名称未設定アートワーク

【誰でも出来る】サッカーの戦術的な見方

※「前置きとか要らない。簡単な見方だけを速攻で頼む。」という人は、目次で★がついている項目だけ読んでいただければ大丈夫です。


好きに見るのが一番

まず最初に。
「これが絶対正解」なんていう見方はサッカーには無い。
見方は様々。

好みの選手を見続けるでもいいし
ドリブルのテクニックを見るでもいいし
身体の使い方を見るでもいいし
戦術的に何が起きたかに注目してもいいし
どういう企業が絡んでてどんな広告の出し方をしているのかを気にしてもいいし
芝生の緑を楽しんでもいい。
なんだったらフィールドではなく、サッカーを見ている家族友人恋人の顔を楽しむのもいい。

自分が見たくて見ているのだから、見たいように見るのが一番。

他人からよく思われたい。
他人に勝ちたい。負けたくない。
そういう気持ちでがんばると、
好きなことも好きではなくなってしまうのかもしれません。
それは悲しすぎます。
「好きったら好き」
くらべないのが一番だと思います。
結果的に上達すると思います。

このブログにあるように、他人の見方と比べる必要はないです。
自分の感情に素直に従って見たほうがサッカーも面白いです。


とはいえ、そうもいかないこともある様子。

応援歴のほぼ毎週をサッカーに捧げているが未だに戦術が理解できない。
最初のうちは毎回マッチデープログラムを購入し、詳しい人のツイートを見て勉強していたが全然ダメだった。
そもそも私が戦術に詳しくなろうと思ったのは「もっと知りたい!」という動機ではなかったからだ。
「サッカーを見てるのにオフサイドも分からないの?」「どうせイケメン選手が好きなんだよね」「男漁りにスタジアムに行ってるんでしょ?」「ニワカかよ、本当のサポーターって言うのは…」「女の声は応援に向かない」
その言葉に対抗するには戦術や用語を知り、応援に参加し、サッカー競技が好きなことをアピールするしかなかった。マランダラージって何だよ。

素直に自分の好きなところを楽しみたいだけなのに、こんな邪魔が入ってしまい、仕方なくそれっぽい見方を学ぶ必要が出てきてしまうことがあるらしい。

サポーターを減らすサポーターってなんやねん!とかそういうことは今回は置いといて、そんな「仕方なく学ばなければいけない人」でもパッと使えるような戦術的な見方を提示できればいいなと思ったのがこの記事です。


ブログでもyou tubeでもサッカーの分析について携わっているゼロファジさんにも「きっと需要ある」って勇気もらったし。

この記事が誰か1人にでも良いのでお役に立つことがあれば幸いです。



戦術的な見方とは

ではそのタイトルでも書いた「戦術的な見方」ってそもそもなんだろう?というところを少し。

私は普段サッカーのコーチをしているので、
①戦術トレンドを知る=今はどんな選手が必要になのか、これから必要になるのか
②様々な状況の解決方法のアイデアを得る=選手たちはどんな解決方法を持てればよいのか
を中心とした視点で見ることが多い。

この2つの、「戦術トレンド」は文字通り戦術だし、「状況の解決方法」も戦術だ。
他にも、「個人のテクニック」も戦術だし、「走り方」も戦術。
戦術とは「戦う(たたかう)術(すべ)」と書く。
戦う方法ということ。
戦いとは勝利を目指すものとすると、つまりは「どうやって勝とうか?」から考えられたものは、乱暴に言えば全部「戦術」と言える。

なのでその「どうやって勝とうとしているか」を探りながら見ることが「戦術的な見方」になるんじゃないかなと思う。
近年SNSなどでも多く見るようになった「戦術分析」は一部状況の勝ち方やチームの勝ち方を探る行為であり、「試合分析」は双方のチームがどうやって勝とうとしていたかを探りながら結果的にそれがどのような現象になったかまでを見つける行為、ということ。

ただそうなると、この「どうやって勝とうとしているか」をピッチ限定で見たとしても、見るべき範囲が広すぎるので「どこから見たら(覚えたら)良いのかわからない問題」が発生する。
「全部必要だから」と言っていきなり「ルールを覚えて、フォーメーションを知って、専門用語覚えて、どういうテクニックにどんな効果があるのか勉強して」なんてやってたら大変。
というか、そういうところから入ろうとすると、その知識を使うことに意識が引っ張られすぎて、意外と大事なところを見落としたりする。

