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塩野秋
2019年8月31日 21:13
風の街 むかしむかし、あるところに少年がおりました。 そこは寂れた場所で、見えるものといえば風化した白い壁、屋根のない家、誰もいない通り道、死にたくなるような青空だけでした。 その街はなにもなく開けた場所でしたが、風は吹き抜けませんでした。 少年は毎日、ぼろぼろになった壁の縁に座り、雲のない空を見上げていました。うっすらとでも雲が見えれば、風が吹いているかどうかを見定めることができるか