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塩野秋
2021年8月24日 23:18
ある豊かな国で、王子様の婚礼が行われた。 王子は親族の若者たちの中で、最も結婚が遅く多くの民から心配されていた。 これで安心国も世継ぎも安泰だと、民衆は喜んだが、だれもその妃を見たことがない。それだけが気がかりであったが、偉い人間の顔など、誰も覚えてはいないので、大した問題にはならず、かわりに「どんな美しい人なのだろう」と空想論議が多く交わされた。「きっと雪のように肌が白く、絹のような髪の