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プリセールス組織の課題:B社のケース

背景

 B社は、プリセールスのエンジニアが業種別の営業組織に従属しており、営業からの依頼で案件の支援を行う体制でした。支援対象となる製品は、会計、物流、製造、販売、人事と広範で、さらに23種の業種別ソリューションがありました。営業との連携は同じ組織であることから、非常によく取れており、営業の依頼にもタイムリーに応えられるものでした。

課題

 23種の業種別ソリューションを持ちながら、その担当者は専任では存在せず、担当業種に必要なソリューションのスキルを持ったエンジニアは数名いたのですが、提案機会が無いリューションや顧客から引き合いの無いものはスキルを持つものはいませんでした。そこで、23の業種別ソリューションについて期待される専門性を持った支援ができる体制を確立して、販売体制を強化する必要がありました。

 また、プリセールスのチームは営業部門に所属する体制であった為に、
アプリケーションについての知識を持つメンバーに偏在が起きていました
。実際に提案の機会が多い製品については知識は蓄積されていますが、そうで無い製品は機能についての知識は全く無いと言う状態も起きていたのです。チームのメンバーは営業からの依頼で動くという少し受け身の動きとなる場合が多く、対等の立場で案件について議論する事は多く見られませんでした。

 この段階ではプリセールスの中には、これら組織横断の課題を解決するための合意などがまだ形成されておらず、アクションを起こすまで至っていなかったのです。この状況を打開し、今後の解決に向けたコンセンサスを作り上げるために、プリセールス全員を集めたオフサイトを実施し、今後のプリセールスに必要な機能や役割についてディスカッションしました。結果として、プリセールスを一つの組織に統合した上で、いくつかの役割を分割して持つべきと言うコンセンサスを得ました。

解決策

 第一段階として業種別のソリューションを推進するために、それまで営業部所属のプリセールスエンジニアが兼務していた、各業種別ソリューションのリーダーを専任化し、一般の案件アサインから外しました。このリーダーは、営業と共にどの様に顧客に販売してゆくかを協議し、各業種別ソリューションのビジネスプランを策定します。当時業種別ソリューションは日本ではうまく軌道に乗っておらず、本国のインダストリー部隊からすると不満が溜まっていた状況でしたが、業種別のプランニングが進む様になると、活動の透明性が増して定期的な会議で進捗を図れる様になりました。
 具体的な内容として、業種別のビジネスプランのテンプレートを作成し、本国とのJBP(Joint Business Plan)としてどの業種も同じ基準で進捗を図れる様になりました。これによって、業界の動向、競合状況、Top20社の採用状況、3ヵ年の活動計画、本年度のフォーキャスト、課題や本国へのリクエスト内容を四半期毎にレビューして進捗の透明性を測り、業種ごとの進捗を明らかにする事が出来ました。

 次に、プリセールス全体の体制についても、各営業部門に属しているプリセールスの中で全製品をカバーし、製品の専門性が希薄になっていたので組織を大きく変更する事になりました。それぞれの営業部に属していたプリセールスチームを一つにまとめ、営業部との窓口をするエンゲージメントマネージャーチームと、各々の製品を担当するエンジニアチームに分割しました
 エンゲージメントマネージャーは営業部と共に売上をどの様に達成するかを考える為、今まで各営業組織でプリセールスマネージャーだったメンバーを中心にシニアなメンバーをアサインしました。このメンバーは、営業と数字達成のための戦略を共有したり、各案件の戦略、体制などを決めてメンバーアサインをする役割を持ちます。営業は、自分たちと共に自部門の数字達成のための戦略や、案件の優先順位、パイプラインのアセスメントをして角度を上げる支援が今まで以上に受けられることに満足していました。

 営業部隊から切り離したその他のエンジニアは、担当製品毎に組織化して各々マネージャーを置いてプロダクトの専門性を高める活動をしやすいようにしました。今まで、営業部に分散されていた時には、同じスキルを持ったメンバーを各営業部に配置しておく必要がありましたが、メンバーを集めたことによって、スキルを集約して分散していた時にはカバーが難しかった機能のスキルアップや、業務知識の向上を行えるようになり、顧客のビジネス課題に対する提案力が向上しました。また、製品に特化したチームとして、プロダクトマーケティングとも連携して、製品毎の売り上げの計画策定や新製品の展開についても同期して進められるようになりました。

 この変更によって、業種別戦略、営業部別戦略、プロダクト別戦略がそれぞれ機能する様になり、各々のステークホルダーである、本国の業種部隊、営業、プロダクトマーケと、業種での売上、営業部毎の売上、プロダクト毎の売上をそれぞれの目標を達成するためにどう改善すれば良いかを考えられる体制となりました。プロダクトの数を多く抱えるベンダーにとっては同様の体制をとっている会社も多いと思いますが、効率的に動ける一つの形であると思います。

変更後組織概念図


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