「無料(タダ)で作ってよ」

 デザイナーに限らず、どんな職業の人でも一度は言われたことがあるのではないでしょうか。
「そのくらい無料(タダ)でやってよ。プロでしょ?」
「ここをちょっと直すだけじゃん。そんな時間かからないよね」
 言い回しは様々ですが、何かにつけてお金を払わないことを正当化する人、いますよね。私もこのようなことを言われたことがあります。しかもその多くが会社で上の役職についている方でした。
 経営の根幹に携わっているからこそ、少しでもコスト削減したいと思うのかもしれませんね。会社ではないのですが、自営業なのでその気持ちはわかります。


パンフレット・チラシ作成が比較的容易になった

 今の世の中にPCを使わない仕事はほとんどないと思います。パワーポイントはかなり進化し、テーマテンプレートは豊富になりました。加えて、Adobe CCの存在により、PhotoshopやIllustratorがぐっと身近になりました。
 つまり、チラシやパンフレットなどの作成が従来よりも簡単にできるようになったのです。PCを日常的に使っていて、なおかつソフトも身近にあるからこそ「えぇ〜イラレなんて私でも使ったことあるよ? これくらいなら無料(タダ)でいいじゃん」という考えになるのかもしれません。
「イラレやフォトショを使って何かを制作することがデザインでしょ? 僕でもそういうソフトは使えるよ。つまり、素人の僕でさえチラシを作れるということになる。素人で作れるんだったら、デザイナーにお金を払わなくていいよね」
 時々こういった意見も見かけます。しかし、本当にそうでしょうか?


プロに任せることで、かえってコスト削減できる

 例えば、会社の営業で使うA4チラシ(片面・フルカラー)を写真撮影込みで依頼したら、見積もりが7万円だったとします。
「たった1枚作るのに7万円なんてあり得ない! うちの会社にソフトもあるから自分で作れる!」
 上記のように思う人もいるでしょう。額面だけ見ると一見高く感じ、自社内で作業を完結させた方が安く済ませられそうですよね。
 しかし、通常業務も忙しい中で+αの仕事が入ったらどうでしょうか。日常的に触らないソフトを使うため勝手がわからずイライラしたり、残業が重なって疲れる上に残業代もかかります。残業にならないよう営業時間で制作するとしても、その人の通常業務を他の社員で分担しなければなりません。そうすると一人当たりの仕事量が増え、負担になりますよね。このように、かえって労力や人件費が必要になることも間々あるのです。
 プロに外注することで自分は通常業務に集中でき、人件費などのコストを削減できるのです。

 ここで書いたハンコ屋さんで作ってもらった図面のデザインは自分でしました。例え話ですが、もし彫る作業まで自分でやったら何十日かかるのだろう……と想像しただけで気が遠くなります。通常業務やりながら彫ったら作業時間がものすごく長くなるし、仕事休んで彫ってたら自営業だからその間の収入0円になるし。
 自分でゴム印を作ろうという考えすらなかったのですが、こうして想像してみると「やっぱりプロに任せてよかった〜!」という気持ちになりました。


特殊なソフトを使って制作する≠デザインする

 もちろん私たちはIllustratorやPhotoshop、InDesign使用してデザインします。しかし、それはあくまで制作過程で使用する道具に過ぎません。
 デザインは料理に似ていると思います。お米、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、肉、カレールー、ローレルが手元にあるだけでは、カレーにはなりませんよね。食べる人に合わせた大きさに具材を切って、辛さを調節する必要があります。プロの料理人はカレーが一番美味しくなる火加減や煮込む時間などあらゆる知識をもっています。それらを駆使して作るからこそ、おいしいカレーが手元に運ばれてくるのです。

 どうでもいいけど私は大学生の頃からインドカレーが大好きです。インドカレーを食べるとあの辛さで全身汗まみれになって凄く元気が出ます。カレーの話をしていたらインドカレーが食べたくなったので、明日か明後日にインドカレー弁当を買ってこようと思います。

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