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Whole-Part-Whole. 戦術理解を促す方法

以前、ツイッターの方でWhole-Part-Whole という方法を紹介しました。

それはゲームから練習を始めて、部分的な練習を間に挟み、ゲームで終わるという、全体→部分→全体の流れで練習をすることにより、選手のゲーム理解、戦術理解が深まるというものでした。

その後、何度かこれについて詳しく教えてほしいと尋ねられることがあったので、今ここに書いて今後の回答を避けようと思います笑

Whole-Part-Wholeとは?

Whole-Part-Wholeとは、先ほども書いたように、ゲーム理解を促す方法のひとつで、練習をゲームから始めることにより、選手は全体像の中で獲得したいものを体感し、その後の部分的な練習で、それを反復的に習得し、その反復していることがゲームと繋がることを認識し、最後のゲームで習得したであろうものをゲームで試すというものです。

デンマークのUEFA 'B'ではこれをひたすらやると聞いています。イングランドでもゲームを多くするように言われていますので、この方法も推奨されています。

従来の練習は、アップ→テクニック→スキル→フェーズorファンクション→ゲームという流れで行われます。(フェーズやファンクションの言葉がわからなければこちらで確認してください。練習メソッド

従来の方法でもコーチはゲームから逆算して、すべての練習を最後のゲームに繋がるようにテーマを一貫させていると思います。

もちろん選手はテーマのつながりを最後に感じることができるのですが、Whole-Part-Wholeでは、最初のゲームからテーマを感じ取り、部分的な練習でよりイメージを持って取り組むことができるのです。

つまりWhole-Part-Wholeでは、最初のゲームで全体像の中でぼんやりとでも何を獲得するのかを感じ、部分的な練習でハッキリと獲得するものを理解しながら、それがゲームと繋がる感覚を得て、最後のゲームでは何をするのかわかっている状態で実際に試すのです。


ここからはよく聞かれる質問なので、気になるところだけ読んでください。

FAQ 1. ゲームってどういうことすればいいの?

Whole-Part-Wholeの目的はゲーム・戦術理解なので、最初のゲームでは、基本的に条件や制約のついたゲームが推奨されています。(デンマークではフェーズのような練習も最初のゲームとして扱っています)

例えばその日のテーマがゴール前の守備からのロングカウンターなら、「自陣で奪ってそのままゴールを奪えたら3点」など、選手がそのルールを使いたくなるような設定をすることです。

イングランドFAはゲームの制約に関して、Restrict (制限)、Relate (関連付け)、Reward (報酬)、の3つのどれかを付けるといいと書いています(もちろん組み合わせても 〇)。(本文はこちら)

制限は、みなさんがよく使うであろうタッチ制限や、選手のプレーエリアを決める、などです。

報酬は、先ほど僕が例として挙げた「○○したら1点」などに当たります。

関連付けは扱いが難しいのですが、例えばゲームの前に「今日はハイプレスのトレーニング」と選手たちに告げ、ゲーム中に「どういったタイミングがハイプレスに適しているだろうか?」といった質問を投げかけるなどして、テーマと選手自身のプレーを繋げていきます。選手にあらかじめテーマを伝えることで、その選手はそのテーマに縛られます。そういう意味ではプレーに制約をつけているとも言えるのでしょう。

そしてゲームのあとの部分的な練習は、パターンなのか、切り取った練習(ファンクション)なのか、そこはコーチの好みの問題です。

で、最後にゲームで締めますが、シンプルなゲームでもいいと思いますし、条件をつけてもいいと思います。最後のゲームに関しては比較的緩いです。大事なのは最初のゲームです。人数やピッチサイズ、ルール設定や制約などを、テーマが出てきやすいようにゲームをデザインしましょう。

FAQ 2. アップしなくて大丈夫なの?

アップはしてください。いきなりゲームは怪我のもとです。

FAQ 3. 練習の強度管理は?

この方法の主目的はゲーム理解、戦術理解です。ゲームの設定によっては練習全体の負荷が下がることもあるかもしれませんが、目的は学習なので、学習による負荷の低下がある場合は、負荷を取るのか、学習を取るのか、コーチの判断に委ねます。

負荷が高くなる場合。高くなるのがいやならやらなくても構いません。他にも方法はあるので。

練習が週2回とかなら負荷は考えなくてもいいと思います。

個人的には、戦術やコンセプトの導入としてこの方法はいいと思っているので、週の最初の方に持ってきて、イメージを持ったままその1週間を練習するのがいいのかも?って考えています。

FAQ 4. どの年代からこれは導入できるの?

イングランドでは、どの年代でもゲーム形式を多く取り入れることを推奨しています。しかし、ジュニア年代とそれ以降では目的が少々異なるようです。

ジュニア年代(11人制以前)はゲームというリアルな環境でのスキル習得と、プレーの原則の理解(ゲーム理解)が主な目的になります。(プレーの原則とはこれこれ

プレーの原則はゲームの中で最も包括的に学習できます。スキル習得も、刻一刻と状況が変わるゲームで使えてこそ、という考えのもと、ゲームが推奨されています。

選手が11人制に入る年代から戦術理解を目的としたWhole-Part-Wholeが推奨されます。それは例えば4-3-3における中盤のユニットかもしれませんし、ビルドアップでのDFラインの役割の理解かもしれません。

学習が主目的なら、ビデオを練習前に見せて、従来通りの練習をすればよくない?

その方法で選手が学習すれば何の問題もありません。

でも選手の中には見ることで学習する選手もいれば、実際にやることで学習する選手もいます。(VAKってやつですね)

チーム全体の学習を最大化するためには、どっちもやって損はないと思います。
ただし、リソースに制限がある場合はどちらかを優先しますよね。そこはコーチの判断です。

最後に

選手によっては先にゲームをすることを嫌う場合もあります(実際にいました。やめてくれって言ってくる人。)

もちろん最初にゲームをすることで成長を実感できるという選手もいました。

まぁ、どんな方法でもケチつけてくる人はいるので、いいと思った方法で練習してください。

あくまでも学習を促す1つの方法だと思ってください。他にも方法はあるので。

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