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それでも生きる(プロローグ)

 「自分が生きてきた人生の経験が誰かの力になれるなら」
 そんな思いで、自叙伝を書き始めようと思う。
 自分は学業や仕事で飛び抜けた実績を残してきた訳ではない。秀でた才能がある訳でもない。
 そもそも、人は生きているだけで、誰かの力になっているはずで、「自分の人生の経験が特別だから、誰かの力になれるように自叙伝を書いてみよう」なんていうのは、おこがましい考え方なのかもしれない。
 それでも、今まで出会ってきた人達から背中を押され、自分の半生を書いてみる事にした。

 お金がない事から、中学生の頃から働き始め、19歳の時に事故で右手前腕を失った。
 その後、右手前腕を失う事よりも更に厳しい現実が、何度も自分の人生に立ちはだかった。
 それでも、今、自分は生きている。

 そんな自分の体験談を、精神的な病を抱える人に話す機会が何度かあった。
 その結果、6名が病を完治させ、今ではまったく病院に通わなくなった。
 また、その6名とは別に、7名が病院に通院中ではあるが、仕事に就くところまで回復した。

 自分の体験談が回復に役立った確証はないし、精神科の医師の力によってほぼ回復していたタイミングで、たまたま自分が関わっただけなのかもしれない。

 ただ、わずかな確率でも、誰かが生きるための力添えとなるのであれば、自分の体験談を書いてみようと思う。

 今、悲しい現実の前に立ち尽くしている人がいるなら、伝えたい。

 「生きているだけでいい」

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