ご当地マグネットジオグラフィック①国内編
名所旧跡、観光施設をモチーフにしたご当地マグネットが多い中、風光明媚、雄大な自然を描いたものをいくつか採り上げてみます。
知床
「北海道の上唇」に当たる場所。実際目にするのはなかなかハードルが高い、上空からの知床半島です。最近はドローンも普及して、こういう視点の参考写真資料も多くなっているからと思います。
東側上空から半島の根元方向を見下ろした景色です。元々は東側にちょこんと突き出た岬だけの地名だったのが、現在は広く半島全体の名称になりました。
プレート運動、火山活動、海食などの地形形成作用により造成されていることから、奇岩や崖、火山などの多様な景観が形成されていて、植生や動物や海洋生物の多様性にも富んだ地域。
知床五湖やオシンコシンの滝は、いずれも知床半島北側中ほどにある景勝地です。
知床というのは宛て字で、名称はアイヌ語の「シリ・エトク=陸が突き出た所=岬」から来ているので、知床岬というと「みさき岬」ですね。韓国料理のチゲ鍋が「なべ鍋」になっちゃってる感じと一緒。
函館山展望台からの函館100万ドルの夜景マグネット。
函館のあまりに有名な光景です。夜景はさすがにマグネットより写真の方が再現度が高い気が。
SNSでは、
“この夜景に写る、両側が海でくびれた部分が北海道の「把手」のところ(渡島半島)と勘違いしている人が多い“
というネタが時々バズっていますね。
昭和新山も、ひょっとしたら勘違いされているかもしれません。昭和新山は、洞爺湖の真ん中にぽっこり顔を出した山ではありません。南側湖畔にあるのが昭和新山。
噴火が起こり隆起が始まったのが戦前1943年、落ち着いたのが1945年になります。農地のある集落、胆振線を破壊しながら出来上がりました。なお、火山としては珍しく、三松さんという方が所有する私有地内にあります。
ちなみにこの洞爺湖マグネットは、盛大に噴煙を吐く火山が描かれていますが、多分傍らにある有珠山が2000年に大噴火した24年前の光景なのではないかと思います。
層雲峡は、石狩川を挟んで24km続く大雪山黒岳山麓の峡谷。昭和新山が噴火により2年程度と短期間で造成されたのに対し、この層雲峡は、3万年前に噴火した大雪山の麓で、長期間じわじわ侵食されてできた谷になります。ちなみに、命名したのは高知県出身の旅好きな詩人、大町桂月という方でした。
「柱状節理世界三大絶勝」とやらの1つに数えられる、福井県の景勝地東尋坊のマグネットです。サスペンスドラマのロケ地としても有名。
柱状節理というのは噴出した熔岩が冷えて固まるときに収縮してできる、五角形や六角形の柱状の割れ目のことです。東尋坊のはこれまた桁違いに遠い昔、約1200万年前に噴出した熔岩が冷え固まり、ひび割れてできたもの。じわじわ波によって削られ今の断崖絶壁の状態になりました。
伊豆半島の伊東にある独立峰、4,000年前の噴火でできた大室山です。近くまで行くと、まるで人工物かのようなつるんと草に覆われた巨大な円錐が出現して、なかなかエモい山です。
草しか生えていない理由は、700年前から年に1回の山焼きが続けられているためです。もともとは江戸にも出荷する良質の萱を栽培するためでしたが、昭和30年代に近隣の観光施設伊豆シャボテン公園が観光行事として引き継ぎ、さらに昭和55年からは山焼保存会が結成され主催しています。山焼きは2月に行われ、なんと15分間くらいで一気に焼き上げられるそうです。登山リフトも45分程度しか運休しないとか。
山頂から降りられるすり鉢状の火口はアーチェリー場になっていて、アーチェリー体験ができるのがオツ。このマグネットは山頂売店でしか売っていないのがウリで、500円のマグネットを買うためには1,000円のリフト料金が必要。
こうして何箇所かの景勝地マグネットを説明してゆくと、日本はつくづく火山国だなと実感します。この箱根山もまた火山(群)です。40万年前の噴火でできたカルデラで、今でも箱根大涌谷では火山ガスを噴出しているのはよく知られてます。芦ノ湖はカルデラ湖。
箱根の山は「天下の剣」と言われるように険しく、また江戸時代には東海道の関所も設けられた難所だったのは有名ですが、平安時代初期までは交通の要衝ではありませんでした。西暦800〜802年の富士山大噴火で、それまで東西移動のメインルートだった足柄峠が通行できなくなり、仕方なく迂回路として整備されたのが箱根峠です。そのおかげで温泉街が発展しました。箱根駅伝が今の形であるのも、富士山大噴火のおかげなんですね。
日光連山の代表的な山、男体山と、中禅寺湖のマグネットです。山があって湖があってということはまた火山と火口湖なのかと思いきや、そうではありません。
男体山が火山であり、7,000年前にも噴火した形跡があるのは間違いありません。しかし中禅寺湖ができたのは、流出した熔岩が湯川を堰き止めてしまったことが理由です。中禅寺湖に貯まった水がさらに流れ出るのが、日本三名瀑に数えられる華厳の滝です。
やや無粋な話かもしれませんが、華厳の滝の流量は中禅寺湖ダムによって人工的にコントロールしております。
群馬県草津町の草津温泉。草津白根山麓にあり、日本最大の湧出量32,300㍑/分を誇る温泉です。1時間で50mプール2杯は貯められる。と、オリンピック水泳競技を眺めながら感じていただければと。
草津温泉は、草津白根山からの地下水と火山ガスが出会いいくつもの源泉からお湯が湧き出す、バラエティに富んだ泉質の一大温泉街です。源泉によりますが温度が高いので、湯を冷ます目的と湯の花を採取する目的で湯畑が整備され、さらに現在はそこで湯を冷ます湯もみのショーが開催されるなど観光の目玉にもなっています。
実は草津は下流が大変。川に55℃、強酸性のお湯が流れていくわけで、下流には魚が住めないばかりか、流域に農産物は育たず、護岸のためのコンクリート構造物などもボロボロになります。現に昭和39年以前は下流の吾妻川は死の川でした。そこで草津温泉下流に品木ダムを造って、1日あたり55トンの石灰を絶え間なく投入する水の中和事業を行っています。人工的に自然を守っている事例。
名称の由来は、温泉の臭気が強いことから「臭水(くさみず、くそうみず)」→「くそうず」→「くさつ」になったという説が有力ですが諸説あり。昔から、恋の病以外何にでも効くとうたわれていますが、「臭い仲」にはなれそうです。
誰がうまいこと言えと。
近年、日本地図を書き換えるほどの地球のダイナミックな活動として、昭和新山出現、令和の西ノ島急成長などがありますが、この桜島もその一つ。
約100年前の1914年1月12日、有史以来最大とされる桜島大正大噴火が発生し、島だったものが地続きとなりました。
マグマ・火山灰の噴出物総量は、江戸時代に関東地方を壊滅的にした富士山宝永噴火を上回り、雲仙普賢岳の約10倍規模に及んだとも言われています。
鹿児島湾自体が約3万年前の大噴火でできた巨大なカルデラで、その後継続的な噴火で現在に至ります(雑)。
有珠山マグネットとは異なり、噴煙が描かれた桜島マグネットは、現在でも頻繁に見られる風景です。(西郷さんとの2ショットではありません)
冷え固まった溶岩や降り注ぐ火山灰を加工したお土産なども数多く生産されており、下のマグネットは桜島の火山灰を固めて作った黒豚さん。
国内だけで長くなりましたので、海外編は別の記事で。