リフォーム前後を写真で比較1
不動産業者の方からは「中古物件を買ったけれども、何処をどういう風にリフォームをすればいいか分からない!」、一般の方からは「リフォームに興味はあるけれど、リフォーム後の姿が想像し辛くて中々踏み切れない!」という相談を頂くことが多いです。
新築(特に建売)と比べて、リフォームは何処を、どうやって、どのくらいまでリフォームすれば良いのかの「正解」がありません。
正解が無いので、担当者の経験値次第で、最終的な仕上がりや利益が大きく変動するのが「中古再販事業」を難しくしている要因です。
本記事では、実例を基に、リフォーム前後の写真を見比べながら、どういった考え方を基にこのようなリフォームを施したのかを紹介します。
また、最後に物件の仕入れ金額、リフォーム金額(見積もり公開)、販売金額、諸費用一覧などを載せますが、これは有料公開とさせて頂きます。興味のある方のみ購入ください。(一般の方はマジで参考にならないので買わないでください。)
物件概要
土地面積120㎡(36坪)、建坪80㎡(24坪)。築40年。立地は足利の中では中の下くらい。駐車場が1台しかなく、販売金額を上げることができない。(車社会の地方では一家に一台ではなく、一人一台車が必要なので、駐車場が最低でも2台、出来れば3台分は欲しい。)
駐車場が弱い物件は、とにかく販売金額を上げることができないので、シングル世帯や高齢世帯向けの物件として商品化していく。これらの世帯は多額のローンを組むことが難しかったり、現金での検討を考えていることが多いので、とにかく「値段で勝負」することを念頭にリフォーム内容を考えて行く。
外観
外観はほとんどいじっていない(残置物撤去のみ)リフォーム予算の都合で、外壁塗装はしなかった。外壁予想をしないメリットは、おおよそ60万円程リフォーム予算を下げれること。デメリットは写真映えが悪くなり、反響率が下がることである。
外壁塗装をしないことで、反響率は悪くなるのだが、意外にも案内後の成約率にはそこまで影響しない。(特に格安物件では) それはなぜかと言うと、中のリフォームがしっかりされていれば、「この値段だから外は仕方ないよね。中の水回りとかクロスがこれだけ綺麗になってれば充分」と考える人が多いからである。中古再販では外観よりも、中のリフォームを優先すべきだ。
リビング
クロスの貼替、カーペットをはぎ取りCFに変更、キッチンはマイセットを設置、照明交換を実施した。窓枠は既存、酷い場合は塗装。
サッシの交換などは中古再販ではほとんどの場合行わない。これはなぜかと言うと、サッシの交換は外壁を一部破壊しなければいけず、リフォーム費用が格段に上がるからだ。仮に一軒の建物のサッシを全て交換すると100万はリフォーム費用が上がる。かといって、じゃあ物件金額を100万上げられるインパクトがあるかというと、全くそんなことはない。大変嫌な言い方だが、中古再販は「如何に見た目を見繕うか」が肝だ。サッシの交換は見た目の改善には余り寄与しない。
また、給排水管を新品に更新することもほとんどあり得ない。断熱材もこの築年数の物件だと入っていないから断熱性能は最悪だ。でも、そんなところを改善したところで、一般客にはそのメリットが理解できない。一般客はほとんど見た目でしか物事を判断することはできない。メリットが理解できなければお金は出してくれない。だから、メリットを訴求することができない部分(物件価格に転嫁することができない)はなるべくリフォームをするべきではない。
買う側の方からすればたまったものではない考え方かもしれないが、だったら予算を上げて新築建売を買えばいいだけの話。ビジネスである以上、ボランティアではない以上、「価格に転嫁しやすいリフォーム箇所」「価格に転嫁し辛いリフォーム箇所」を分けて考える必要がある。(っていうか、全ての性能を現代レベルまで向上させるリフォームをするぐらいなら、解体して新築に立て直すほうがよっぽどコスパが良いw)
そもそもが、消費者目線から考えた時、数十年スパンでのコスパを考えた時には、「中古再販」よりも「建売新築」(例えば飯田グループとかの)を買った方が明かに良い選択だと思う。断熱性能・雨漏りや漏水のリスク・耐震性能などを考えれば、サイクルコストも含めたコスパは圧倒的に今どきの建売新築住宅に軍配が上がる。
それでも、中古再販を買う層がたくさんいる。どうしても1000万以上のローンを組めない人、10年程度しか住む予定が無い人、現金購入を希望の人などだ。そういう人たちの為に中古再販というビジネスの需要があるわけだ。
水回り
前述した「価格に転嫁しやすいリフォーム箇所」とは正にこの「水回り」の部分である。
お風呂はユニットバスじゃないと非常に売り辛くなる。トイレや洗面化粧台も新品交換するべきである。(価格に対しての費用対効果が高い)
また、可能であればだが、お風呂は1坪以上のサイズにしたい。1坪サイズと0.75坪のサイズでは一般客の反応が天と地ほど違う。「0.75坪のユニットバスじゃアパートそんなに広さが変わらないね…」と言われることが非常に多い。間取り変更が可能な配置であれば、大工工事が発生してでもなるべく1坪サイズのユニットバスを入れるべきである。
居室部分
居室部分のリフォームについては見ての通りである。クロス・襖・障子は貼替。畳も表替え。カーペットは剥ぎ取りCFに変更。天井はクロスなら貼替、ジプトーンなら既存か汚い場合はベニヤ貼り後にクロス貼り。窓枠は汚いなら塗装。サッシは当然既存。
本物件では発注ミスにより忘れてしまったが(笑)、基本的にスイッチはコスモスイッチに変更している(値段に対しての費用対効果が高い)。コンセント類も余りにも汚い場合は交換指示をしている。(クロスが新しくなってもそういうところが汚いととても目立つ)
如何でしょうか。「あれ、意外に普通だな、これなら俺にも出来そう」と思われた方も多いと思います。
実際に、私はリフォームの内容については本当に当たり前のことしかしていません。低費用で値段に転嫁しやすい工夫を!みたいなこともほとんどありません。っていうか出来ませんw
これは偏に、「私のリフォームセンスの無さ」が原因です(笑) 私の同業者には設計事務所を営みながら買取再販をしている人もいますが、その人の販売する物件はデザイン的に秀逸なものが多く、多くの建築的アプローチが加えられています。
その一方で私は、「このリフォーム箇所はこういう風にリフォームをすると、このくらいの価格を物件金額に転嫁することができるな」という、数字計算、数値化については、日本でもトップレベルの計算能力をもっている自負があります。(元々投資が趣味の人間で、リスクリターンの数値化は非常に得意です。)
デザインなど部分で差別化を図る方法、数字の計算能力のみで利益の最大化を図る方法、逆に一切のリフォームを行わず、クリーニングのみで物件を販売して利益を上げている人もいます。(そういう物件は少ないので、仕入れ機会はかなり少なくなりそうですが)
だから、「リフォームに正解はない、自分なりの手法を確立させる」ことが「中古再販業」では大事な要素になってきます。
ここからは、本物件の取得費用、諸経費、リフォーム費用(見積もり含む)、販売金額、利益を公開していきます。
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