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テロリストが死ぬ理由を教えてくれた本

テロリストってなんで自爆して死ぬんだろう。
ニュースを見るたびに謎だったのですが、先日わかりやすく答えてくれている本を見つけました。
中高生向きにテロについて書かれた本『ぼくは13歳、任務は自爆テロ。(永井陽右・著)』です。

著者の永井さんはNPO法人アクセプト・インターナショナルの代表理事として、ソマリア・ケニア・インドネシアでテロリストやギャングの脱過激派、社会復帰をサポートする活動をしています。

そのため、本の中に活動の様子や更生プログラムに参加している元ギャングの写真や経験談もたくさん掲載されています。
やっぱり実際の顔立ちとか表情が載ってると親近感が湧きますね。生身の『人間』を感じます。

働くためのスキルトレーニングや薬物更生プログラムは想像していましたが、工程を3期間に分けている内、3工程ともに「ケアカウンセリング」が入っているのが「わかってるなぁ〜」と思いました。
経済的に貧しいと、身なりとか住環境の前に心が貧乏になるんですよね…生活に余裕がないから希望がないし、人間関係も同じく希望がない人で固定されてくるし、環境が変わってもセルフイメージが悪いままだから結局自暴自棄になって元に戻ってしまう。
未来ある若者(ユース)としての自覚を持ってもらうために…という部分で役割と居場所の大切さがわかります。

本に関係がない話なんですけど、勤め先の社長の息子(次期社長)が来社した時、小学生なのに『将来この会社の一員として頑張ります』と照れながらも、まっすぐな目で話していて、小さい頃から「役割」を与える大切さを身に染みて感じました。(もちろん本人が拒否しているのに絶対強制するのは問題になりますが)
何不自由なく、ただ遊ぶだけの毎日では誇りや充実感は得られない。
全ての家庭で次期社長の役割を与えることはできませんが、家庭の一員としての家事とか、年少の兄弟や動物の世話、将来の夢に向けた取組み・練習(スポーツや習い事)は一般家庭でも取り入れられると思います。

あと、「エンパワーメント」とか「グローバルテロリズム」とか、難しい用語は文章のすぐ下に注釈を入れてくれているのもとても親切。
まだ社会勉強中の中高生だけでなく、中高時代に勉強を怠けまくり、一夜漬けの知識が抜け落ちたまま社会に出てしまった大人(私)にもありがたい仕様です。

実際にギャングやテロ組織にリクルートされる流れが事細かに書かれていていますが、「私が中学生の頃、同じような状況だったら、ギャング・テロ組織に加入するだろうな」と思いました。

貧しい難民生活、子供ながらに見える経済格差、貧弱な社会福祉。
社会への不満は蓄積され、ストレスで判断力が鈍っている時に現れるギャングやテロ組織のリクルーター。
今の生活が一変するほどの高額な報酬と、高尚な宗教目的をチラつかせられたら「ここに入れば、人生が好転するかも…!」と期待してしまいます。
伝統と権威があるイスラム教に基づいているはずが、新興宗教や怪しいマルチ商法の勧誘みたいですね。
加入したら高額報酬なんてないし、組織同士の抗争や警察の取り締まりに怯えてドラッグで紛らわす生活が待っているという詐欺。

少女を拉致したりするのは知っていましたが、そういう勧誘もしているとは知りませんでした。

本の中には加入前にリクルーターが言っていたのとまるで違う生活に嫌気がさし、自ら政府に保護された元ギャングが出てきますが、活動を続けるうちに本当に洗脳されて自爆テロ任務に向かってしまう人もいるそうです。

なんでギャングなんてなるの?テロリストはなぜ自爆するの?という疑問に十分に答えてくれる上、写真や経験談を通して本当にこんなことが怒っているんだと現実味を与えてくれる本でした。

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