割を持つ。

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 沿線には港も多い。

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 行き違いのため保田で数分停車した。のどかなところだ。

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 そのつぎの浜金谷は、久里浜行きフェリーの乗換駅であり、鋸山の最寄り駅。登山計画書を提出する箱が置かれている。

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 少し雲がかかっているが、今日は比較的視界が開けていて、東京湾を行く貨物船も数隻確認できる。対岸には三浦半島もかすかに見える。

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 竹岡。内房線でも数少ない、ホームから海を見ることができる駅だ。

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 長く続いた海沿いの区間も、上総湊で終わる。

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 佐貫町。マザー牧場の最寄り駅で、常磐線の佐貫とやたら間違えられるため、昨年の3月に向こう側(常磐線の佐貫)が改称する(竜ヶ崎市に)こととなった。

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 君津に到着。内房線の運行拠点となっている駅で、東京方面からやってくる快速電車などはほとんどここで折り返す。
 隣にはその快速電車が止まっていて、木更津行きの乗客の大多数が向こうへ乗り換えていった。君津を出るのはあちらが先だが、僕は一ノ宮からまったく座っていない(撮影のために)ので、この一駅間を座るためだけにこの電車に残ることにした。

ゴールへ向けてラストスパート

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 木更津に到着したのは13時ちょうど。君津でバカ停したおかげで、遅れはほぼなくなった。

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 まだ昼食をすませていなかったので、千葉駅の売店で買ったおにぎり2個を大急ぎで食べた。消化に悪いが、人がはけているこのタイミングでしかできないのでしかたない。

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 ここからは久留里線が分かれていて、君津方には車庫が設けられている。よく見ると、久留里線用のディーゼルカーだけでなく、ディーゼル機関車も眠っている。

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 車高の関係上、久留里線のホームは一段低くなっているので、このように段差がある。

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 13時20分発の千葉行きに乗り継ぐ。今度はしっかりボックスシートを確保できた。

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 木更津の次が巌根だ。内房線では唯一の快速通過駅だが、駅舎はしっかりしているし、改札機も3台くらいはあるし、駅前にも建物はそれなりにある。

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 五井に着く。小湊鉄道との接続駅で、車両がたくさん留置されている。
 ちょうど目の前では会津からやってきたキハ40が整備中だった。先日秋田から3両が移籍してきたとのことで、千葉での第2の人生が楽しみだ。

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 少し先にはキハ200の姿も。製造から60年近くが経っており、かなりくたびれているようだ。まだ健在なうちに乗りに行きたい。

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 蘇我には14時12分に到着。これで房総半島の付け根あたりまで戻ってきたことになる。

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 今日乗る列車はあと2本。
 京葉線のホームに行ってみると、ちょうど京葉線では1本しかない209系が停まっていた。最後の最後で運がいい。

 蘇我から京葉線に乗り、

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南船橋で武蔵野線に乗り換えて、

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 西船橋で旅を終えた。純粋な乗り鉄旅は疲れるが、その分とっても楽しかった。

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〈了〉

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