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子猫保護の記録(2)里親に渡すまで

知人のおかげで子猫の譲渡先が避妊手術後すぐ見つかりました。ですが子猫の事よりもその後の人間関係が大変だったので記そうと思います。

1 里親探しの第三者介入

私は猫を保護する事は初めてでしたが動物愛護管理法の事は知っていますしそれにかかるトラブルや判例も見ています。なので人間の勝手な都合で動物の命を受け渡すことにとても抵抗があります。私の行為も含めてです。
特に今回の子猫はケガをしています。正直なかなか里親が見つからないと思ったのと、知人の熱心な保護猫活動にも感心していたので知人を信頼して里親探しに協力してもらいました。病院に連れていくときも付き添ってもらったり、ケージや世話道具一式も貸していただいたので、猫のために一生懸命な人なのだなと思いました。飼育のアドバイスやシャンプーまでしていただいて、お礼も受け取ってくださらなかった。ツテのない私にとっては本当に神様のようでした。ありがたい気持ちで心が温かくなりました。なので知人が紹介してくれた里親はてっきり自分の思い通りの方だと思い込んでいました。それがいちばん大きい私の今回の反省点でした。


私が知人に伝えていた里親の条件は以下の通りです。
・単独飼育
・終生室内飼養
・子どもが大きい家庭、もしくはディンクスで一軒家
・家族として可愛がってくれる方

知人からの里親候補の方の情報は
・高校生の子どもがいるみんながお世話できる家庭
・数か月前に猫を亡くし、縁を感じた
・猫の道具が一切揃っている


でした。この情報だけだと私が思う理想の里親だと思いました。しかし情報が少なすぎる点(デメリットの話がなかった)と「子猫だから」「五か月だから」と知人が急かしてきた点で直感的に嫌な予感がして直接交渉をしたいと知人に申し出ました。
その時すでに隣人家族も里親を申し出ていてトライアルをする予定でした。ですが子どもが小さい事や粗暴(子どもだから扱い方がわからない)等話すと知人は「そんな家庭に里親になってほしくない、トライアルも猫の負担が大きすぎる」などと批判的で自分の紹介した里親に渡したほうがいい、とアドバイス?いただきました。里親になりたいとおっしゃっている方からの申し出はご縁だから、繋がりだからと。でもトライアルで家族との相性をみてもらうのが猫にとっても安心して住める場所を見つけられるのではないでしょうか?先にトライアルの申し出をしてもらったのも隣人家族です。隣人家族も保護するために毎日餌をやってくれたり、遊んであげたりと人馴れをするよう協力してくれたのです。それも伝えたつもりでしたが話がかみ合わなくなってきたので「おかしいな?」と思い始めました。
隣人の子ども達も自分たちの日々の生活を見直して、保護猫を飼うために準備を整えていこうとしていたところでした。ですが急かされた結果、もう一方の里親候補の方の家庭環境が保護猫にとって幸せだろうと言って隣人家族は里親をあきらめました。子どもたちは夜中まで泣き腫らし、次の日は目が真っ赤に腫れたまま登校していきました。

そして里親になる方と直接交渉をするため連絡をとりました。亡くなった猫の淋しさからまだ傷が癒えていない感じでしたが物腰のやさしい、猫が大好きで仕方ないといった方でした。
条件がたとえ違っていても、この方なら終生大事にしてくれると感じました。
ですがこれまでに伺っている情報を確認したところ「何もしらない」との事。鳥よけネットを切ったことしか聞いてないとの事でした。足の骨折は全く知りませんでした。
知人は慌てて友人に電話したらしき後、私に連絡してきました。
「足が折れているからと言って引き取らない、とか言うような方ではないですよ。」
と付け加えてきました。しかしハンデを持つ子どもを育てている私にとって一番最初に伝えてほしかった重要事項でした。
この時点で知人は元親の私、里親の両方に保護猫のいいところだけ話していることが浮き彫りになりました。


(間に入る人が正しい情報を伝えないと必ず人間関係はこじれて信頼が失われます。今の世の中でもそうですよね?マスコミも自分たちの私見ばかり、いいところばかりをニュースにして悪いニュースは自分たちが批判したいと思ったことだけ。)


ちょっと話がそれましたが(笑)
そして新たに直接聞いた情報によると
・子どもは高校生と小学生の二人(小さい子がいる)
・三頭目が病気で亡くなった(多頭飼い)
・遠方(車で一時間以上)
・平日は仕事でいない


先述した知人からの情報と合わせて見ても、私の思っていた里親とは違っていました。そうですよね、知人に伝えてほしかった情報が里親候補の方に何一つ伝わっていなかったのですから。逆もありなむです。
保護した子猫はとても寂しがりやで臆病です。人間にはとてもなついていて甘えてきますが他の猫を見ると「ふー!」っと強い威嚇が出ます。なので多頭飼いに向いていない事も、淋しがり屋なので誰かが常に在宅している家庭にお渡ししたい旨は知人に話したつもりでしたが里親には全く伝わってなかった。知人は「私は伝えた」と言って押し通しました。でも自分が「伝えた」と言っていても相手に伝わってなければ「伝えてない」のと同じなんですよね。
そして例のごとく「言った」「言わない」の水掛け論がはじまるのです。
人が間に立つとよくある諍いです。なのでこの辺は上手にかわそうと思いました。交渉前に違和感があったにも関わらず交渉を進めてしまった私にも猫に対して大変大きな落ち度があると思いました。それと今後のトラブルを絶対的に予防するため譲渡契約書を作ることにしました。

