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銭湯にて

この前、お風呂の蛇口部分が壊れてしまい、お湯が出せないという事態がありました。業者も次の日の朝に来るということで、近所の銭湯へ行くことに。

その日はかなり雨が降っていました。仕事終わりの私は靴の中はぐしょぐしょとして気持ちが悪く、傘から滴る雨に腰下が濡れ、荷物も多く、業者からの連絡が遅いことに苛立ち、、と気持ちはブルーもいいところ。

家に着いて彼に付き合ってもらい、タクシーでいざ銭湯へ。
半ば気持ちは落ち込んだままでしたが、スーパー銭湯ではない、昔ながらの銭湯に行くのはもしかして初めてだろうかと、少し気分が上がっていくのを車内で感じていました。

銭湯に着いて、脱衣所に入っていき、そそくさと服を脱いで浴場への扉を開けました。明るい水色を基調としたタイルと、大きなお風呂から上る白い湯気が目に飛び込んできます。湯気のあたたかさで、鼻が少しつんとしました。
誰かが桶を置く「かっこん」という音が響き、その音が疲れた心身をそっと解し始めてくれます。

さっと体を流して、中央の大きなお風呂に浸かりました。真ん中からはお湯がぼこぼこと出ています。その様子を見ながら、そっと首元まで体をお湯に沈めました。
周りを見ると、色々な人がいるものだなあと思います。お風呂の縁に腰掛けて目を瞑っている人や、知り合いなのか、隣に座っている人とひそひそと話している人、見ていて転ばないかとこちらが心配してしまうおばあちゃん、小さな子供を連れた若いお母さんたち。

スーパー銭湯に行くとその場に行くことがある意味イベントのような感じがしますが、昔からある銭湯では銭湯自体が生活の一部であることが感じられました。
母が子供だった頃は銭湯によく行っていたらしいですが、今では行く方が新鮮です。

ドライヤーも3分20円かかるという事実に最初は驚きながらも、受付で両替してもらって、機械に入れて乾かすという流れが特別のように思えました。(私は毛量が多いので、三回ほど20円を入れたのですが…!)

髪を乾かし終わって、脱衣所を出ると、先に出ていた彼が待っていました。
二人して近くにあった自販機で飲み物を買って飲みました。
私は定番のコーヒー牛乳。
苦さよりも甘さが勝つコーヒー牛乳が、火照った身体を染みわたっていく感じがしました。

もこもこと首元を包む上着の中では、お風呂のあたたかさの名残がまだあります。来る前はダウンしていた気持ちも、帰りのタクシーの中では心地よい眠気を誘うくらいに穏やかでした。

今は無事、私の部屋のお風呂の蛇口も直り、熱いお湯が出ます。その熱いお湯に浸かる幸せをひしひしと感じる季節になってきました。時折、お風呂に入ると、あの銭湯での雰囲気を思い出します。
日常の中のほっと安らげる、一人一人の時間が銭湯には詰まっているのかもしれません。

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