そんな見落としも無いようにするためにも、「ルールもよくわからない、フォーメーションも知らない、専門用語もわからない、テクニックは派手なのが良いよね、とにかくウチのチーム最高!」みたいな愛はあるけど知識はないという人にでも簡単に出来る「戦術的な見方」を紹介したい。



★ 戦術的に見る基本は”誰”と”何”

誰でも出来る簡単な戦術的な見方は

「誰で何をしたいのか(したくないのか)」

を考えること。

5w1hのWhoとWhat。たったこれだけ。
あえて言うならそこに「したい(したくない)」を追加する。
それだけ。

この”誰”には「選手名」だけでなく「足の早いFW」「身長の高い相手」「パス回しの上手なチーム」など大きな括りも入る。

”何”には「ゴールを」「マイボールに」「ドリブル突破を」「パスカットを」など、得たい結果やプレーが入る。


例をいくつか。

・パスの上手い選手で相手ゴール前にパスを出したい
・足の早いFWでDFラインの裏へ突破したい
・走れるチームで相手を混乱させたい
・1対1で奪うのが上手い選手でボールを奪いたい
・足の遅いDFでラインを上げずに守りたい
・身長の小さいチームでセットプレー守備したくない

このあたりを考えて見ること、それが戦術的な見方。
そんなに難しくないと思う。

小難しい戦術分析記事などをよく見る方からすると「これが戦術的な見方なの?」となりそうだが、安心してくださいこれも戦術的な見方です。
というより、これが戦術の元。
「誰で何をしたいか」つまり「勝つために選手の持っている能力をいかに使うか」「選手の持っている能力は何なのか」、それこそが戦術の元になる。

ドリブル突破が苦手な選手にドリブル突破を仕掛けさせる状況を普通は作ろうとはしない。
ドリブル突破が得意な選手にその状況を作りたいと思うはず。
その状況を作るために、フォーメーションがあり、ポジションがあり、ポゼッションするかどうかがあり、プレスするかどうかがある。

画像1

選手の能力があってこそ戦術になる。
監督はそのチーム全員の能力を踏まえて「誰で何をしたいか」を組み合わせてチーム力が最適化するような方法を見つけて行くのだから、その元を分かっていなければ、むしろ戦術なんて語ることが出来ない。のかもしれない。

で、この戦術の基礎となる”誰””何”
「これってサポーターが一番わかってることなんじゃないの?」と思っていたりする。

愛はあるけど知識はないという人にでも簡単に出来る「戦術的な見方」

と上の方では言ったが、むしろ愛がある人こそ「誰で何をしたいのか」がわかるのではと。

熱心なサポーターは、自分のクラブの試合を何度も見ているだろう。
場合によっては下部組織にいた頃から選手を見ていたかもしれない。
そんな愛ゆえにわかってくるのは、その選手が上手くいく状況。またはチームが上手くいく状況。

ハッキリと言葉で「何がどういう時〜」と説明できなくても、「あの選手がこんな感じのプレー出来てるときはチームが勝つんだよね」など、感じ取ることがあると思う。
これは「その選手でそのプレーをしたい」そのものと言える情報。
それが言えていれば十分すぎるほど戦術的な見方は出来ている。

ちなみに私は特定のチームを追わず、いろんな試合を見るタイプ。
なので選手の特徴をわかっていないまま試合が終わっていることだってある。
そりゃそうだ、相手がいるんだから。
試合に出ているとある選手の特徴を90分間相手に封じられたまま試合が終わったら、「その選手で何がしたかったのか」なんて気づかない。

でもサポーターの方々は違う。
様々な情報も持って何試合も見ているので、自チームの選手の特徴をわかっている。
そう。見ている歴史が違う。
だから良さが出なかった試合でも特徴を知っているからこそ何をしたかったか感じることが出来る可能性は高いし、特徴を封じられた試合では相手が何をしたかったのかまでも感じることが出来るかもしれない。
サッカーのルールを良く知らないサポーターでも、おそらくこのあたりを感じることはあるんじゃないかと思う。

だから「戦術とかよくわからないんだよね」と言うサポーターには「実はすでに戦術的に見れているのでは?」と言いたいし、感じている情報があるならば自信を持って大いに語っていただきたいと思う。
私のような半端なファンではなかなかコアサポーターの持つその情報までには辿り着けない。
(そういった意味では、この「誰で何をしたいのか」は「誰でも出来る戦術的な見方」にはならないのかもしれない)


