【代理人研究】三角移籍の謎。なぜクラブは怒らないのか? (前編)
サッカー界の謎の1つに「三角移籍」があります。
イメージしやすいように実例を出して説明しましょう。
2008年、ブラジル人FWのフッキが東京ヴェルディからFCポルトへ移籍しました。移籍金は10億円規模と報じられました。
ただし、全額がヴェルディに振り込まれたわけではありません。この移籍にはレンティスタス(ウルグアイ)というクラブが中間に挟まれていたからです。
東京ヴェルディ→レンティスタス→FCポルト
フッキはレンティスタスで1度もプレーせず、書類上の在籍にすぎませんでした。これが「三角移籍」です。プレー実態がないので「幽霊移籍」とも言われています。
以前にこのnoteで、ウルグアイ出身の超大物代理人ファン・フィゲルを取り上げました。このフィゲルこそが「三角移籍」の“常習犯”です。
中継地とするのは、レンティスタスとセントラル・エスパニョール(ともにウルグアイ)。2クラブともフィゲル の支配下にあると言われています。
ちなみに日本で有名な代理人テオは、フィゲルの会社の日本担当でした(テオは現在ポルティモネンセのオーナー)。フッキのポルト移籍の際、日本ではテオが動いていましたが、全体を仕切っていたのはフィゲルなのです。
なぜ「三角移籍」のような面倒なことをするのか?
元ブラジル代表のゼロベルト(レバークーゼンやバイエルンでプレー。代理人はフィゲル )の例で深掘りしてみましょう。
ゼロベルトは1997年1月ブラジルのポルトゥゲーザから、ウルグアイのセントラル・エスパニョールを経て、レアル・マドリーへ移籍しました。セントラルでの出場はゼロ。はい、「三角移籍」です。
①ポルトゥゲーザ→②セントラル・エスパニョール→③レアル・マドリー
2001年、ブラジルでサッカー界の不審な金の流れが問題視され(1998年W杯決勝で体調不良のロナウドが無理やり先発させられたことが発端)、フィゲルは議会に召喚されます。メディア取材を一切受けないことで有名だったのですが、ついに公の場に引きずり出されました。
ブラジル当局の情報などから、次のような金の流れがあったと報じられました。
①ポルトゥゲーザ→②セントラルの移籍金:460万ドル
②セントラル→③レアル・マドリーの移籍金:998万ドル
998 – 460 = 538
移籍金の差額は538万ドル。
つまりセントラルはゼロベルトの「書面上の在籍」だけで、538万(約6億円)を手にしたということです。差額はどこに消えた? 脱税だ! ブラジルで大騒ぎになりました。
それにしても謎なのは「なぜポルトゥゲーザとレアルは怒らないのか?」ということです。
報道が正しければ、ポルトゥゲーザは得られる移籍金が少なくなった、レアルはより高い移籍金を払わせられた、ということになる。
なのに彼らは抗議しないばかりか、フィゲルとのビジネスを続けているんです。
いったいどういうことなのか?
どうやら「三角移籍」には、さらなる裏があるようなんです。
(後編はこちら)
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