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ショートシナリオ『月子』前編

※note投稿にあたって読みやすい形式で掲載しています。


◯   バー『スパイダー』・カウンター(夜)

シュウゴ(23)とヨウコ(30)が並んで座っている。
二人は正面を向いたまま、マイペースにそれぞれ酒を飲んでいる。

シュウゴ「俺、ずっとヨウコさん好きだったんっすよね」

ヨウコ「へえ、そうだったんだ、知らなかった」

シュウゴ「そうですか……俺じゃ…やっぱダメですか?」

ヨウコ「うーん、ダメってことはないけどさ……  
ごめん、男として興味ないわ」

ヨウコ、ちらっとシュウゴの方を向いて軽くのぞき込む。

シュウゴ「そうですか…じゃ、しょうがないっすね」

ヨウコ「ごめんね、もっと合う子いると思うよ、きっと」

ヨウコ、シュウゴの肩に自分の手を軽くのせて励ます。

シュウゴ「はぁ……」

◯   人気のない通り (夜)

シュウゴ、表情もなく、ぼんやりと歩いている。
視界に何かを見つけてふと立ち止まる。
シュウゴの視線の先に『Luna』の看板がある。

◯   サロン『Luna』の前 (夜)

『新しい自分見つけてみませんか?』『貴方の変身お手伝いします』の宣伝文句が表記された看板。
シュウゴ、看板の前で足を止めて、もう一度看板の文字を目でたどってから、店の入り口へ顔を向ける。

◯   (回想)  シュウゴの頭の中

ヨウコの姿が浮かぶ。

◯   同・サロンの前 (夜)

シュウゴ、うつむきながら店内に入るかを悩む。数十秒悩んだ後に意を決して店の扉のある方へ向かい、恐る恐る扉のノブに手をかけて扉を開ける。

◯   同・サロンの中 (夜)

扉のすぐ目の前には受付のカウンター。誰もいない。受付カウンターの上に呼び鈴。
『いらっしゃいませ。ご来店の際はこちらでお呼びください』と案内がある。
シュウゴ、遠慮がちに呼び鈴を一度鳴らす。

女店員「はーい」
店の奥から少し高めの声が聞こえる。十数秒後、女店員が受付に現れる。

女店員「いらっしゃいませ」

シュウゴ「…あ、あの、初めてなんですけど。外の看板に変身できるってあって入ってみたんですけど、それってどういう……?」

女店員「はい。お客様の希望に合わせて変身をお手伝いさせていただきます。メイクやヘアスタイルも好みに応じてやりますし、お洋服も色々なタイプをご用意していますからコスプレなんかもできますよ」

シュウゴ「そうなんですか?じゃあ、あ、あの、じょ、女装…なんかもできるんでしょうか?」

女店員「できますよ。最近は女装願望を持ってい
る男性も増えてますからね。そういう方も当店を利用されてますよ。今、ちょうど同じご希望の方が中で変身中ですよ」

シュウゴ「じゃあ、それお願いします」

女店員「かしこまりました。こちらへどうぞ」

◯   同・サロンの廊下 (夜)

女店員が案内する部屋の奥から背の高い女性が現れて、シュウゴと女店員とすれ違う。シュウゴはすれ違いざまその女性を横目で見る。

後編へ続く。  

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