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ほぼ毎日 note #254 ベーシスト的音楽論 時間の概念(2)

前回の記事で、「曲の中で時間の流れは一定ではない」とお話ししました。
今回はもっとミクロの視点で時間の流れについて、お話ししようと思います。

と、その前に用語の解説。
前回の記事で何回か登場しましたが、「BPM」について。
BPMとは Beats Per Minuteの略です。テンポの単位で一分間の拍数を示します。
BPM=60と記されていれば、一分間に60回(拍)。ポピュラー音楽で多用される4/4拍子であれば、1小節は4拍ですから、BPM=60の曲なら1小節は4秒ということになります。
実際には、BPM=60というテンポはとんでもなく遅いのですが、今回はこのテンポで時間の概念をミクロの視点からお話しします。

BPM=60なら、1小節は4秒なのは前述のとおり。
つまり、1拍目が1秒、2拍目が2秒、3拍目3秒、4拍目4秒となるのが一般的。ただし、時間の流れが一定なら。
マクロ的(曲中)でもミクロ(小節単位)でも時間の流れは一定ではなく、伸び縮みします。
どういうことか?
2拍目、4拍目は必ずしも、2秒、4秒の位置にないのです。むしろ、若干後ろにズレます。つまり、2拍目、4拍目は1拍目、3拍目より長いのです。
説明しましょう。
1拍目は正確に1秒の位置にあった。2拍目は2秒後ではなく、2.02秒後、つまり0.02秒後ろに伸びるのです。同様に4拍目も4.02秒後に位置します。
しかし、1小節としての全体の秒数=4秒の長さは変わりません。2,4拍の位置が相対的に微妙にズレるのです。
このズレは演奏者によってことなります。0.02秒の人もいれば0.018秒の人もいます。それこそが、ミュージシャンの個性となるのです。
1小節の長さは一定なのに、その中で各拍の位置が伸び縮みする
これが、ノリやグルーブの正体です。

時間の流れをミクロでもマクロでも自在に変化させることで、音楽に自然な揺れを創る。聴く人はその揺れを心地良いノリとして感応する。
人工的な風より、自然な揺れ(ブレ)のある風を心地良く感じるのと似ています。

打ち込み曲でも、あえてスネアのタイミングを後ろにズラすことで人が叩いたドラムを再現することができます。
「あ、この曲後ノリだな」と聞けば分かるはずです。
逆に、全てのノリを一定にしてしまうことで機械的なビートを強調する手法も存在します。EDM系の音楽はこれを利用して一種のトランス状態を作り出します。

時間の流れを意図的に変えることで、音楽を一層表現深くすることも、機械的にすることでトランス状態を作ることも可能なのです。
時間の流れは音楽の中で非常に大きな要素のひとつなのです。

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