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【映画感想】地獄の花園/脚本・バカリズム 監督・関和亮

気質のせいなのか、1から小説を書こうとすると瀕死の魚が泳いでいる、青LEDで照らされている水槽みたいな話ばかり思い浮かぶが、実のところわたしは、HiGH&LOWや、「TOKYO TRIBE」のような、ギラギラバリバリ喧嘩アクションエンタメ映画がかなり好きなのである。

というのも、幼少の頃から年の離れた兄たちの「特撮好き」により英才教育を受けてきたので、組手や大人数のアクションシーンは見るとアガるのだ。最高〜!!!!
(なぜ作品にフィードバックできないんだろう?)

ヤンキー喧嘩映画の良さはバチバチの男たちの、喧嘩の強さではかる漢気やチームのプライドなどの暑苦しく、むさ苦しくも純粋な暴力の美しさ、その熱量を浴びることである。泥のような画面の暗さの中で見る眩い太陽のようだ。

もちろん現実の暴力は推奨はしないが、フィクションの暴力は観客のボルテージを上げるプロレスと同じように、美しいのである。

昨今「東京リベンジャーズ」が流行っていることで、ヤンキーもの、喧嘩ものの熱が来ているのか!?!となっている。

喧嘩の泥臭さ+アクション、ビジュアルのスタイリッシュさが、今の喧嘩ジャンル(?)にきているのでは!?と思ったが、昔からヤンキーのビジュアルは尖っていてかっこいいのだ。映画「クローズ」や「ガチバン」とか。(実はシリーズが多くて観れてはいないが、ジャケがかっこいいのは確か。見るよ……)

喧嘩シーンがメインのアクション映画というと、登場人物が大半男のものが多いイメージがある。

と思っていたら、女性版のクローズ 「クローズLADIES」があるんですね。

昨今女性ライダーも増えてきているし、女性殴り合い映画、見てえなあ!!!

ツー事で、「地獄の花園」見たよ!

という話をします。


以下、ネタバレに触れる部分は有料にするつもりだが、無料もちょっと触れるかもしれない。

地獄の花園 あらすじ

平凡なOL・田中直子の職場は、裏では社内の派閥争いを賭けたヤンキーOLたちによる喧嘩が日々勃発していた。ある日、中途採用された元カリスマヤンキーのOL・北条蘭は圧倒的な喧嘩の強さから、たちまち会社のトップに立つ。これをきっかけに、全国のヤンキーOLたちが直子の会社に集っていく。
(Wikipedia)

地獄の花園は気にはなっていたものの、どうだろうなあ、という気持ちだった。

バカリズムにハズレなし、と個人的には思っているが、OLが喧嘩をする、というのはいまいちピンと来ていなかった、というのと、自分で見ると決めた邦画でとんでもねえハズレを引いた(個人の感想です)ので、映画館から足が遠のいていたのだ。

で、しばらく配信漬けになっていたが、久々にレンタル屋に足を運び新作準新作を借りて気になっていたものを見ると、ハズレなかった。面白かった。(「キャラクター」、「哀愁しんでれら」見ました。)ので、嗅覚は多分戻っているはずだと思い、最新作7泊8日になっていた地獄の花園を見ることにした。


個人的な全体の感想は、

・「喧嘩映画の文脈を守っていて、なおかつヒューマンドラマも感じるコメディ映画」
・みんなのビジュアルがいい
・ライダーVシネだ!

という感じ。

率直に言って、満足。文句なしに面白かった。

・「喧嘩映画の文脈を守っていて、なおかつヒューマンドラマも感じるコメディ映画」

「OLあるある」と、主演永野芽郁ちゃんのメタ視点で、ヤンキー作品を見ない層でも「ヤンキーものあるある」が理解できるし、言語化が出来ていなかった感覚を言葉にされることで「痒い所に手が届く」笑いになっている。

「ヤンキーものあるある」いわゆる「お約束」を果たしつつも、メタ的な視点で冷静に見ている直子がいること、インパクトある見た目のOLたちの「OLあるある」が挟まれることで、「ああ、そういえばこの人たちOLなんだ」とヤンキーの世界からふと我に帰る瞬間がある。「OLが拳で抗争をする」という一見飲み込めない状況を理解するのが早い人間で、なおかつヤンキー作品が好きな人にとってはそれが物足りない部分でもあるだろう。

