見出し画像

追跡する数学者 デイビッド・ベイジョー

「追跡する数学者」デイビッド・ベイジョー 新潮社文庫 を図書館で借りてきて読んだ。約550ページある。原題は "The 351 Books of Irma Arcuri" で、直訳すれば「アーマ・アーキュリの351冊の本」といったところか。

 主人公のフィリップは異能的に数に強い、が数学教授ではない。一方、アーマは製本家(Binder)であり小説家でもあって、言葉の人である。数と言語という対比。また、作中アーマの身代わり的な立場になるルシアは翻訳者である。間をつなぐ者という役回りだろう。ルシアの綴りはLuciaだろうが、アーキュリArcuriのアナグラム的な感じもする(rrucia)。

 タイトルと文庫の裏表紙のあらすじを読むとミステリかと思ったし、会話文が少なくページにびっちり文字があるので、なかなか読むペースがはかどらなかった。数学は比喩の道具としては出てくるが、それほど重要ではない。おまけに前半はセクシャルなシーンが割とあり若干閉口した(このシーン必要?って感じ)。

 それでも、後半250ページくらいからようやく作品の空気感にも慣れて読了した。主人公のフィリップが、失踪したアーマ・アーキュリの足跡をたどることで、彼女との関係を再認識する心の旅の物語だろう。

 アーマの足跡を辿る旅で明らかになっていく、フィリップの周辺への干渉。アーマは何を綴りたかったのか。本を綴じる、小説を綴る、日本語では同じ漢字を使う。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?