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ホットケーキ

昨日から調子があんまりよくない。
連休だから、気が抜けたのかしら。
どうにもこうにも、体の芯がもぞもぞしてしまう。
心の芯がモヤモヤしてしまう。

そんなことを思いながらモーニングノートを書いていたら、もう1年くらい行ってない喫茶店のことをふと思い出した。

某チェーンのフランチャイズ店。
初めて出会ったのは7年ほど前で、前職のころ職場に近くてときどき通っていた。
転職したからは家から遠かったのですっかりご無沙汰になっていたけれど、結婚を機に近くへ越してくることになり再び通うようになったのが2年前。
珈琲好きになったのもあって、新婚のころは本当によく行っていた。
ところが、何を思ったかここ1年くらいはパタリと行かなくなってしまった。理由があった気がするけど、覚えていない。

そして昨日、吸い寄せられるように店へ向かっていた。

久しぶりの店内は、相変わらず落ち着いた雰囲気。
40代後半くらいかと思われるマスターも健在で、とても感じのよく笑顔の素敵な女性店員さんも変わらず。すごくうれしかった。
久しぶりだったので、テーブル席でちんまりと過ごそうかと思っていたのに、安心感からカウンター席へ自然と足が向いた。

絶対に食べようと思っていたのがホットケーキ。
ここ最近、甘い食べ物が苦手になってきたけれど、ここのホットケーキがどうしても食べたくて。
しばらく来ない間に「トラディショナル ホットケーキ」という商品名になっていた。まさにそんな感じの、飾り気のないシンプルなケーキなのだ。

運ばれてきたケーキには、小さなハートの型押しがされていて、添えられたバターには桜の花びらのような模様が小さく描かれていた。
生クリームとメープルシロップを好きなだけ乗せて、まず一口。
!!
幸福感が脳天から爪先までぴりぴりっと駆け巡った。
なんて、しあわせな味がするんだろう。今日来て、本当によかった。

一緒に頼んだブレンドコーヒー。
通っていた頃は、趣味を覚えられていて砂糖とミルクはついて来なかったけど、今日は(当たり前だけど)どちらも添えられていてちょっぴり寂しくなった。そして同時にちょっと不思議な気分。

わたしも店員さんたちも、前も今も変わらず存在しているけれど、少しの時間が挟まっただけで、違う関係性になってしまう。
わたしのなかだけに残された、あの頃の感覚はもう共有することができない。それは寂しくもあり、面白いことでもある。
実は知っているよって思いながら、さも初めて訪れたかのような顔をして、わたしはホットケーキを食べて珈琲を飲んでいる。

甘々になった口の中を鎮めるために、ゆっくりゆっくり珈琲を飲みながら、小川糸さんの「つるかめ助産院」を読んだ。幸せな幸せな時間。
途中で珈琲がなくなると、さりげなくお水を新しいものに取り替えてくださった。こういう心配りは、やはり変わっていなくてうれしくなる。

1時間くらい滞在して、店を出た。
また来ようと思いながら。


shiori    2020.9.22


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