半熟たまご

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母のこと

娘の私が言うのもなんだが、私の母は容姿端麗である。 昔から母の美しさは群を抜いていたし、50歳を過ぎた今でもほとんど変わりはない。結婚するまでは、幼いころからずっと芸能関係の仕事をしていた。 そんな母から生まれた私。 私の顔は父によく似て平たく図体もやたら大きかったから、物心つくころには母のようにはなれないのだと知っていた。私は父を最も尊敬しているのだが、母のように美しくない私には父のような人と結婚して幸せになることはできないのだと思った。 そこで、私は勉強に精を出した

    • 「足りない」が足りない

      長い休みになると、必ず旅に出る。 まだ学生だからお金はないけど、無駄遣いできる体力と度胸だけはあるので、大抵は何日もかけて国から国をまたぐ過酷な旅になる。この前の学部最後の冬は、50日かけてフィンランドからトルコまで南下した。 そうやってひたすら先へ進もうとしているとき、私の内側にふつふつと言いようのない高揚感がわく。生きているという実感。私の生死は確かに私の手の中にあり、絶対に生きて日本へ帰らねばならない。そこに自分の存在価値とか生きる意味を疑っている余裕など全くない。