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【イラストエッセイ】 夜風

夏の夜風は生温さを存分に残して
肌にじんわりとまとわりついてくる
ちょっとしつこく感じるけれど
慣れてくるとそれが心地よく感じるんだ

いっそうこのまま
どこか遠く誰もいない世界へ
連れていってくれたらいいのにと
願ったりしては
目に涙を浮かべたりして
夜風に身を委ねてみるけれど

夜風は涙で濡れた顔を優しく乾かし
私の長い髪だけをそっと揺らして
「またね」と通り過ぎていった

私はまだここに居なきゃいけないようだ

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