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35年前にもあった軽石漂着を調べてみた

海底火山の「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」の噴火で発生した大量の「軽石」が沖縄に流れ着き、魚が死んだり、船が出せなくなったりする被害が出ています。今後、関東の沖合にも流れていくという予想もあります。

実は、この「軽石の漂着」は、今から35年前の1986年にもありました。海上保安庁や気象庁のWebサイトなどオープンな情報で調べてみました。

35年前の噴火では

海底火山について調べるのに便利なのが、海上保安庁のwebサイトで誰でも見ることのできる「海底火山データベース」。特に写真や動画が充実しています(色々見てみてください)。

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そこに掲載されたこの写真。

今から35年前の1986年1月20日に撮影された福徳岡ノ場の様子です。奥に見える三角形の島は南硫黄島。海に漂っている茶色っぽいものが軽石です。

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翌日の1月21日に撮影された噴火の瞬間の写真でも、周辺の海に茶色っぽいものが漂っています。

当時の状況をもう少し詳しく知りたいと思い、以前紹介した「活火山総覧」で見てみましたが、

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残念ながら「海上浮遊軽石」というさっぱりした記述だけでした。

そこで「火山噴火予知連絡会会報」を確認することにしました。火山噴火予知連絡会は全国の火山の活動を評価する専門家の集まりで、気象庁が事務局を務めています。そして、議題に上がった過去の資料は、気象庁のWebサイトで確認することができるんです。

この会報を見ていくと、1986年11月刊行の会報「第37号」に資料がありました。この中の、海上保安庁、東京工業大学、岡山大学から提出されている「福徳岡ノ場の海底火山活動について」の中で噴火活動が時系列で紹介されています。

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これは時系列の抜粋ですが、観測のたびに「軽石流」が確認されています。3月までは軽石流がたびたび確認されていたようです。35年前の噴火でも軽石がかなり発生していたことはわかりました。そして、こうした軽石は、この時も沖縄に流れ着いていました。

沖縄に4か月かけて到達

軽石が流れついた状況について、とても勉強になったのが

『福徳岡の場から琉球列島に漂着した灰色軽石』という論文です。

今回の軽石漂着について各社の取材に応じている琉球大学の加藤祐三先生の論文です。

論文の中では、①「肉眼観測・顕微鏡観測・岩石化学・鉱物化学の各特徴は福徳軽石と漂着軽石の間でよく一致している」とした上で、②他に沖縄に軽石が流れ着く可能性がある場所での噴火が起きていないことなどから、沖縄に漂着した軽石は福徳岡ノ場から来たものと分析しています。

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さらに軽石が流れてくる「速度」も分析されています(画像は論文より)。

この論文によると、1月に噴火した福徳岡ノ場の軽石が、沖縄で確認されたのは5月。およそ4か月かけて到達したことになります。

その後、軽石は、6月下旬に宇和海、8月には串本でも確認され、黒潮に乗って北東進したと分析しています。流れていく速度は、福徳岡ノ場から沖縄に到達するよりも速いスピードだったようです。

今回は8月に噴火が発生し、10月に到達しています。その間はわずか2か月。35年前と比べて倍くらいの速度でやってきたと見ることができます。

海上保安庁が情報発信中

さらに、今回は、35年前と比べて、軽石の量も桁違いに多いと報道されています。噴火の規模が明治以降で国内最大級であることからも、今後も軽石の漂着が続く可能性があり、今後の状況が心配です。

第十一管区海上保安本部は、Webサイトで軽石の漂流状況を発表しています。写真や地図がついているので、とてもわかりやすいです。

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画像を見ると、漂流する軽石が、筋状にいくつもあることがわかります。今後の状況も注視していきたいです。

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