読書感想文2・思考の整理学

 また、本を読んだ。今回読んだ本は、外山滋比古著の思考の整理学である。この本は、私が学生時代に論文執筆の助けにならないかと思い、購入したものだ。しかし、当時の私にとっては、その書かれている内容が難しく、途中で読むことを断念した。久しぶりに手に取ると、その内容が少し理解できるようになったので、読書感想文を記そうと思った次第である。

 この本は全部で6章に分けられている。それぞれの章には題名がつけておらず、あくまでも大まかな分類に過ぎない。しかし何となくではあるが、章ごとにそれぞれ中核となるテーマを見つけたような気がするので、それについて記述したく思う。

 余談であるが、この本を中身をまとめるのに相当の時間がかかった。しかも、最後の章は現時点では文章にできなかった。ただ読むだけで終わるのと、それを基に考えたことを整理するとでは、難しさが全く異なっていた。後述の、グライダー能力の専門だけではこれから太刀打ちできず、飛行機能力を身につけなければならない、と感じている。

1章:グライダーと飛行機

 人間の知能には、受動的に知識を得るグライダー能力と、自分で物事を発明・発見できる飛行機能力があると言う。これまでの学校教育では、グライダー能力が高い人間が「優秀」と評価されており、飛行機能力について重きを置かれていなかった。しかし、コンピュータという極めて優秀なグライダー能力のもち主があらわれたため、これからの人間が社会で活躍するためには飛行機能力を向上しなければならない。

2章:思考の源泉

 この章では、著者が思考が発生する瞬間を述べている。冗長ではあるが、すべて取り上げる。
 知識をちょっとしたアイディアで「発酵」させて、しばらく時間をおいて「寝かせる」ことで考えをまとめる。思考とは0の状態から1を生み出すだけではなく、既存の知見をうまく調和させた「カクテル」のように考えたり、まとめて順序を整理する「エディターシップ」というものもある。同じようなもので、知識の素材と素材を自身の思考という「触媒」を介して結びつけたり、それらの関係性を別の関係から「類推(アナロジー)」する。また幸運にも「セレンディピティ」が舞い降りることもある。

 これらの諸手法には、前提として多くの知識・情報にふれている点が共通している。すなわち何も知識がゼロの状態からは、新しい着想が生まれないように思われる。そのため1章で取り上げられた、ある程度のグライダー能力がなければ飛行機能力も身につかないかもしれない。

3章:メタ化する

 前述の方法で得られた思考は、そのままでは整理されておらず、あまり役立つものとは言い難い。これらの思考をより洗練されたものにするために、アイディアをメタ化(抽象化)する必要がある。この章ではメタ化を行う実践的手段が紹介されている。例えば、スクラップ、ノートに記録する、つんどく法などである。これらの作業を通じて、「その思考の中核となる何か」や「他の思考との間に共通する何か」を見つけていくことで、思考がより深まっていく。

4章:書いて削る

 これまでの思考をまとめるには、ずっと頭の中に留めておかず、とにかく書き始めるのが良い。書き始める際に、自分いかに混乱していると分かっていても、少しづつ思考の筋道が立つという。そしてその時に、重複する知識や(特に文章上の)表現を削る必要がある。文章を書いて、冗長な内容を削る作業を行うことで、ある程度考えたことが人にも伝わる形になる。

5章:他人と交わる

 前章までの思考の整理する術において、考え、整理し、まとめることは自分の中だけで完結する作業であった。しかし、他人と、とくに気心が知れる友人とその考えたことを会話することで、新たな発見が生まれることがあると言う。それも、同じ専門同士だけが内輪するのではなく、垣根をこえて議論するのが望ましい。これはブレインストーミングという集団思考の技法に近い。

6章:第一次的現実

 この章では、第一次的現実と第二次的現実というものが中核であると思われるが、未だにそれらが分からないままでいる。せいぜい最後のコンピュータに関する論考が理解できただけだ。第一次的現実とは何か、また読み直して、理解して、その内容について記さなければならないと決意した。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?