ということで、是非「誰で何をしたいのか」を考えて試合を見てみてほしい。
これが一つでもわかればもう戦術を語れるということです。

そして他の人と意見が違っても気にしないでください。
解釈なんて人それぞれです。
その違いこそが会話をしていて楽しい部分だとも思います。
もしかしたらプレーしている本人達ですら気づいていないあるべき姿が、あなたには見えているかもしれません。


ちなみに、どこかのチームの「戦術分析」ではなく、「試合分析」をしたい場合は、お互いのチームの「誰で何をしたいのか(したくないのか)を考える必要があります。
お互いに、相手の「したい」を潰し、「したくない」を突こうとする。
その思惑がどの程度機能しているのか?
なんでその「したい」が機能しないのか?
そんな駆け引きを見つけるのも面白いですよ。


キーワードは「誰で何をしたいのか(したくないのか)」



”誰”と”何”から始まる戦術

「誰で何をしたいのか」の重要性を、もうちょっと詳しく。
(今までよりもう少し専門的な言葉も出てきます)

「なんで11対11でサッカーという同じルールの元で戦うのに、いろんな戦い方があるの?」
の答えは
「同じ選手はいないから」
になる。
(賛否はあるだろうがそこはドンマイ)

指揮官が同じでも、選手が変われば、大なり小なり戦術に違いが出る。
サッカーとしての大元となる原理原則はあるものの、その選手たちをの能力を勝ちに繋げるには、大元の原則に変更を加えたり、追加の原則を用意する必要が出てくる。
これがチーム戦術というもの。

「強いチームや有名な監督は、選手が変わっても同じスタイルでやるじゃん!」
っていう声も聞こえてきそうだが、答えは
「それはスタイルに合わせて選手の方を変えているだけ」
だ。

強いチームや有名な監督はそのスタイルの必要性や成功体験、成功理論があるから、それ以外の方法をゼロから考えるより、そこに合わせて選手を変える(移籍やトレーニング)方が効率が良いのは間違いない。
そのスタイルそのものが強いのではなく、そのスタイルに合わせた選手がいるから、「その選手達で何がしたい」がガッチリハマって強いってだけ。
実際に超有名選手でも、監督によっては輝かなかったりする事例があることでわかると思う。

なので選手を変えられないチームは、所属している選手を元に最適解といえる戦術を考えるしか無い。
選手に全く合わないスタイルを強行すれば間違いなく勝率が下がる。

つまり選手によってチーム戦術は変わる。
だから「誰で何をしたいのか」は戦術そのものを表すぐらい重要なこと。


で、その「誰で何をしたいのか」の中でも特に大事なのは「ゴールの方法」
言い換えると「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)」

なぜこれが大事かというと

「どうやって勝とうとしているか」を探りながら見ることが「戦術的な見方」

だとして、「サッカーの試合で勝つこと=相手より多く得点すること」なので、「勝ち方を探ること=得点の仕方を探ること」とも言えるから。

サッカーはその得点の仕方から戦術が組み立てられていく。
(トーナメントなどでは失点しない仕方から戦術を組み立てるチームもあるけど)


実際のチームを使って例を。
(あくまで例ということで、間違ってても許してください)

例:横浜Fマリノス
「スピードと突破力を持った仲川でチャンスを作りたい」

①仲川をスピードに乗った仕掛けができるポジションへ
②仲川がそのポジションでスピードに乗れるような状況を作る
③後ろからパス回して仲川に良い状況を作ろう
④仲川のポジションを維持するためにも高い位置でボールを奪おう
⑤奪ったら相手が戻らない内にさっさと仲川に渡そう
(「仲川」のところは「WG」や「前線」にしても良い)

こんな感じ。
「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)」を元に、そのためにどうするか、が紐付いていき、チームの攻守の方向性が決まる。

その方向性によって、また新たな「誰で何をしたい」が生まれる。
このマリノスの例で言えば、③をするために「キックの上手いGKとCBで相手を釣り出したい」だったり、④のために「機動力の高い中盤と前線のメンバーで前線からプレスしたい」だったり、他の「何したい」が繋がるようになる。

「ゴールの方法」=「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)」を探ることはとても重要だ。


そうやって作られたこの「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)」から始まる”全ての「誰で何をしたい」が、矛盾なくハマるチーム戦術”になっていると、選手みんながうまく見える。
「何をしたい」は強みの部分(多くの場合)。
相手より多く得点するという目的に対して、全員の強みが漏れなく発揮すること出来ていれば、当然うまく見える。
きっと何度も相手ゴールに迫ることになり、より上手く見えるだろう。

