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健康診断ネガポジ

健康診断で引っかかった。貧血で。
えっ、貧血の身体でこれだけ旅したり遊んだり働いてるの自分。びっくりしてしまった。めっちゃタフじゃん、逆に。

検査結果を見たらなんだか脱力してしまった。「要検査」なんてワードを初めて突きつけられたからだ。考えたってどうしようもない不安がやってくる。大きな病気が隠れていたらどうしよう。いや、生理と重なってたからだけだって。そういえば4月に体調を崩した時、医者に「咳とか気管支より、そんなことより貧血だねぇ」と言われたんだった。鉄分のサプリやジュースを二週間ほど摂取して、治した気になっていた。

高校生の頃に一度、貧血だけど医者に行くほどじゃない、要観察だと医者に診断されたことがある。「君、貧血じゃ成績出ないでしょ〜」と言われた時も脱力してしまった。走るのが好きだったけど真面目に部活動はしたくなかったから、当時は運動部で一番やる気のない、楽そうな陸上部に所属していたのだ。

放課後は週4でバイトして、バイトがない日は走って、何もない日は友だちとカラオケに行ったりファミレスでだべったり。何ヶ月かに一回は、東京や静岡へ古着を買いに行きがてら、地元の鬱屈とした空気から抜け出す。そのためにはお金が必要で、バイトに勤しむ。走る。学校にいる間は、好きでもない勉強をする。将来のことを考えるも、大きなブラックホールが見えるだけ。先の見えない暗闇に向かって走り続けているような気持ちだった。

自分で選んだこととはいえ、疲弊して確実に心が荒んでいった。暇な時間が好きな自分には向いていなかった。時折限界が来て、保健室に駆け込んでいた自分に「バカじゃない?取捨選択しなよ」と、吐き捨てるように言っていた保険医を今でも覚えている。バカはバカなりにしか生きられないんだよ、うるさいな! 思春期真っ盛りの当時の自分は、尾崎豊の「15の夜」ばりに大人を敵対視していた。

まずは自分を取り戻すために部活をやめて、受験生だからって理由で早めにバイトもやめたけど、結局全然好きじゃない勉強に励むわけでもなく、第一志望の大学に落ちた。大して家が裕福でもないのに、国公立大に行けない自分、ゴミすぎるなぁと反省しつつ、ここでようやく親の愛情を知ったりもした。(本当はずっとあったのだろうけどわからなかった)

ブラックホールに体当たりで突っ込んだら、その先には「京都」という街があった。家から通える範囲の近距離、都会すぎる東京や大阪、何かあったときにすぐ帰って来れない東北以北や九州以南の大学は、志望校から除外していた。自分の直感はあながち侮れなくて、京都での生活は自分の器や世界を何倍も大きくしてくれた。

今はブラックホールから抜けて、人生2周目をプレイしているような心地だ。これまでの生活では、自分のスキルが低いのもあり、どうしても人間関係で嫌な思いをしたり、嫌いな人のそばにいなければならない環境が必ずあったが、2周目はそれがなくなった。むしろ好きな人たちとしか関わっていなくて、こんな幸福があるのだろうか、昔の自分に教えてあげたい。過去に見えていた世界と全く違う。あんなに灰色だった故郷の景色が、やたらと眩く見える。

「足るを知る」という言葉が最近はよく頭をよぎる。私はかなりラッキーな部類の人間で、すでにありあまる幸福を周囲の人からもらっている。それも、受動的ではなく、流されるままではなく、能動的に生きると決めたからかもしれない。ブラックホールのような不安は、受動的な自分に宿るものなんだと気づく。足るを知りつつ、幸せに飛び込むことを恐れないのも、勇気がいる。

これからも愛したいものを愛していって、これまでの恩返し含め、周りも自分も愛で満たしていきたいなと思う。人として生きるってそういうことじゃん。やっぱり「愛されるより愛したい」に行き着く。そのためには、これまで放っておいた自分の身体と向き合っていきたいと思います。

生きていたくても、借り物の器が寿命になったら終わっちゃうもんね。目標は親より長く生きること、兄の二の舞にはならないことです。彼は健診結果の要治療を放置していたので。最近健診を受けてない人は行ってね!

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