短編/22.5cm【後編】
低周波治療器〈6〉
妻のパートのない日、早々に家から追い出される自分の姿が、男にはありありと想像できた。
午前中に整形外科に来るのは高齢者ばかりだ。そうなれば、男にとってチャンスはずっと遠のくことになる。むしろそのチャンスは永遠に失われてしまうかもしれない。
そんな焦りに駆られる一方で、重ね続けてきた罪から足を洗う良い機会ではないかとも考えていた。
男のなかには葛藤がある。
男が罪を犯してきたのは何もこの整形外科だけに限らない。今後その秘密の罪から手を引くと決めたとして、自分を保っていられる自信も彼にはなかった。それに、罪の証拠は目に見える形で存在した。
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