これは、選手それぞれがただやりたいことをやる、のとは訳が違う。
「”チームとして”誰で何をしたいか」だから。

ではその”全ての「誰で何をしたい」が矛盾なくハマるチーム戦術”とはどんなのか?の例えを、記事を書いている現在最強チームの一つとされているリバプールを使って少々。
(下の画像は以前私が作ってみたリバプールの簡単な戦術説明書みたいなもの)

無題23_20191128130812 2

このリバプールの戦術が非常によく出来ている。
雑にざっくりごちゃごちゃ書くと、
(ちゃんと読まなくて良いですよ)

「世界トップクラスのスピードとキープ力のあるFWで速攻からチャンスを作りたい」のゴール方法を軸に、相手背後にスペースを作って速攻を狙うためにピッチ真ん中の高さぐらいでのプレーを基本としながら、「キック精度の高いDFラインの選手で相手DFライン背後へのパスを出したい」「運動量とテクニックに優れた中盤の選手でこぼれ球の回収もしながら前線につなげたい」という攻撃を持ちながら、相手を押し込んでしまったら押し込んだで「精度の高いキッカーと強力な空中戦を持つ選手でセットプレーからゴールしたい」というゴール方法もあり「スピードとキックに優れたWG、IH、SBで積極的に相手陣地深くに入っていきたい」もある。
更に守備では、速攻のために高い位置で奪わなくて良いんだという前提がありそうな始まりから「機動力に優れた中盤とSBでボールを奪いたい」を実現するようなプレスをしかけ、奪われた直後においても攻撃で速攻を狙うスタイルが故に後方の選手が留守になることもなく、それでも相手がそのプレスやネガトラの一瞬の隙をついて速攻を狙おうものなら「世界トップクラスの守備能力を持ったCBとGKで質的優位を活かしたい」と言わんばかりに対応し、攻められたことで出来たスペースを使って「世界トップクラスのスピードとキープ力のあるFWで速攻からチャンスを作りたい」のゴール方法を狙う。

という感じで、全てに選手の特徴がガッチリとハマっている。
「カウンターを仕掛けたいけど高い位置で奪いすぎてスペースがない」や「ラインを上げて守備したいけどGKは前出れないしCBも弱い」みたいな矛盾もない。
ゴールの方法から逆算された、素晴らしい設計と言える。
(レギュラーメンバーにガッチリとハマっている戦術だからこそ、そうじゃないメンバーが出た時にズレが出やすい気もするが)


「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)」を始めとして「誰で何をしたいのか」を積み重ねていけば、ここまでチーム戦術になる。
「誰で何をしたいのか」は誰にでもわかりそうな部分だが、それがとても重要な部分でもある。
その中でも「ゴールの方法」を探ることは、チームのやり方そのものを探る行為とも言える。
戦術的な見方をするならば、是非とも気にして見たいところだ。

もしチームを率いる立場の方であれば、自チームの戦術(ゲームモデル)を組み立てる際には、この「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)」から考えても良いかもしれない。

ちなみにゲームモデルの作り方。


キーワードは「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)



”誰”と”何”以外を加えると

さらに詳しいお話。

「誰で何をしたいのか」は前述の通り5w1hの「Who(誰)」と「What(何)」を使っている。
ここに5w1hの残りの「Why(なぜ)」「When(いつ)」「Where(どこ)」「How(どのように)」を加えると、専門性が増す。
ただ最初からいろんなところに注目してしまうと、最も基本的な「Who(誰)」「What(何)」が抜けてしまいがち。

「戦術的な組み合わせで、こっちチームがこうやって攻撃して相手がこうなって…」なんて説明を私もよくツイートしたりするのだが、そこに「じゃあ結局それは誰でゴールをするためなの?」が含まれていない戦術的な考察に関しては、考察としてはあまり意味がない。と思っていたりもする。
言い訳として、自分としては前述の通り「①戦術トレンドを知る②様々な状況の解決方法のアイデアを得る、を中心とした視点で見ることが多い」ので、誰がやってるとかそういうのはゴニョゴニョ…m(_ _)m
自分のことは置いておいて。


試合を見ていると「ビルドアップやプレスのやり方は気にしているようだが、そこには得点からの逆算が無い」というように見えるチームもあったりする。

もちろんサッカーには相手がいるので、相手の妨害によってその得点の狙いが見えてこないだけの場合もあるだろうが、数試合見ても誰でゴールをしたいのかが見えてこない時は、戦術的な不備とも言えるかもしれない。