だが多分、本作は「ヤンキー作品」ではなく、どっぷりヤンキー抗争あるある展開を描きつつも、一般向けコメディなのだ。

本作は102分と短いながら、様々濃すぎる絵面と展開が詰まっている。逆に全て「ヤンキーものあるある」で埋め尽くされてしまっていたら、「もういい!お腹いっぱい!!」となりかねない。胃もたれのしない絶妙なバランスだ。

それに、コメディでありながら、人間の心情を絶妙にグチャらせるのだ。この作品は。

その話はネタバレにもなるので、有料部分で語る。


・みんなのビジュアルがいい

とにかくキャラが強い。
「より強い」というのがビジュアルで理解できること、これは漫画や映画、舞台など(文章でもそうだとは思うが)視覚的作品に置いてかなり重要だと思う。「地獄の花園」も漏れず、主要キャストはビジュアルが強い。

特に悪魔OLの安藤朱里(コーンロウ姿の菜々緒様)、地上最強のOL鬼丸麗奈(神々しいレベルの白!眉なし!!小池栄子様)のビジュアルが大好き。ここHiGH&LOWだろ。

あとエンケンさんの女装すごいです。ガーターベルトやぞ!!!!勝村さんの女装は、これナポレオンじゃね……?いや第一印象ナポレオンだろこれ……と思ったが、どうなんだ?ペリー? 多分ナポレオン。歴史的な人物の見た目が多分元ネタになってる……とは思う。有識者に任せる。小ネタが面白い。


・ライダーVシネだ!

今まで見てきた喧嘩ものは、画面が暗いことが多かったのだが、「地獄の花園」は明るめの画面が多い。少しネタバレに触れるが、クライマックスのシーンで水飛沫の中スローモーションの殴り合いがある。

この絵面既視感ある……と思っていたら、これ仮面ライダーのVシネでよく見るやつだ!と気づいた瞬間最高に面白くなった。

関監督はwikiで見るとミュージックビデオを多く制作されているらしい。魅せる絵を作るのがとにかくうまいな、と思った。


ほか感想

・アクションがいい
広瀬アリスちゃんの演じる中途採用のカリスマOL北条蘭アクションシーンが最高にいいです。動きのキレも最高にいいんですが、アクションの受けがめちゃくちゃ上手いんですよ。映画なんでスタントマンさんがいるのかどうかってなあるかと思うんですけど、とにかくダントツでいい。強い。

・目に見える強さの爽やかさ
 喧嘩ものは可視化された強さで生まれる絆や信頼が爽やかでいい。今までOLものというと、女子同士のドロドロ、陰険、みたいなイメージが強くて、あまり見てこなかった。(見ないで言うなと言うところでもあるが)(でもファーストクラスとか好きです)
それが推し!と言う最高の作品もある。だがまだ自分の中の古い人間の思想が抜けてないのか、女同士の対立=ドロドロみたいなのを感じてしまう。

(ていうか、男同士だってドロドロするよな……? 半沢直樹なんて陰謀絡みまくりだしな)

だが殴り合いは至極単純で、強い奴が上に立つ。それだけなのである。

殴って、殴られ、互いの強さを知る。なんて爽やかなんだ。もはやスポーツである。

喧嘩はシンプルだからこそ、キャラクターの心情が映える。
その点は有料部分の主演永野芽郁演じる田中直子と、もう一人の主要人物、広瀬アリス演じる北条蘭について語っていこうと思う(主に北条蘭)。

まとめ

「地獄の花園」はヤンキーものあるあるとOLあるあるがふんだんに盛り込まれているコメディである。キャストの奇抜なビジュアルやアクション、役者のドスのきいた啖呵と暴言の台詞回しに特撮好きとドM心を激らせる映画である。

そして「コメディ」だけには収まらない、と感じたもっとコアな個人的感想もある。

先に一つだけ言っておくと、これがただの「ヤンキーあるあるとOLあるあるが入った、奇抜な装いのキャスト陣たちがすごいアクションで魅せるコメディ映画」と言うだけだったら、わたしはこの記事を書かなかった


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