見出し画像

「#けもなれ」に見る、「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!」と言えるか言えないかが未来を決めるという話(「獣になれない私たち」8話までの感想文)

「獣になれない私たち」、通称「けもなれ」を見ている。
2018年10月クールの日テレ系列のドラマだ。
--------------------------------------------------------------------
という書き出しで既に1本noteを投稿している。

「けもなれ」への愛が強くなり、真夜中のテンションで書き連ねてしまった。
作品をひとりでも多くの人に見てほしいというのが「けもなれ」に魅せられた私の願いだ。
しかし「時間もないし、ドラマなんか見てられない」という人も多いだろう。

そこで今回は、本編を見なくてもわかるように最も刺さったドラマを見ての気付きをお伝えしたい。
主に4~8話を通して感じた感想である。

他人が求める「かわいい」によって摩耗する義理はない

物語の主人公は、ECサイトの制作会社に勤める深海晶(新垣結衣)。
仕事もプライベートもそつなくこなし、笑顔を絶やさず多くの人に愛される優等生タイプ。

「けもなれ」を見た後、最初はひたすら「どんなガッキーもかわいいわあ…」という思いでこのツイートをした。

しかし後から「ガッキーがかわいい」の前の文を見てみると、つらい環境下でも文句を言わず摩耗している姿に共感を覚えて、それが「かわいい」という感情に繋がっているのではないかと思えた。
※「かわいい」とはここでは容姿ではなく、内面的なかわいさのことを指す

社長にバリバリ反抗しまくり、使えない同僚を切り捨てて、恋人に言いたいことをズバズバ言って、空気を読まずにあえて踏み込んでいって、生きたいように生きる。
そんなガッキーだったら、果たしてかわいいと思えるだろうか?
いや、ガッキーが演ればどんなキャラクターでもかわいいかもしれないが、一般的にそんな人がいたら「カッコイイ」という憧れはあっても、かわいいとは言い難いのではないか。

しかし、ここでいうかわいくいるための条件が
・つらい環境でも笑顔でいること
・人に従順に従うこと
・摩耗しながらも平気なフリをすること
だとすると、違和感を感じる。

「あれ?自分をすり減らしてまでかわいくいる必要ってあるんだっけ?」

そう感じるところで、物語では転機が訪れる。

晶が4年間付き合っている恋人、花井京谷(田中圭)は元カノの朱里(黒木華)と諸事情により同居状態。
おまけに京谷は行きつけのクラフトビールバーで晶と言い合いになった夜、店の常連である橘呉羽(菊地凛子)と男女の仲になる。

それを知った晶は、自身の性格上「会ったら京谷のことを許してしまう」のを恐れ、京谷を避けて過ごす。

一方、京谷は晶と一緒になるために朱里にマンションを渡し、晶の元へ向かう。
京谷がマンションを出たことを知らない晶は、京谷を遠ざけるため飲み仲間の根元恒星(松田龍平)にキスをしている現場を見せつけることでその場を凌ぐ。

「今の晶、かわいくない」

京谷(世をときめく田中圭)の言葉がナイフのように全女性の心に突き刺さる。
(京谷が同居する元カノの存在によって晶を苦しめ続けて、おまけに浮気をした上での発言であることはここでは置いておく。)

京谷がかわいいと思っていたのは「文句を言わず摩耗している従順な彼女」である晶だったのではないか。
「晶ならきっと許してくれるだろう」という自分の理想を押しつけて、それに背いていると感じたので「かわいくない」と言い放ったのだ。

この発言(とその他もろもろの出来事)をきっかけに、晶はこれまで京谷を失いたくないために「京谷に本音を言えていなかった」ことを自覚。

2人は後日、晶が「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!」と言い放ち、お別れすることになる。
(「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!」は晶の同僚である松任谷夢子(伊藤沙莉)が晶に気付きを与えるきっかけとなった発言。
この話をするとさらに長引くので省略。)

摩耗してでもかわいく生きる選択しかできない呪い

「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!」という生き方、憧れはある。
しかし、私自身はそのようには生きられないなとドラマを見て思った。

というのも、私は人から「かわいい」と思われて生きていたいタイプだと自負している。
仕事であっても、プライベートの関係であっても、たとえもう2度と会わない人であっても、自分が嫌いな人でない限り、他人からは悪い印象を抱かれたくないと思う。

ましてや4年間も一緒に過ごした恋人との別れを決断する人間にはなれないので、京谷のような恋人がいたらきっと許してしまう。
それどころか「私に元カノと別居させるだけの魅力がなかったってことだよね」「浮気させてしまってごめんね」と謝る未来まで見える。

私は「かわいい」と思われる自分でありたいがために「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!」と恋人にすら言えないのだ。
(そんな場面に出くわしたことがないが、きっと言えないとドラマを見ながら思った。)

とはいえ、かつての晶も「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!」が言えずに苦しんでいた。
この呪いから解き放たれるにはどうすれば良いかは、もう1回ドラマを見返すと分かるのかもしれないが、1回の視聴では私には読み解けなかった。
何かをきっかけにそんな生き方ができるのであればしてみたいが、かわいくありたい呪いからそう簡単には逃れられない気がする。

まとめ

私が晶だとしたら京谷といる未来しか選べないので、今の展開は「京谷ひとりで大丈夫かな?」「京谷、思い詰めてビルから飛び落ちたりしないかな?」など(めちゃくちゃ勝手に)思いを巡らせてしまい、しんどい。
それなのに晶はすっかり前に進んでいるので「かわいくなくて何が悪いんじゃボケ!」と言える女性は強いなあ…と感心する。

物語はおそらく12話までで今週は9話となり、クライマックスが近づいている。
晶は京谷じゃない誰かと幸せになるのか、それとも仕事に生きるのか。
今の私が同じ立場だとしたら、選ぶことがないであろう未来を見せてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?