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「クソババア」の復讐


小学5年生の頃の話。

私立の小学校に通っていた俺は、

毎日、母親にお弁当を作ってもらっていた。



毎日、お弁当を作ってもらう・・・



大人になった今思えば、

なんてありがたい話だろうか。

しかし当時の俺は、反抗期真っ只中。

親への感謝など微塵もなかった。

そこにどれだけの「愛」があったのか、

全く理解していなかった。


ある日の朝、

内容は忘れたけど、

些細なことで母親と大喧嘩をした。

確か俺が何か悪いことをしたのだと思う。


なんであれ、とにかくムカついた俺は

家を出るときに

「クソババア!ゴリラババア!」

とよくわからないことを叫んで家を出た。


夕方、学校が終わり、友達と別れ、

「家に帰ったら怒られるだろうな」

などと思いつつ、

憂鬱な気分で帰路に着いた。


家につき、玄関を開けると、

母親は夕食の準備をしていた。


怒られると思っていたら、

母親はいつものように「おかえり」と言い、

たわいもない話をしてきた。


それどころか、その日の夕食は、

俺の大好きな

ブロッコリーがたくさん入ったカレーだった。


「なんだ、何も気にしてないのか」

と思いホッとした。

大好きなブロッコリーカレーを

作ってくれたことに感謝すべきところだが、

感謝など全くできないのが、

反抗期真っ只中の俺だ。


「たぶん、このゴリラババアは

あまり賢くないから、

半日も前のことなんて覚えてないんだろうな」

などと、心の中で母親を

「やはりアホゴリラだ」と確信し、

ニヤッと笑った。


次の日の朝、いつものように

慌ただしく学校へ行く準備をしていると、

母親もいつものように

お弁当をテーブルの上に置いた。


そのお弁当を

カバンに入れようと手に持った時、

なんとなく軽いような気がした。


しかし、駅まで走らなければいけないくらい

電車の時間が迫っていたので、

とにかくそれをカバンに突っ込み、

駅に走った。


学校に着く頃には、

お弁当のことなどすっかり忘れ、

友達とどうでもいい話をしたり、

午前中の授業を聞いたり聞かなかったりして、

いつものように昼休みの時間を迎えた。



俺はお腹が空いていたので、

昼休みが来るや否や、

勢いよくカバンからお弁当を取り出したのだが、

その瞬間、

今朝感じた違和感のことを思い出した。




やはり、軽い。





カラではない。





それはわかる。





しかし、軽い。





「一体、今日のお弁当はなんなんだ・・・」





ちょっと不安な気持ちで、

弁当袋の結び目をほどいた。




2段弁当の1段目と2段目を分離し、

いい感じの距離感で

左右に並べた。




そしてそれぞれの蓋を同時に

パカっと開けると・・・





そこにはバナナが1本ずつ入っていた。








「誰がゴリラやねん」



気づいた時には口からこのツッコミが出ていた。




後から知ったのが、

バナナはもちろん、ブロッコリーも

ゴリラの好物らしい。



アホゴリラは俺の方だった。

ゴリラの子はゴリラだった。


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