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匂い。

匂いを嗅ぐのがとても好き。
空気の匂いも人の匂いもタオルの匂いも、匂いというもの全てを無意識のうちに嗅いでしまう。

最近気になる匂いがあり、ふと嗅いでる自分に我を取り戻した。
匂いってとても不思議だ。
匂いと共に映像の記憶も起こしてくれる。
懐かしい匂いは懐かしい映像と、きっと初めての匂いにはその瞬間の映像がしっかりと記録されていくのだろう。

私の幼馴染は、唯一の匂いを持っていた。
これまで、似たような匂いを持つ人には出会ったことがない。
鼻にツーンと少し刺激的なのに甘めの匂いで、主張の激しい香り。
その匂いがとても好きで、色々探してみたけれど見つけられなかった香り。

最近、駅の近くで似たような匂いを持つ人とよくすれ違う。
もしかして幼馴染が近くにいるのかと思って探してみたけれど、どこにも姿が見当たらない。
誰が、あの探し続けた唯一の匂いを持っているのか気になって仕方がない。

全然会えていない幼馴染なのに、その匂いを嗅いだ瞬間、一瞬で私の頭は幼馴染でいっぱいになった。
いつの日か、どうしてもその香りが欲しくて、どこに売っているのか、なんの匂いなのか聞いたことがあった。

すると、苦笑いをしながら
「これは、おばあちゃんがよく焚いているアロマの香りだと思う。自分もおばあちゃんに何の香りなのか聞いたことがあるけど、思い出の香りとしか教えてもらえないの。」
と、残念そうに言っていたのを思い出す。

この香りと幼馴染との沢山の思い出。
駅であの香りとすれ違うたび、懐かしくて優しい気持ちになる。

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