日記|内省的な自分の感情を作品にすることは自己満足なのか
最近、友人がこんなことを言っていた。
その言葉を聞いてから、
内省的な作品を作ることは自己満足なんだろうかと
この頃考えることが多かった。
その問いに対して、
自分の中で答えのようなものが
昨日見つかった気がする。
なので、その日記を残しておこうと思う。
昨日はONENESSのアルバムリリースパーティに行った。
ONENESSのMVTENさんに会いたかったからだ。
ONENESSのMVTENさんは
2年前に日本橋のCITANで展示をしたときに
たまたま作品を見てくれて、
そのときに作品を買って頂いたことがきっかけで、
仲良くさせてもらっている。
お会いするのは本当に久々なのだが、
ゆっくり話すことができた。
MVTENさんはおれの創作を
本当にリスペクトしてくれていることが
ひしひしと伝わった。
自分の創作を信じて良いんだと思えた。
僕が、
「最近は、他の人の創作を見ることで、
自分の創作の輪郭がクリアになる」
という話をした。
その話の延長で、
ヒップホップの話題に話が広がった。
西海岸、東海岸のヒップホップ、
それがどんな違いがあって、
何を訴えているのかMVTENさんが話していた。
聞いて思ったことは、
ヒップホップの素晴らしさって、
彼らが抱えた苛立ちや負の感情をそのまま発散せず、
ヒップホップという形に”昇華”して
発していることだと思う。
曲で扱っている言葉たちは、
そのまま発したらギャング同士の抗争しか起こさない。
だけど、それがフロウに乗りリズムを生み出すことで、
多くの人の耳に渡り、時代の違う顔も知らない人の
心を動かす作品となっている。
僕もヒップホップの言葉に、
心を動かされたその一人である。
作品を作るということでそこまでの可能性を
広げられるんだと思うと、本当にすごいことだと思う。
ヒップホップが国境を超えて
ムーブメントになっているように、
自分の作品もそういうモノになりたい。
自分の内側にある感情や思いを
そのまま言葉にするだけでは、
超えられない境界線を、
作品によって超えたい。
そう思った。
MVTENさんには子どもが生まれたらしく、
子どもの話もしてくれた。
仕事をして家庭を持っていて、
それでありながら自分の創作を貫いて、
パーティでは、
「こういう時ぐらいしか
仲間に還元できないからさ」と言い、
仲間にお酒を奢ってあげて、
そんな姿が本当にかっこいいなと思った。
ライフステージが変わっても、
仲間の存在や自身の創造性という、
自分が根本で大切にしたいものを
ないがしろにせずにいれることは、
本当に素晴らしいことだと思う。
ライブもめちゃくちゃかっこよかった。
自身の内側にある思いをしっかり表現しながらも、
来てくれた仲間に対して感謝を込めているのが
伝わってきた。
それであって心の底から楽しんでいた。
すごく人間性の伝わるステージだったと思う。
最近、友人がこんなことを言っていた。
「内省的な自分の感情や考えを作品にするだけでは
自己満足にしかならない。そうじゃなくて、
社会で問題となっているものを捉えて
作品に昇華することが、人に影響を与えるんだと思う。」
僕はあんまりそう思わない。
自分の感情に向き合い、作品として形にすることは、
自己満足ではないと思う。
内省的な作品も、人に影響を与えることはできると思う。
だって、
何もかもうまくいかない日が続いて、
もういっそ全部終わりにして
死んでしまいたいと思うような夜に、
糸が切れそうな気持ちを繋ぎ止めてくれるのは、
内省的な作品だから。
こういう夜が来るのは自分だけなんだと思い込んでいた自分に、
そうじゃないよと気づかせてくれるのはいつも、
人間味のある感情的な創作物だから。
言葉にならずに
喉の奥がつっかえたような感情を持った時、
言葉にできない自分自身に対しても
嫌気が差してしまうんだけど、
「そんな夜が来てもいいんだよ」というように、
その作品が隣にいてくれて、
背中をさすってくれる感じがするから。
そして前に突き動かしてくれるのも、
誰かの感情的な作品だ。
僕は、
自分自身の内側にある感情を
表現するような作品を作りつづけたい。
それは、
創作という名の手紙を瓶に詰めて
海に投げるようなことに似ている。
手紙を詰めた瓶は波に揺られて、
どの国の誰が拾ってくれるかもわからない。
もしかしたら拾われるのは何十年も後かもしれない。
いや、誰にも拾われないかもしれない。
だけど海の向こうで誰かが拾ってくれて、
拾ってくれた人がその手紙を読んだ時、
そのたった一人に何かを感じてもらえたらいい。
ニューヨークの街角のギャングたちの間で生まれた
HIPHOPという瓶が、海をこえて、時代を超えて、
今を生きる人たちが瓶を拾っていて、
生きるエネルギーを受け取っているように。
僕も作品を作りつづけることで、いつか
そういう瞬間が作れるんじゃないかと思う。
今は、9/27から始まる個展に向けての制作が大詰めだ。
展示したい作品の半分もまだできていない。
焦る気持ちはあるけれど、
自分が何を大切にモノづくりをしているのか
忘れずに作っていきたい。