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【エッセイ】すべてのウソは、初手でバレている

たいそうなタイトルだけども。僕は自称ウソつきだ。コピーライターで、作家志望となればそりゃぁウソつきじゃないとやってられない。なんてこと、言うとコピーライターや作家の方々には叱られそうだけども。僕みたいな自分の言葉を切り売りしているような人間はね、罪のないウソをつくのよ。

罪のないウソをつく男

コピーライターってのは、商品の事実を見つめ、その周辺を見つめ、どこにいるのかを見つめ、自分とその商品との関係を見つめ、とにかく見つめる作業だと思うのだ。見つめ続ける。

見つめるがゲシュタルトな崩壊を始めてきたが、そうやって紡いでひねり出して、ちぎって丸めて投げた言葉をゴリゴリと磨いていく。いつか、自分の感覚外にある言葉ってのがそこにあって、それはもう「ウソ」なのだ。だけど、それでいい。ウソを書くのではなくて、自分の中にある気持ちにとっては、ウソなのだ。僕にとってはおいしくないものを、おいしいと言う。そういうことだ。それは、罪のないウソというものだ。そして都合がいい。

そういう、都合のいい「ウソ」を言ってばかりすると、ウソが下手になる。それは僕の持論で、ウソつきほどウソがばれやすいと思う。息を吸うように、ウソをつく。吐くときに、バレるのだ。これは、カミさんなんかにはもうバレバレで、ウソついてるなってときは、初手でわかると。最初からつまづいているのだよ。

僕はいつも、ウソの返り血を浴びているようなもんで、ホームズやらコナンくんなんか名探偵からしたら、最初から怪しい人物なのだ。

マヨネーズ買っといてくれた?事件とは

僕は我が家のお買い物を一手に預かっている。カミさんを働かせて、のうのうと家で原稿なんぞを書いている優雅な身としては、普段の食料買い出しぐらいはやれぃと相成ったわけだ。金曜日の昼からスーパーを2軒回る。健康のために、歩いたりチャリでと人力を活用している。エコだ。

買い物に行く前には、発注点リストというものを確認して、メモをする。

発注点リストとは、在庫があと●個になったら、発注=買い物するというもの。ちなみに、マヨネーズはストックがあと2個になったら、買うことになっている。

おらが家の在庫発注システム

カミさんも普段から、ストックを確認している。だが、いちいちアレ買え、コレ買えとは言わない。発注点リストに基づいての買い物が履行されたらいいだけだからだ。信頼なのか、泳がされているのか。

とある金曜日、午前中は京都市内で打合せ。大急ぎで帰って、保冷バッグを装備。リュックを装備。エコバッグイン!「お買い物、いきまーす!」のテイで出かける。スーパー1軒目はグロッサリー(小麦粉とか油とか缶詰とか)の安い店へ。一通り、発注点リストに基づいて購入。ジャブロー攻略ぐらいのテンポで進む。

2軒目は生鮮品やデイリー(豆腐とかお揚げとか納豆とか、要冷蔵の食べ物)を購入。こっちは発注点なぞなく、冷蔵庫の野菜室の「キャベツ」「ごぼう」がセカンドステージにも(来週分)使えるかどうか判断し、不足していれば買い足すぐらいの緊張感がある。

今週のキモは「トマト缶」だった。発注点4、と在庫が4となれば購入だ。今の在庫は4缶!最低でも1缶は買わねばならぬ。週末はトマト缶を使ったカレーを作りたいので、自分が使う分プラス1缶。合計2缶は買い足しが必要だった。

そう、トマト缶に意識を持っていかれていたのだ。ひとつのことで心があふれる。集中力といえばテイがいい。モノは言いようだ。

翌日の土曜日、バックヤード(家の備蓄庫ね)を見たカミさんから指摘。
「マヨネーズ、買った?」

在庫2個のマヨネーズ。本来は在庫3個にせねばならぬ。忘れていた。マヨネーズを買うことを。

息を吸うように「ウソ」をつくとはこういうことだ

●細字部分:カミさん●太字部分:僕

「マヨネーズ、買った?」
「ん、あ?」
「マヨネーズ、あと2個だよ。買っといてくれた?」
「売り切れてたよ」
「どこで?」
「●●スーパー(グロッサリーの安い1軒目のスーパー)」
「なんで?」
「卵、足りないんじゃない。鳥インフルとかさ」
「ほう。ホンマに?」
「ホンマやで」
「鳥インフルって、最近のニュースやろ?」
「そやで」
「マヨネーズなんてもんは、そんなすぐ欠品するか?」
「とれたての卵使うからちゃうん?確か。卵不足やと作れんとか」
「で、卵、安かったってゆーてたね」
「ん、150円やったで」
「卵あるやん」
「あれか、買い占められたんちゃうかな」
「卵が?」
「マヨネーズが」
「あそこは、いつもお一人様2点までやろ?」
「大家族で買い占めたんちゃう?」
「15人家族でも30点しか買えんやん」
「ごめん。あとで買いに行くわ」

といった具合。だいぶ最初の段階で「ウソ」がバレてる。ウソでウソを重ねるともう、辻褄も道理も合わないのだ。

コッソリ雪見だいふくを食べことやら、お昼に天一に行ったこと。回転寿司で昼から豪勢に生ビールを飲んだことや、散髪で頭皮マッサージをしてもらったこと(オプションなのでお金がかかる)。

サザエさんばりの無駄遣いを、ウソでごまかしてきたけれども、きっと武士の情けってことで、目をつむってくれているカミさん。息を吸うようにウソをつく、が、息を吐くときにウソがばれる。きっと、僕のウソからはニンニクやアルコールのニオイがしているってことだ。

あとがき

先日、冷蔵庫にストックしていたおいしそうなチョコレートが無くなっていた。「食べた?」とカミさんに聞くと、「知らんで」の返事が。「食べたやろ?」としつこく聞くと、「知らんって」と。知らぬ存ぜぬで押し通す、そのスタイルに敬服した。プロのやりくちを見習わねばならない。僕はまだまだウソつきのアマチュアなのだ。

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