2 譲渡契約書

まず皆さんに知っていただきたいことがあります。


譲渡契約書を取り交わさない動物のやり取りは「動物虐待」です。

これから保護猫を譲渡する方は簡易でもいいので契約書を取り交わしてください。お願いします。


「ご縁があったから」「つながりがあったから」などと、動物の命を担保できないあいまいな言葉で動物の命のやり取りをしないでいただきたい。そんなの保護猫活動でも何でもないです。保護猫活動をしているという自分に酔っているとしか思えない。たとえ気の置けない親友同士であってもです。


知人に「譲渡契約書作ったの?なんか不満でも?」
と言われました。

野良猫は飼養放棄されたものも含め無主物(誰のものでもない)になります。無主物先占(先に所有権を主張する)から所有権を明らかにして、移譲する形でお渡しすれば無主物でなくなります。

これは里親さんの飼育方法や飼育環境が適切か否かや、信用の有無など人間都合の問題ではありません。(そういったケースもありますが、私の場合は違います)譲渡契約書を作成し所有権を移譲する形で取引をすることで可能性がゼロとは言い切れない事故や災害時に人間が最後まで猫の命を責任をもって守るためです。

例えば、の話をすればきりがありませんが。
自分の元から離れていく輸送中の時間であっても、全く予知も想像もできないトラブルが起きてしまい譲受人がやむなく所有権を戻すことになった場合元親である私に猫の命の責任が生じるということです。
譲渡契約書を提案し、譲受人の方にも作成に協力していただいた際
「譲受人がやむを得ず猫を返還する場合、避妊手術代等のお金は全額返金します。」という文言を入れようとしたら
「そのような絶対そんなことはありません!」
と感情的におっしゃって下さいました。保護した当初、避妊費用も全額私が負担するつもりだったのでただ猫を慈しむ方に引き取ってくだされば、と思っていました。しかし知人が
「避妊費用は飼う人が全額払うべきでは?」
と言っていたことを思い出しました。全額払っていただくのは他の病院と比べ高い手術代で金額が大きすぎるので里親さんと折半する形にしました。そしてもし里親さんが猫を飼えなくなってしまった場合の状況を推測すると経済的にも困難な状況であることが多いと考えました。そこで猫を返還していただいたら避妊費用も里親にお返ししようと思いました。そのほうが里親さんにも将来的な負担が少ないと配慮したつもりでした。
でも
「それはないから必要ないです。猫は大事な私達の家族なんです!わかりますよね?」

と突っぱねられました。少し困惑しました。まだこの猫はうちにいます。。。。
家族が嫁ぐとき、もしかして感情的に動く方達は婚姻届を出さず
「娘ちゃん、いい人見つかって良かったねー!じゃー娘はこちらになります、ハイどうぞ!」
と言う人達なのかな。。とか(笑)よぎってしまいました。そんなわけないと思いますが。

と言うかそこの話ではないんです。
そもそも論点が違います。

猫の命の責任の所在を明確にするのは人間の義務です。それが動物愛護管理法のベースになっています。

知人も里親さんも猫のことになると客観的に物事が見れなくなる様子がわかりました。
人間の感情で動物の命が左右されることほど怖いものはない。
譲渡契約書を作っておいてよかったと思った瞬間でした。

とは言ってもハンデのある子なのに縁を感じて引き受けてくださっているにもかかわらず譲渡契約書とか大層なものまで付けてしまったことを少し後悔もしました。

しかし動物であっても命の重さは人間と同じです。万全の形で守ることは当然だと思います。これは揺るがない。

私はこれまで人間が動物の命の所在をうやむやにしてきたこと、人間の勝手な命のやりとりのせいで猫の繁殖過多と無用な殺生が繰り返されてきたと思っています。


人間にかかわるすべての動物が終生安心して暮らせるように人間の世界でも確実に命を担保するために法律ができています。
どうしてもどうしても飼ってあげれない、本当に申し訳ない私にとって保護猫にできる最大限の命の保証なのです。


同時に所有権を取得した里親さん(譲受人)の権利を守るものでもあります。

・元親と譲渡契約書を交わさず猫を引き取った後、「やっぱり飼いたいから猫を返してほしい」と言われて拒否したら泥棒扱いされて警察に通報された
・民事訴訟で損害賠償請求をされた
・元親から「飼育環境の様子をみていたが不適切だから返還してくれ」と言われた。でも譲渡時に負担した費用は一切返せないとごねられたうえ内容証明が届いた

上記のような里親トラブルもネットや判例集などでよく見かけます。上の二つは譲渡契約書を交わしていない事もトラブルの要因となっています。でもこんな時一番の犠牲になるのは、里親や元親を含める「人間の時間」ではなく「猫の命」です。
こんなくだらない人間同士の勝手なトラブルに時間をさく余裕があったら里親さんに一分でも長く猫と過ごしてもらいたい。
そんな里親さんへの配慮も含めて作成しました。
里親さんは譲渡契約書の作成に直接関わって同意していただいたので理解していただいていると思っています。


3 まとめ(長いのでこれ読めばOK)


長々書きましたが保護猫を里親に出すための要点をまとめると

・保護猫を里親に出すときは里親が自分の知り合いでも譲渡契約書を作成する。

・譲渡契約書の内容を里親と事前に打ち合わせながら合同で作成すること。(こんな条件聞いてない、一方的過ぎる、厳しすぎるので里親候補から降りますといったトラブルを防ぐため)

・元親と里親の間に仲介を介入させない。(必ずトラブルになります。)

・里親の飼育環境等を直接聞いてから譲渡の意思を示す。仲介からの話は信用しない。

・里親になる方、ご面倒をおかけした方には誠心誠意対応する。


この4つが大事だと思いました。
まだまだ路頭に迷っている猫たちがいますが、私がもし保護するようなことがあったらこの経験を活かして対応していこうと思います。



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