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漫画:及川由美『オーダーメイド殺人クラブ』(原作:辻村深月)

「くだらなさ」が世界の全てだった中学2年という時のリアル

昨年4月にインスタグラムを始めて沢山の読書アカウントの方の投稿を拝見する中で、辻村深月さんの『オーダーメイド殺人クラブ』という作品を幾度となく目にしてきた。

私は、当作の漫画版を読んだことがあったのであるが、実はインスタで見かけるまで原作があることを知らなかった。

漫画版にたどり着いたのは、漫画の作者及川由美さんの作品を追ってである。
及川さんの作品と出会ったのは、下記の写真にある及川さんによるドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の漫画版である。

『カラマーゾフ』が大好きな私は、ドストエフスキーや『カラマーゾフ』に関する評論など関連書籍を常に追っており、漫画化された作品もその対象にしている。

『カラマーゾフ』の漫画版には、「漫画で読める◯◯」のような1冊で原作の骨子を知ってもらうことをコンセプトとしたものがいくつかある。
それらの作品は長編の原作を1冊に収めるために、骨子以外の要素は削ぎ落としまくられているのが一般だ。
それは作品のコンセプト上仕方のないことである。

対して及川さんの作品は、原作を忠実に再現し何巻にも渡って漫画化していくというコンセプトで作られたものであった。

そのクオリティがもの凄く高く、及川さんの原作への愛情がほとばしるものであったため、続刊を期待しながら待っていたのであるが、恐らくセールス的な事情のためか、2巻で打ち切りとなってしまったのだと思われる。
2巻までで作品化されたのは、原作における「ゾシマ長老の死」まで。
本当にクオリティが高い作品であったため、大変残念でならない。

それはともかく、こうして出会った及川由美さんの漫画作品を他にも読んでみたいと興味が広がったことで手にしたのが、本投稿の漫画版『オーダーメイド殺人クラブ』であった。

未だ辻村深月さんの原作は読んだことがないのだが、及川さんの漫画は私にとっては充分に読み応えのある作品であったと感じている。

中学2年という、「くだらないことが世界の全て」だったあの時代の閉塞感。
大人になるにつれ忘れてしまうあの頃の、感情、不安、苦しみ。

恐らく多くの大人が、過去を自分語りする際にも取り上げることのない時代。
でもよくよく自分に正直になれば、あの頃抱いた感覚や、根拠のない自意識、その時止むに止まれず行った選択が、今の自分の形成において大きな影響力を持っていたことはきっと否定できない。
そんな自分史における「くださなさ」と「決定的な影響力」が同居した不思議な時代の心境が、とてもリアルに描かれた作品であった。

私は故あって現代小説を読むのが苦手なのであるが(「故」についてはまた随想回を書いてみたいと思う)、本作については是非原作を読んでみたいと心に期している。

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