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練習メソッド

世の中には、「○○メソッド」といったものが溢れていますが、今回のnoteは根本的な「練習中に使う型」としてのメソッドを書いています。

すでに読んだことがあるような内容だと思いますし、僕も以前noteを始める前にブログをやっていて、そこでも書いた内容でもありますが(ここから読めます)、そこにほんの少しアップデートを加えたものでもありますので、イングランドでは練習メソッドをどのように分けているのか、参考になればと思っています。

特にテクニックとスキルの違いがわかってもらえればと思っています。


1.テクニック

英語でテクニックは「Unopposed practice with the emphasis on the development of a game technique」と定義されています。

つまり、敵がいない状態で、試合で使う技術を練習するのが「テクニック」なのです。

英語で時に「Isolated practice」とも言い、「隔離・分離・独立」といったニュアンスも持った練習がテクニック練習です。

この練習に対して最近では批判的な論調があり、「古い」「試合に繋がっていない」などの意見もありますが、英語の定義にもあるように、「ゲームテクニック」を伸ばす練習であり、必要な練習であることは間違いありません。

実際イングランドのトップアカデミーでも練習の15%はこの形態の練習に充てるクラブもあり、テクニックが必要不可欠です。

判断があっていても、実行の部分でミスが起きてしまえばそれは「ミス」だからです。


2.スキル

スキルは「Opposed practice with the emphasis on developing the bond of technique and decision making」と定義されています。

相手がいる状態で独立した技術を判断と結びつける練習がスキル練習ということです。

つまり、ある環境/状況において、どのテクニックをどのようにして発揮するか、がスキルなのです。

パス練習を例に、過去のブログから引用すれば、

“どこに”ディフェンスと味方がいるかを認識し
“どこで”ボールを受けて
“どこに”“どのように”ボールをコントロールし
“誰に””どのように”パスをするか

というのがテクニックをスキルに昇華させる練習だと言えます。

3.フェーズ

フェーズ練習は「ピッチの横幅をフルに使う」練習です。

定義は「Practice using the full width of the pitch, but with reduced length to suit the players' and practice needs(横幅をフルで使い、選手と練習の目的に合わせて長さを減らす練習)」

「Involves two full team units of players, attacking or defending against opposition with selected players from the third unit(ユニットを2つ以上含んだものである)」

この練習は過去のブログ記事には書いていません。当時知らなかったからです。ただ、下の画像を見てもらえれば、皆さんよくやっている練習だと思われます。

よくあるこういう練習ですね ↓↓↓

画像1

この練習は後述のファンクションやゲームの練習と混同されがちですが、幅をフルに使うのがフェーズの特徴で、戦術や個別のタスクの確認などによく使われる練習なのではないでしょうか。

選手の理解が上げるために使うと良いとされています。

4.ファンクション

ファンクション練習も過去のブログに書いていません。(やはり当時は知りませんでした)

この練習は試合の一部分を切り取った練習のことを指します。フェーズと違うのは横幅やゲーム性ではないでしょうか。定義は画像内に書かれていますので、ご確認ください。

iOS の画像 (4)

この形態の練習は、ゲームの一部分を切り取って繰り返しトレーニングできるメリットがあります。また、フェーズほどの大枠ではないにしても、選手のポジションでのタスクや責任を切り取った形で再現されるので、戦術理解の向上に役立つはずです。


5.スモールサイドゲーム

ゲームをイングランドではSmall Sided Game (SSG) と呼んでいて、「A directional game-practice situation involving Goalkeepers playing in teams less than eleven a side」

要するに11v11よりも少ない状態のゲームのことを指します。実際の試合の縮小版ということです。

おそらくほとんどのチームがそうだと思いますが、練習で11v11ができる人数はいません。イングランドでは11人制を戦うチームの場合は15,6人くらいまでしか登録しません。

だから、11人制(ほかのカテゴリーならその人数)を想定したフォーメーションや制約などをつけて週末の試合でいいパフォーマンスを出せるようにも、ゲーム形式では工夫が求められます。もちろん、ただプレーさせるのもありですし、そこは指導者が何を信じているかだと思います。

また、特にジュニア年代でですが、練習は選手一人ひとりを向上させる時間だと考えると、8v8は適したフォーマットとは言えないかもしれません。

ゲームは人数が減るほどに一人当たりのボールタッチの回数が増えることがわかっています。なので練習で8v8をやれば、ボールになかなか触れない選手が出てきます。それらを防ぐためにも、そして時間を最大限効率よく使うためにも、年代に合わせたゲームを考えてあげてください。


最後に

そもそもなぜ違う練習メソッドを知っておく必要があるのでしょうか?

これらの練習メソッドを知らなくても、これまでのサッカー経験から練習を組み立てることはできます。

ひとつに、それぞれの練習メソッドの長所と短所の理解があります。

例えばテクニック練習では、反復やボールタッチの回数は他の練習と比べて非常に多いので技術を獲得するために使います。その反面、相手がいないのでリアリティに欠けます。

フェーズやゲームはリアリティ、もしくはリアルの中で練習することができるので、試合を想定できますが、反復が少ないので技術や動きの獲得には向きません。

つまり、ひとつのメソッドを選んで練習することは、何かを得る代わりに何かを捨てるという選択をしているということです。

ゲームばかりやっていては技術のが身につきにくいですし、テクニックばかりではゲームの理解というものには繋がりません。


そしてこれらはコーチの振り返りにも繋がると思っています。

メソッドを知らずに単発の思いつきでやった練習がうまくいった/いかなかった、というよりもメソッドを知っていて、狙いを持って「今日はテクニックとファンクションとゲームの組み合わせでやる」と練習した時のほうが、振り返った時に理由を持って「フェーズを入れた方がよかった」「だからファンクションがよかった」など、練習の再現性やプランニングの精度が上がると思われます。

そのためにも練習メソッドは知っておいてほしいと思い、この記事を残しておきます。

それぞれのメソッドが持ってるメリット・デメリットを理解して、それらの組み合わせで練習を作っていくのがコーチです。もちろん練習を作ったあとはそれらを実行しなければなりませんが、それはまた別で。

この記事がプランニングの助けになればうれしいです!

ありがとうございました!

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