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要約 『子どものための精神医学』滝川一廣 著

人生とは一人ひとりに個別的であり、しかも一回限りのものである。子育てとは、そうしたとりかえのきかぬ人生でのかかわりである。(13ページより)

●はじめに

『家庭の医学』という超ロングセラー本があります。家族の誰かが不調に陥った時、病院に行く前に、または病院に行った後に、とりあえず調べて、不安を取り除き、納得して、次の方法を考える――どの家庭にもある本、というよりも家具のような本です。

 本日紹介するのは、『家庭の医学』の「子どものこころ版」です。
 日本は安全に健やかに子育てができるようになった反面、不登校、いじめ、発達の遅れなど、心や社会行動に関する問題は急増しています。

 本書は、子どもの悩みから、親子関係の不調まで、子どものこころに関する問題に、現時点で医学的に出せる良心的な知識を提供し、安心と次の一手を提供してくれる、親子の助けになる一冊です。

●本文要約

1.親の肩にのしかかる「教育負担」の正体

長いスパンで見ると、現代日本は子どもを安全に健やかに育てられるようになり、全体的に子育てはレベルアップしました。しかし子育てが当然のようにできる環境になったことで「子育ての平均点」も上がりました。すると、当然子どもは自分の個性と「平均的な成長」の「ずれ」を意識することが増えます。「ずれ」や「違い」を意識し、自責を募らせる子どもたちの生きづらさは増しており、「大人になる」ことは難しさを増しています。

 親は親で、デジタル化やグローバリゼーションなど社会環境の変化を肌身で感じています。そしてその変化に対する公共教育の「遅れ」を意識し、公共教育とは別に独自に子どもを社会変化に適応させる「親の責任」を強めています。現代は情報社会です。親の競争意識が過剰に刺激され、以前のように伸び伸びと育てることが難しくなり、親の教育観からは共同で育てるという文化が廃れ、親子は孤立しがちです。親業を営む環境は以前より格差的になり、厳しくなっています。

 つまり、本来は社会全体で行うべき教育という巨大な仕事は、親と子の肩にのしかかり、その圧力は増しています。特に、この状況では、何らかの事情で子育てを支える親の力が落ちれば、社会全体で教育が一気に劣化することを意味します。

2.子どもの「こころ」が分からない、という親の苦しみ

 「大人と子どもの「すれ違い」が起こる理由」
子どもには個性があります。でも、学校や社会は標準的な発達や成長を求めます。子どもの「個性と発達」は本来一揃いなので、個性的に成長するのが当たり前で、平均的に成長することの方が稀です。しかし、大人や社会が、平均と個性の「ずれ」を「遅れ」と捉えると、大人と子どもの「すれ違い」が生じます。

 グローバリゼーションや情報化の影響で、「平均」の基準は年々高まっているので、子どもの成長が標準を満たせず、疎外感を感じる親子が増えています。今必要なのは、保護者と教育者が、精神発達の過程で子どもがどの地点にいるのか、子どもの「こころの発達」に関する情報を知り、マッピングできるようにすることです。そしてほとんどの場合、子どもの発達と平均との「ずれ」はあいまいな差異の範囲内でしかない、という認識に達するはずです。

3.〈こころ〉の存在とはたらきについて

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