例えば、ファンの方には怒られてしまうかもしれないが、リーガエスパニョーラの今シーズン序盤のアトレティコ・マドリードのとある試合を見た時の話。
アトレティコにはジエゴ・コスタという得点力に優れたFWがいるのだが、相手陣内でSHやSBが開いたポジションでボールを持った際に、そのSHやSBの前に飛び出す役がコスタになっていた。
DFライン裏に飛び出すのがFWなら一見問題がなさそうだが、サイド側に流れるようにして飛び出すということはラストパスを出すのがコスタになるということ。
コスタは得点力に優れた選手=相手ゴール前で合わせる側の選手。
それがラストパスを出す側になっていては良さが出ない。
しかもサイドにはクロスの上手いSBがいたりするのに、ゴール前にはコスタがいない設計になってしまう。
これは相手の守備がそうだったから、という感じではなく、アトレティコの選手の配置的にどうしてもそうなってしまう感じだった。
数試合見たわけじゃないのでその試合がたまたまそうなっていただけなのかもしれないが、戦術的不備としてとても印象に残っているので、例として使わせてもらった。


そんな戦術を設計する上で重要な「誰でゴールしたい」に5w1hの残りを追加してちょっと深堀りを。


今プレミアリーグでは少し話題になっている選手がいる。
ウォルバーハンプトンというクラブに所属するその選手の名前は「アダマ・トラオレ」。
この名前で検索すればいくつか記事が出てくるぐらい話題の選手だが、彼の特徴はスペースがある状態から最強のスピードドリブルで相手をぶち抜くこと。
そうなるとチームの一つの狙いは「トラオレでスピードドリブルを仕掛けたい」になるかもしれない。

ここに残りの5w1hを入れて狙いとしている状況をより詳しくしてみる。

「(なぜ)相手を置き去りにして決定機を作るために、
(いつ)相手DFラインが上がっている時、
(どこ)相手DFラインの手前にいる、
(誰)トラオレで、
(どのように)前向きでスペースのある状態から、
(何)スピードドリブルを仕掛けたい」

と、しておく。

もしこの狙いを軸とするのであれば、チームとしては相手を押し込むようなプレーを控え、自陣寄りで主にプレーする必要があるかもしれない。
守備時においては、常にトラオレへのパスコースを気にしながらも、相手DFの人数を増やさないように他の味方は前に残さずに下がった方が良いかもしれない。

誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)をより詳しくすることで、チームとしてやるべき戦術がより鮮明になってくる。


ただこのへんまで解像度を上げて見ようとすると、そこにはサッカーとしての知識が必要になってくる。
「なぜそうなるのか」「こういうときはどんな問題が起きるのか」「こういう場合の定石にはどんなものがあるのか」などなどを知っていないと、5w1h全部を使うように言語化する要素を増やすのも難しいし、そこからチーム戦術に繋げることは更に難しい。

なのでもし「そういう解像度で見たくなってきたぞ」という人がいたら、こういう本を読んで、「サッカーってそういうスポーツなのか」「フォーメーションにはこういう効果があるのか」などなどを学ぶことをオススメする。

そういう知識がついて、その知識を元に見ることを続けていれば、見えてくるものも増えてくるはず。

ただどんなにいろいろ見えるようになっても忘れてはいけないのは

「誰で何をしたいのか」
「誰でゴールしたいか(チャンスを作りたいか)」

です。
これが戦術の元だということだけは覚えて帰ってください。


ちなみに、この「誰で何をしたいのか」”誰”に、「選手名」を入れるとゲームプランのようになり、「ポジション」や「特徴」を入れるとゲームモデルっぽくなります。
そしてさらに大きい単位、「下位チーム」や「スポットスポンサー」などを入れるとクラブ戦略的な方向になっていくかもです。こんな使い方はしないとは思いますが。



とはいえ

冒頭でお話したように、見方なんて好きにするのが一番だと思います。
今回ご紹介したのは私の見方の一部です。
なぜ一部かと言ったら、試合を見る目的によって見方も変わるからです。

戦術的に見ると言っても様々で、すでに結果もスタイルも知っているチームの試合で「なんでこのチームが勝ったのか(負けたのか)」を探るときは「なんでこの試合展開なんだろう」みたいなところから見たりするし、戦術トレンドを探るときは「誰」を無視して「よくみるフォーメーションの変化」みたいなところに注目して見たりもします。

長々とポイントを説明してた割には、自分自身もそんなものです。

なので、この記事で紹介した見方が、納得の行くものであり、役立ちそうだと感じていただけたのであれば、必要な時にこの見方を使っていただければと思います。


以上

この記事が誰かのお役に立てることを祈ります。


終わり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?