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母のこと

娘の私が言うのもなんだが、私の母は容姿端麗である。
昔から母の美しさは群を抜いていたし、50歳を過ぎた今でもほとんど変わりはない。結婚するまでは、幼いころからずっと芸能関係の仕事をしていた。

そんな母から生まれた私。

私の顔は父によく似て平たく図体もやたら大きかったから、物心つくころには母のようにはなれないのだと知っていた。私は父を最も尊敬しているのだが、母のように美しくない私には父のような人と結婚して幸せになることはできないのだと思った。

そこで、私は勉強に精を出した。結婚できなくても、一人でお金を稼いで生きていく力をつけなければと考えたからだ。母は一切勉強を教えてくれなかったので、毎晩父の帰りを待って勉強を教えてもらった。ああでもない、こうでもないと、父と一緒に頭をひねる時間はとても楽しくて、気づけば東大を目指していた。

無事合格して大学に入り、大学に行っていない母とはますます話が合わなくなった。顔は違うものの輪郭から手足までそっくりな私たちは、当たり前のように相手に自分を重ね合わせ、話が合わないことにストレスを感じていたのだと思う。これも家を出たいと思った大きな理由だった。

少なくとも私にとって、この選択は正解だった。私は母から独立した一人の人間なのであって、これから全く別の時代を生きていく。母が教えてくれた日々の楽しみを糧にして。それは例えばこんなものたち。

キャロルキング
ノラジョーンズ
スタンドバイミー
アニー
大草原の小さな家
赤毛のアン
パトリシアコーンウェルの検視官シリーズ
宮部みゆき
ワインとおつまみ

母はたくさん劇場や図書館に連れて行ってくれたし、一緒にソファで映画を見たし、おつまみをちょっとずつ分けてもらった。そうやって一緒に過ごしてきた日々が、確かに私のものになっている。
つくづく、母が私の母でよかった。

最後に。ずっと迷ってやっと手に入れたキュートな彼女。

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