泣き虫なあなたと結婚する
今「るいか」まで打ったら候補に「涙活」がきっちり出てきて驚いた。
市民権を得てるんだか得てないんだかわからないが、学生時代朝のニュースで知った「涙活」。サラリーマンとかがあえて泣ける映画等を見て涙を流し、ストレスを癒す活動のことだ。
へぇと思ったが、その後「涙活やってるんだ〜」などと言う人間は周囲に現れず、廃れたもんだと思ってた(が、予測変換に出てくるところを見ると語彙として定着はしてるのかもしれない)
時は流れて2021年。私の夫となる人は泣き虫である。
普段は職人気質とでも言うのか、口数が少なく感情を読み取りづらい。根はのんびり屋だが、おおらかすぎて怒りも喜びも顔に出にくい。常に凪のような人である。それが映画やアニメ鑑賞時に限っては、私の隣で嗚咽を漏らすこともしょっちゅうだ。
引き裂かれた親子の再会、挫折したスポーツ少年の再起、新入社員の奮闘、煉獄さんの生き様…とその対象は多岐にわたる。ラブコメ(ラブよりコメ要素が強いやつ)のヒロインに感情移入して泣いていた時は流石に驚いた。こんなに感受性が豊かだったとは。普段の彼からは想像もつかない。
涙活は特に男性に効果的と、冒頭のニュース番組で言っていた。普段社会的に涙が許されないからこそらしい。
そんなの社会が間違ってるけど、社会を変えるまであと何年いるんだろう。その間溜め込んで自殺にでも繋がったら最悪である。私の思う幸せな結婚生活の真逆をいく。彼は自分の持病が発覚した時も「もっと仕事したいのに」と呟いたので、簡単に過労するだろうし。
泣きたい時に泣ける癖があれば、紙一重で救うことができるかもしれない。
一度だけ「男らしくないかな」と聞かれたことがある。あまりにも自然に泣くので彼自身体裁は気にしていないのだろうと思っていた。それこそ涙活のようにストレスがきっかけではなく、本当に感情を動かされて泣いてるようだったから。事実、この時もふと気になっただけのようだったので、私も「全然!」と返して終わった。
私は彼が泣いてくれる方がうれしい。私自身作品に心を大きく動かされるのは大好きだし、それを身近な人に共有したい欲も強い。ちなみに私も彼と同じくらい頻繁に泣く。
同じ作品で涙を流したからと言って、同じ景色を見ているわけではもちろんないけど、なにが心に響いたのかを知り、「そういう見方もあるのか」と発見できること自体が大きな喜びになる。そしてその喜びは、いつかその人への愛情に変わりうると予感している。恥ずかしいなあ、でも本当。
彼は、映画鬼滅の刃で、炭治郎が敵から弱いと評された時、煉獄さんが即座に「弱くない」と否定したシーンについて「あれはフォローじゃなくて、本心だったんだと思う。体の弱い母から強さを学んだ煉獄さんは、肉体の強さだけを信じる考えとは真逆にいたはずだから」と言った。私はそういう風に丁寧に理解した上で、泣いている彼を見て、結婚したいなあと思ったのだ。
結婚するなら、泣き虫な人。付き合う前は全然意識もしていなかったけど、かっこつけず、素直にアニメで泣いてる彼を見る度、そう思う。
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