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世界遺産検定とは? 魅力や勉強方法などについて解説します

歴史的建造物や雄大な自然環境など、後世に残さなくてはいけない世界共通の財産が『世界遺産』と認定されています。
その世界遺産を通して、歴史や建築、宗教、果ては絶滅危惧種等の教養を持つ人材になることを目標として設立されたのが世界遺産検定です。
今回はこの世界遺産の魅力や世界遺産検定の勉強方法など、世界遺産検定1級保持者である私から丁寧に適度な熱量で解説いたします。


・世界遺産とは

まず、世界遺産とはユネスコ(UNESCO)が制定した世界遺産条約に基づいて、世界遺産リストに登録されたものをいいます。
年1回、世界遺産委員会による審議が行われ、新規登録や登録済の遺産についての現況なども報告されます。
登録されるためにはいくつもの条件があります。不動産であること、顕著な普遍的な価値を持つこと、が大前提です。

現在、全世界では1,199件が登録されており、日本のものは25件あります。みなさまはいくつくらい頭に浮かぶでしょうか?

以下に代表的なものをジャンルと合わせてあげていきます。

  • 宗教建築:法隆寺、アテナイのアクロポリス(ギリシャ、パルテノン神殿)

  • 城郭:姫路城、スオメンリンナの要塞(フィンランド)

  • 近代建築:国立西洋美術館、オペラハウス(オーストラリア)

  • 原生林:白神山地、ビャウォヴィエジャの森(ポーランド、ベラルーシ)

  • 海関連:知床、パパハナウモクアケア(アメリカ、ハワイ)

  • 山関連:屋久島、サガルマータ国立公園(ネパール、エベレスト)

・世界遺産の魅力

魅力を語る上でのキーワードは『後世に残すべき』と『顕著な普遍的価値』です。
それぞれ簡潔に述べます。

【後世に残すべき】
その時の人間が何を考え、どのように生きていたのか。ある国がどのように発展をとげてきたのか。
これらを学ぶためには歴史を知る必要があります。建築物の構造や自然とどう向き合ってきたのか、過去の知識を得ることは未来への礎となります。

【顕著な普遍的価値】
上記の価値ある遺産が、多くの人たちの努力によってそのまま残されています。
当時の技術や考え方を継承し修復され、何百年以上も保全されていることから人間の偉大さを感じとれるのではないでしょうか。

世界遺産条約ができる契機の一つにアブ・シンベル神殿(エジプト)の移築工事があります。
これは、ダム建設によって遺跡が水没の危機にあったため、日本を含めた多くの国が合同で行った事業です。
幅38メートル、高さ33メートルという規模の遺跡を細かく分割してそっくり  そのまま違う場所まで移動させる、という例をみないものでした。
普遍的価値のある遺跡を後世に残すために多くの人々が協力する、という世界遺産を代表するエピソードです。日本人も深く関わっていますので、ぜひお時間のある方は調べてみてください。

・世界遺産検定とは

NPO法人世界遺産アカデミーによって2006年から始められました。今では文部科学省の後援もつき、履歴書にも記載できる資格です。
クイズ番組などで世界遺産検定を所持している芸能人も多くみられるようになりました。
概要を表に示します。


2024年4月現在
受験料は公開会場試験の場合

まず、マイスターが一線を画していることがおわかりいただけると思います。マイスター受験のためには1級認定が、1級・準1級受験のためには2級認定がそれぞれ必要です。
2級以下は年4回行われていますが、準1級以上は年2回です。また、マイスター以外はCBT試験方式でも行われています。

・合格するための勉強方法

誰でも受験でき、かつ、少々難易度の高い2級を中心に説明します。
2級の出題範囲は世界遺産の基礎知識、日本の全遺産、主要な世界の遺産300件です。
それぞれの出題比率を見てみましょう。

  • 世界遺産の基礎知識:20%

  • 日本の世界遺産:25%

  • 世界の自然遺産:10%

  • 世界の文化遺産:35%

  • その他:10%

一番配点が高いのは世界の文化遺産(35%)ですが、登録されている文化遺産の割合は全体の約80%なので、対象の遺産は240件ほどとなります。240件を完璧に頭に入れても35点しかとれません。
それに対し、日本の世界遺産は25件で25%です。身近にあるものですし、まずはこれを全部頭に入れましょう。
また、基礎知識は頻出問題が多くあります。ここがしっかりできていると次の準1級や1級を受ける際にもとても役立ちます。

そして、肝心の勉強法ですが、もちろん『公式テキスト』を利用しましょう。公式テキストから8割以上出題される、と公式HPでも言及されています。
公式テキストに記載されている中でも赤字太字は出題ポイントなので、重点的に覚えましょう。

世界の遺産はもちろん世界中に点在しジャンルも様々あります。一度にすべてを覚えるのは難しいので、興味のあるジャンルから始めていくことをおすすめします。
キリスト教建築、近代建築、美しい景観などテキストではジャンルごとにまとめて掲載されているので、気になるところからページをめくってみてください。

その他は時事問題です。直近で起こった出来事などから出題されます。
普段から世界遺産のニュースをチェックしておきましょう。

・検定を受けるメリット

仕事や学業で役立ちます。
履歴書にも書けますし、進学時の自己アピールにも使えるようです。
観光業であれば客への説明に説得力が増しますし、教職であれば授業のあり方に幅を持たせることもできるかもしれません。

しかし、それ以上に見識が広がること、知識が深まることがものすごく楽しいです。
国立西洋美術館で近代建築の五原則を感じる。屋久島では植物の垂直分布を観察する。何の知識もなく訪れるより得られるものは格段に多くなります。同行者にも重宝されますよ。

直近の試験は7月7日に行われます。申し込みの締め切りは5月16日です。
ぜひ試験を通して世界遺産の魅力を体感しましょう。

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